リッスン・トゥ・ハー

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親指のDNA

2008-08-16 | リッスン・トゥ・ハー
僕は稼いだ。なりふりなどかまっていられない。とにかく金になることなら何でもした。汚い事、苦しい事、悲しい事、時にここまでしてまで金を稼ぐ必要などないのではないかという疑問に突き当たる事もあった。その度に僕は首を大きく振り、いいや必ず役に立つ。お金は大事だよー、と歌った。足元にはアヒルもいた。そうやって半年間僕は必死に金を稼ぎ、稼ぎ稼ぎまくった。結果として得られた富は、普通に暮らせば10年は遊んでいられるほどの額だった(ミャンマーに限る)。僕が半年死に物狂いで稼げばこんなもんさ、得意気に僕はサボテンに話し掛けた。サボテンという植物はけっこう敏感で、話し掛ければその言葉を理解するらしく、育ちも良くなるらしく、だから僕はサボテンにだけはちゃんと話し掛けている優しい男で、その優しい男は半年分の富を得て、ほくそえんでいる。さて僕がどうして半年間、他のことは何も考えず、というのは嘘で、各方面の欲望に打ち負けながらたまに働いて貯めた富、10年は遊んでいられるほどの額(ミャンマーに限る)を用意したかと言うと、親指のDNAを買うためである。親指のDNAさえあれば、と僕は常に考えていた。人生は変わる、思い通りだ、なにもかも。親指のDNA、僕は声に出して呼んでみた。なあに、とこたえたような気がした。気のせいでなかった、サボテンだ。祝福してくれているのかい、小粋に僕は髭を扱いた。駅前のローソンでそれは売っているという。途中で、三丁目のローソンにもあると知ったのだが、その辺は初志貫徹という僕の大好きな言葉どおり、駅前ローソンで購入する事にする。途中で、5丁目のローソンにもあると知ったのだが、駅前、神聖なる駅前ローソンで買わなければならない僕は。さらに橋向こうのローソンでも、地下街のローソンでも、売っていると知った。まさか、まさか、どのローソンでも売っているのではないのか、いや、そんなはずはない。そうだそんなわけがない。疑問を持ちそれでも、葛藤と戦いながら駅前に着き、親指のDNAを購入する。自宅に戻り、親指のDNAをセロテープで貼り付けた親指を立てる。さあ、僕を自由へ導いてくれ「チッチキチー!」

Loop/ACIDMAN

2008-08-15 | 若者的図鑑
リピート、素晴らしい。

動と静を見事に使い分けた2枚目のアルバムです。

激情に走り、一転、落ちてきて、沈み込む波の感覚を音、曲構成で表現できた!

リピートはほとんど盛り上がることなく淡々として、あえて日常から飛び出ないところでぐるぐる回っている。すべては我々の意思とは無関係にあって、それぞれがそれぞれの役割をもって、動いている。そこに我々がなにかする余地など残っていないのです。
アシッドマンの、波、3人が作り出すグルーブは現代的、他人に無関心でいて、孤独を嫌い遠くから眺めていたい。無視されるのは嫌だけど、それほど深くも関わりたくない。

ループを聞いていますと、まあそういうなよ、とつぶやいて肩を組んでみたくなります。
いや、意味わからんけどこれ。

轟音で迫ってくるのも、もちろん質の高さ、完成度の高さ。

日本よ誇れ!この貴重な3ピースバンドを生んだということをさあ。

「神様」(モンスターエンジン/吉本興業)

