リッスン・トゥ・ハー

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痴漢、でっちあげて女

2008-08-04 | リッスン・トゥ・ハー
「もてたかったんです」と女は泣いた。
「はじめてもてたとおもったんです、私を魅力に感じて、私でムラムラとなった殿方がいる、ということそれ自体でひどい興奮をしてしまったのです。ああ、所詮は私の勝手な思い込み、それがため、激怒した様子、引っ込みはつかなくなり、すでに私は降りることの許されない舞台にたつ女優だったのです。孤独でした。本当は違うのだよ、と自分で思いつつも演じなければならない辛さ。それはわかったもらいたいのです。ええ、ええ、もちろんそんな変な意地、捨ててしまえばこんなことにはならなかったのです。わかります。しかし、そのアンダーグランドというのですか、背景にですね、私が殿方から言い寄られた事のない孤独な、寂しい妙齢の女性である事を度外視されてちと困るわけです。その分を考慮し、それでも尚私は妙な事になってしまったなと、巻き込まれた感で一杯ですわ。つうか、そんなもん、私が生涯にはじめてエロスの目で見られていると思った事実それを貴重な体験をした、と得した気分になってくれればそれで良いんではないでしょうか。それですべて解決するのではないでしょうか。ああ、それいいじゃないですか、ねえ、はいというわけで、頑張ったし、まあしっかり頑張ったしそういうわけで、お疲れさまでした。せいせいしたわ、まじせいせいしたわ。そんな顔では変質者に間違われても文句は言えますまい。自覚しているでしょう。今回ピックアップしてあげたという事で、つまらない人生に彩りを添えることが出来たんじゃなくて。うふふ、はい、ええ、慰謝料はちゃんと払います、お父様が。」
お父様含めた、法廷の、誰も彼も無表情無言。


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2 コメント

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 (三四郎)
2008-08-08 23:56:05
自分が「認められる」ことを欲するってことは、マズローの欲求五段階説の第4。人間にとってかなり高次の欲求なわけです。ま、それにふさわしい「欲求」かどうかはともかく、

>今回ピックアップしてあげたという事で、つまらない人生に彩りを添えることが出来たんじゃなくて。うふふ

とっても毒のある、でも人間の本質に迫る一文です。
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Unknown (なゆら)
2008-08-10 20:50:04
そういうニュースから膨らませてみました。

だれだって認められたいですからね。
自分が認められて、それでなんとかそこに立っているわけですからね。そういうのがないと、とたんに力がなくなってしまいます。そうなると立ち上がるのに勇気も筋力もいりますし、もういっそのこと寝転んじゃえばいいや、みたいになって。気付いたら目を開けるのもしんどいし・・・、という人が今多いんじゃないかと思います。

マズローの欲求五段階説、第4。いつもながら、深い解説ありがとうございます。これにより彩りが加わります。
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