2008-08-13 | 掌編~短編
部室の空気がやけにひんやりして、心臓まで突き刺さってきそうさ。
部室といっても真冬の室外とほぼ同じようなものだから当然である。存分にあるドア下の隙間から恐ろしいほどの勢いで吹き込んでくる。凍死は時間の問題だろう。
「凍死するわけにはいかないさ」男は心臓を痛めつけるほどの寒さに対しそうつぶやく。幻覚が見えるのである。
あと2時間後のマラソン大会がある。「そう、凍死するわけにはいかない、僕が優勝してやるまではな」男は有力な選手である。その期待の強さは全盛期の小錦のごとしであった。正直言って期待の強さは迷惑であった。苦しんでいた。優勝するに決まっている、そういう無責任な決め付けは、凶器となり、選手の首を締める。
分厚い白のウインドブレーカーを着込んだ彼の肌は、震えていた。寒さからくるもの、これからある大会からくるもの。心臓は2重の苦しみによって、突き刺さるように苦しい、強気に出てみたものの実際、優勝できる気が全くしなかった。スタートラインに着く事すらできないのではないか、ぼくは、このマラソン大会のためにすべてを投げ出して今日をむかえ、マラソン大会で優勝できることだけを目指して、それが今日決まるのだ。マラソンぐらいで大袈裟な、とあざ笑うものがいるかもしれない。しかしそれは、彼の今日までの努力を知らないからそんなに簡単に笑い飛ばせるからで、それを知っていれば何もいえなくなるか、祈るしかなくなるだろう。
男は祈った。
祈る事しかできなかった。この状態では、足など一歩も動きそうにない。なんなら凍死は意外と近づいてきた。
「ああ、神様」
悲痛に響いた。
この誰もいない部室の中では、嘆きこそ最も惨めなものだった。
床に落ちている薄汚れたタオルケットが、スタートライン付近ではいつくばって倒れた彼自身に見えた。背中を大勢の猛者が踏み超えて行くのだ、笑い皺がたくさんあって気持ち悪い彼自身に見えた。
「どうか、このマラソン大会でぼくを優勝させてください」
無神信者なら笑うだろう。いや、無神であれば、こんな時の神頼みと祈るのかもしれない。男はなりふりかまわず祈る、天に組んだ両手を突き上げた。
「お願いします、神様!」
その時だった。
薄汚れたタオルケットのタグの部分がふたふたと揺れ、それを持ち上げるように、何かでてきた。小さい虫かと思う間もなく、目の前に豊かな肉体を持つ人間が立っており、目を閉じて、両手は左右に不自然に構えたまま固定されていた。狭い額にリングをつけており、蛍光灯に反射して鈍く光る。その長めの髪は真ん中で分けられ、無造作にあそばせてしかし、あらかじめすべて決められたかのような納まり感でゆれていた。

「私は神だ」

「神様?え?」

「お前に力を与えよう」

「力?」

男は先ほど自分が不用意に、ただ自らの欲望に従い「神様」と叫んだ事も忘れ、目の前にいるものがなんなのか見当もつかなかった。もともと神など信じていなかったのだから無理もない。え、こいつタオルの精?
お構いなしに神とするものは、両手は不自然な形のまま、何か唱え始める。

「すべての神代そしてすべての生命よ」

タオルの精が何かはじめたようなので、男はなんとなく焦りだした。
しかし妙に良い体格をしている。タオルの精無勢が、とコンプレックスも刺激されさらに焦りだした。ああぼくはこんなことをしている暇はないんだ。少しでもリラックスして走れるように準備体操、ジョギングでもしていなければならないのだ。監督が会場で待っているはずだ。おそらく遅れた彼を見て、また激怒するにちがいない。それを想像してまた少し憂鬱になった。「あの、すいません、もう、いっていいすかね」と聞いてみようと思ったが言い出せない。なぜなら極度の人見知りだし、何か唱えているから邪魔しちゃうかもしれないし。

「かれに力を与えよ」

と、男の中心、先ほど空気が突き刺さろうとしている、ように感じていた、心臓が鼓動を早め、血が全身を巡っていく。
「ん?」
何か時間がものすごい速さで進んでいるような気がした。全身に、そのひとつ向こうに届きそうなほど、何度も、何度も、鼓動し、駆け巡った。
「ん、ん?う、うおおおおお、おおお」
バウンドしていた。スーパーボールのように弾んで全身を、さらに熱が、やはり心臓を中心として、その半径2m以内へ一斉に燃え上がり、男は全身が熱くなりうずくまる。皮膚のめきめきというはじけそうな音が聞こえていた。

「そして、彼がこの舞台で力を発揮できるよう」


「ち、力が、湧いて、きたううう、うおおおおおおお」

男はめらめらした混乱の中、本能に任せてウインドブレーカーの中に隠し持っていたシルバーの兜を頭にかぶり、ウインドブレーカーをぶあっさと突然剥いだ。

「私だ」

どこか楽しげにつぶやいて、筋骨隆々、腕を体の前に交差させて固定、先ほどまでの姿勢体格はどこふく風か、隙はない。バックをとらないかぎり、絞殺するのは難しそうだ。あるいは懸命なゴルゴなら、真っ先に逃出しているはずだ。

「お前だったのか」

動じることなく神はつぶやく。目を閉じたまま、それはおおらかな気持ちになれる歌のような声だった。先ほどまでとは少し違う神の素の声なのかもしれない。家の留守電に入れておいたと思っていたら友達ので、なとでお前声違うね、といわれるように身内だとほんの少し変わるのかもしれない。

「まただまされたな」

「全く気付かなかったぞ」

「暇を持ちあそばせた」

「神々の」

「遊び」

光が我々の方に傾く。

屏風浦のあの娘は恋を知らない

2008-08-12 | 東京半熟日記
(天狗蕎麦長野編11)

温泉入って白馬を後に長野へ(中略)。


つる子さんは「あかん」と拒んだ。
「あかんのよね、あたしまだ処女のままでいたいからあ」
大変色っぽくて困る。わたしだって、惚れちゃいそうです。そんな気ないのに食べちゃいたくなる。唇ちゅっとうばっておいてそれからそれから、と突っ走り気味に涎さえ流れ落ちそうになりながら、飲み込んで我慢する。
つる子さんは天狗で処女らしい。
天狗は助平で、たいてい、見境なく女を抱く。という性質があるそうだけれど、つる子さんは守り続けているのだという。天狗の女は助平ではない。一般には。
「だって、処女っていうのは愛する人に捧げるものでしょう」
「古風ですね」
「それが女の幸せってやつじゃない」
「一昔前すよその発想」
「あたしは古風で天狗」
とつる子さんは、羽ばたいて枝に停まる。枝はぎしぎししなってつる子さんを乗せて置けない。つる子さんは羽ばたいている、が下りてくる気配はない。「あたしは古風で天狗」ともう一度つぶやいた。もう、思わず抱きしめたくなるような、はかない目をしている。つる子さん好き、とわたしは彼女に聞こえないようにつぶやく。
つる子さんは天狗だけれど、鼻が長いとか、顔が赤いとか、身体的な特徴は何もない。獄普通の人間の女として、紹介されたなら、そう信じるだろう。疑う余地などない。
先ほど、羽ばたいて枝に停まる、と説明した。しかし、実際にはただ登っただけである。つる子さんはするする木を器用に登って、枝に座る。そのスムーズさが羽ばたいて登ったように感じたのだ。だから当然羽など生えていない。
ではなぜ天狗なのか、つる子さんが天狗である理由はどこにあるのか。
それはまた別の話。

天日干し中につかまえて!

2008-08-12 | リッスン・トゥ・ハー
梅干は貴重な栄養源であった。だからこそ大量に必要だったのだ。しかし、あの野郎。あの野郎はそれを知っていながら、価格を上げやがった、それが意味する事の恐ろしさも知らずに、自分の利益の為だけに。許せぬ、これは天罰だ、神様が罰を与えたに過ぎない。そして、まだ序章にすぎない。いいか、まだ序章だ。たっぷりと恨みは残っている。梅干がたんとなくなるぐらいで終わったと思っていないだろうあの野郎だって。次は家族の安全に気をつけることだ。いいや、神様だからな、危害は加えないだろう。神様なんだから殺してしまっては具合が悪い。いたぶるのだよ、つまり、うらうら、といたぶり尽くすだけだよ。卑猥な事や痛いことや恥ずかしい事や酸っぱい事を次から次へと、楽しみだ、いいや、私がやるわけでないから、想像しているだけで、その様はほらちょっと滑稽じゃないか。冷静になって、客観的に考えてごらん、なんて滑稽なんだろうと思うはずだ。梅干の種を吐き出した。いいできよ今年の梅干。

仏像、腹の中にて笑む

2008-08-11 | リッスン・トゥ・ハー
身ごもった。ぶつぞうは子を授かったのだ。そのぶつぞう、男ではなかったのか、という疑問は問題ではない、ぶつぞうは雌雄同体である。オスでありメスであるその体は普段はオスの部分が強く現れているものの、特性として、子をみごもってもなんら不思議はないのである、がしかし。実際に身ごもってしまったものはいまだかつてない。雌雄同体であるにもかかわらずぶつぞうが妊娠するためには、2体の性交が必要である、性交なくして妊娠はありえない。それは学術的に証明されている。つまり、誰か別のぶつぞうがこのぶつぞうに夜這いをかけて、そして、受精させたのである。これを哀れと見るか、見事と見るか人それぞれだろうが、ここはあえて、見事と見ることにする。ぶつぞうかて、孤独に打ちひしがれて待っているわけではない。坊主は常にではないが、頻繁にぶつぞうの前に来ては拝むし、客がくることも多い。ここは有名な寺、ぶつぞうも全国レベルの人気ぶつぞうとくれば、いつのまに、という話になる。多くの人の目を盗んで2体は結ばれたのね。もしくは無理矢理犯されたのだ。結ばれたと考えた方が体裁が良い。体裁の為に死ねるぶつぞうのことだから、そう考えておくに越した事はない。愛し合い、つむぎだされた愛の結晶、子は「ネオぶつぞう」という名前がつけられ、動物を大切にしてくれそうな旭山動物園に贈られることが決まった。

観光、バス転落の巻

2008-08-10 | リッスン・トゥ・ハー
天に昇る。私はその瞬間そう思った。実際には落ちていたのだ。まっ逆さまに、確実に少しとも昇ることなく、自然原理法則に実に真っ当に。にもかかわらず体はふんわりと浮かび、今にも飛び立ちそうになった。それだって、つまりは慣性の法則という奴か、突如としてバスは落下をはじめたので体がついていかなかっただけなのだ。悲鳴が薄く野太く聞こえた。それは感覚が鋭くなり、時間の流れがゆっくりと、ポップミュージックでも流れていそうな、それに合わせて踊る女たちが、舞台上にいるような、ゆるやかな映像にある、悲鳴はそれもまたゆるやかだった。必死さがないのだ、祝福するようなのん気さでいやああ、と小さく聞こえただけだった。クラクションなど、ブレーキ音など、その他音は聞こえない。バス自身も、例えば意思を持っていたとして、バス自身も落下する事自体はもう良いや、という感じで受け入れており、それならそれで楽しんじゃおうかな、という領域まで達しているのだつまりは。閃光。とともに燃える生命ども。

lust/rei harakami

2008-08-10 | 若者的図鑑
矢野顕子さんの紹介文によると、
「世界遺産に決定!」ということです。
大好きなんでしょう。その後にyanokamiでユニットを組んでいる事を見ると、矢野さんにとって理想の音々なのかもしれません。
素ん晴らしいyanokamiはまた次の機会に紹介するとして。

さて、この世界遺産です。

どこかの雑誌に書いてあった記事によれば、これらの曲を本当に安い、だれにでも手に入るなんなら中学生でもお小遣い貯めて買えるような機材で製作していたと言うハラカミさん。京都のどこかでこつこつ作っていたと言う。
特殊さは、今までなかった盲点をつきました。
盲点を突き刺してはや空の彼方に消えました。宇宙に到達して、宇宙服なしでフワフワ漂っています。その心は、簡単そうに見えてすごいことをやっています。
過去にさかのぼってみても、新しい部分がたくさんある。そのクリエイティブな部分こそ世界遺産といえるわけで、ハラカミさんは発明したとしてとりあえず2億ぐらいもらうべきなのです。

歌詞なしの音のみ、徹底してひたすらに音である意味、置く意味、そこにその音を置く意味を追求し、あるいは天然のひらめきでつむぎ上げた音楽。一曲のみ歌ありそれもまたいい。

後世に残すべき音楽。

・・・・じゃあつうことで世界遺産に決定!

かよわきエナジー/GOING UNDER GOUND

2008-08-06 | 若者的図鑑
青春真っ只中の音楽を止めないゴーイングアンダーグランド、今尚やめない。
やめないでいてほしいですね。

変わってしまうもの、変わってはならないもの、どちらもありますが、変わらないゆるぎない維持することの難しさは悩みの種であるでしょう。

持続するのは大変です。モチベーションなどふとしたことですぐになくなってしまうし、だから。

グラフィティがすごい。
甘酸っぱさ。甘いだけじゃダメだ、レモン絞って齧り尽くして全身を襲ってくる酸味、それを含んでいなければただの甘味剤、あーあこの曲は天然です。
甘味剤には追いつけない天然の、お日様をたくさん浴びて育った歌です。
仲のよさが必要です。養分として、それがあって大きく育つのです。
日本の青春の音楽を背負って続けて欲しいです貴重なバンド。

せーので録音したと言うエピソードも天然っぽくていいですね。

ウィアー・オールレディ・ゼア/マザリン

2008-08-05 | 若者的図鑑
プーマのCMの疾走感のある歌、の人たち。

フォーエナジーという曲なんですが、この疾走感がたまらない。
あの映像とよくあてましたよね。あのCMはよかった。
さすがプーマじゃい!と叫びたくなりますね。

良さを一言で言うならば。

遅れて加わるベースラインの取り残された感!

とめてしまったクールダウン

2008-08-05 | 東京半熟日記
(天狗蕎麦長野編10)



なんでしょうか。模様、道具。
白馬村の冬はきっとにぎわうのでしょう街並み、土産物屋などを見つつ。
水も所々にあり、綺麗だとアピールしているのでしょうか。



昼、そこにあった蕎麦屋でざる蕎麦いっちょう!
きのうのこと、など忘れて胃の調子もまあまあだわい、だから蕎麦。
ちょっと怖そうな大将。
美味いです。これは美味しい。きゅうりとなすの浅漬けつき。
浅漬けがまた美味しいの何の。
蕎麦のゆで汁ごくごくですわ。

閑散とした夏の白馬スキー村に、蝉時雨あたり一面覆い尽くして、
迫ってくる山の向こうから呼んでいる声を掻き消した。
かき消した。

Do I wanna はずれたボタンを

2008-08-04 | 東京半熟日記
(天狗蕎麦長野編9)



このジャンプ台で金メダルをとったんですよね。
あら、上まで上がれるようですね。上から見た光景はどんなでしょう。わたしはあまり興味がないので登りません。たかいとこは嫌いです。雲の上までいかないといけません。
半端に高いとこは嫌いです。

向こう、見ると花嫁、花婿がいる。ウエディングドレスにタキシード着てる。記念撮影か何か出来てるんでしょう。花束もって、ここからだと豆粒ぐらいですけれど。
白馬といえばジャンプですから、回ってるんでしょう。せっかくきたのですからね。わたしもくるぐらいですからね。



奇声が上がる。
ゆひょーーーーおおお。わたしはその声の方を向いて目を細めます。ジャンプ台の上。
羽を広げて飛び立った天狗は、ばたばたでなく、ふんわりふんわりと羽ばたいて空、自由自在に泳いでいる。

風は十分です。向かい風で伸びる条件そろってますから。飛距離勝負のこのジャンプ。
スタイルなんてなくていいのだ。とにかく遠くへ降立てばいいや。テレマーク姿勢で。

まあ、とかいうてますわ。

痴漢、でっちあげて女

2008-08-04 | リッスン・トゥ・ハー
「もてたかったんです」と女は泣いた。
「はじめてもてたとおもったんです、私を魅力に感じて、私でムラムラとなった殿方がいる、ということそれ自体でひどい興奮をしてしまったのです。ああ、所詮は私の勝手な思い込み、それがため、激怒した様子、引っ込みはつかなくなり、すでに私は降りることの許されない舞台にたつ女優だったのです。孤独でした。本当は違うのだよ、と自分で思いつつも演じなければならない辛さ。それはわかったもらいたいのです。ええ、ええ、もちろんそんな変な意地、捨ててしまえばこんなことにはならなかったのです。わかります。しかし、そのアンダーグランドというのですか、背景にですね、私が殿方から言い寄られた事のない孤独な、寂しい妙齢の女性である事を度外視されてちと困るわけです。その分を考慮し、それでも尚私は妙な事になってしまったなと、巻き込まれた感で一杯ですわ。つうか、そんなもん、私が生涯にはじめてエロスの目で見られていると思った事実それを貴重な体験をした、と得した気分になってくれればそれで良いんではないでしょうか。それですべて解決するのではないでしょうか。ああ、それいいじゃないですか、ねえ、はいというわけで、頑張ったし、まあしっかり頑張ったしそういうわけで、お疲れさまでした。せいせいしたわ、まじせいせいしたわ。そんな顔では変質者に間違われても文句は言えますまい。自覚しているでしょう。今回ピックアップしてあげたという事で、つまらない人生に彩りを添えることが出来たんじゃなくて。うふふ、はい、ええ、慰謝料はちゃんと払います、お父様が。」
お父様含めた、法廷の、誰も彼も無表情無言。

ギターにろくな奴いない

2008-08-02 | リッスン・トゥ・ハー
だいたいギターなんてさ、弾ける弾けないなんて関係ない、ただぶっ壊せばいいだけだもん。Cコード押さえててぐるんぐるんうでまわして音鳴らすでしょ、思いっきり。音量は最大で。歪ませておけば大丈夫音程どうのこうの言う奴なんていないからさ。そんでいい頃合を見計らってシールドを引っぱるんだ、スタッフは大慌て、あんなにいっておいたのにまたやりやがったあのやろう、てなもんよ。そう思わせない負けみたいなとこもあるし、で、ギター振り上げるでしょ、その辺にあるなんでもいいや、ドラムでも、マイクでも、一般的にはアンプだよね、とにかく目の前にあるものめがけて振り下ろすわけ。このときにああこれは弁償するの大変だから避けよう、なんて思ってたらダメ。もちろんすべて弁償するのは誰か、で自分がするわけじゃないし、しなければしないで結局だれかしてくれるわけ世の中巧く回ってるわけ。感謝しないと。で、ぶっ壊れるよね、大音量を上げてギターは響くよね、それが音楽、演奏なんてその爆音がアクセントになる程度だから問題ない。ドラムに振り下ろすと、ベースの奴がわかんねえ、わかんねえ、って血迷うから。あ、だいたいベースなんてドラムがないと血迷うコバンザメみたいな存在だから自然と血迷うし、もちろん、ドラムはドラムでぶっ壊されたドラムセットの前で呆然と立ち尽くしているだけで、まあ、殴りかかってくる事はないから安心しておけばいいさ。なんなら、ギター壊れてなかったから第二打いってみればいい。金属は飽きたなら、肉体でいいんじゃない。たまには柔かいものがぐちゃっとなる感覚を味わうのも乙さ。乙。
でドラムに行って、ベース激怒したので、勢いで肉体に。

冷たい目先は誰を追う

2008-08-01 | 東京半熟日記
(天狗蕎麦長野編9)

徒歩で見ておきましょうジャンプ台。でむかいました。歩けども歩けども。
白馬は徒歩ではきついようです。けっこう距離ありますから。
基本車、自転車のようです。





しっかり暑い。歩けばなんらかわらんどこが避暑地なのか。

サア着きましたよ夏のスキー場。わかりにくい。すっかり荒んだ雰囲気、冬になればまた活気が戻ってくるのでしょうね。しばしの辛抱よ。今は天狗の庭。滑り台。はは。とかいうてますわ。