リッスン・トゥ・ハー

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ラブソング/僕の住んでいた街 [初回盤]/くるり

2011-02-14 | 若者的図鑑
あらだらけ、勢いだけ、だけどこんなにも、

惹かれてしまうのはどうしてでしょうか。キスしたいのはなぜなんだろう。
答えを求めてはいけません。邪悪なメロディに翻弄されてしまう処女の大学生です。
先輩がとても素敵に見えて、ふらふらとついていっちゃいました。
アルコールを飲まされました。意識がもうろうとして、気づいたらこれは俺のベッドじゃねえ。
テレビもねえ、ビデオもねえ、車もそれほど走ってねえ、おら、こんな町いやだ。

ラブソングを作ってみた。
明るい歌がいいんで、最初のコードはCかDにしたいのが胸の内。
Dマイナーしかでてこないわけはそういうことです。

悲しいもんね。悲しすぎてラブソングには合いませんよ。

ポップにしてください。ぜひとも、はじけるようなポップソングですよ。
気が狂いそうな明るい曲です。

わかってますよ、それは嘘だって。完全なる嘘ってこういう歌のことを言うんだよ。
つけるわけがない、だってわたしは大人じゃないから。

うふふ。うふふ。

ツタンカーメンを盗んだ、共同生活のはじまり

2011-02-14 | リッスン・トゥ・ハー
「ツタンカーメンがね」

「エジプトの?」

「エジプトのツタンカーメンがね」

「はい」

「部屋にいるの」

「つる子さんの?」

「そう」

「いませんよ」

「いるの」

「えーと、じゃあ、つれてきてもらえますか?」

「イヤだって」

「ツタンカーメンが?」

「ツタンカーメンがイヤだって」

「なんで」

「春子ちゃん怖いって」

「絶対に怒りませんから」

「じゃあ聞いてくる」

「聞いてきてください」

「やっぱりダメだって」

「じゃもういたらいいじゃないですか」

「10匹いたら部屋が狭い」

「10匹いんの?」

「10匹いる」

「それは出て行ってもらってください」

「害はないから」

「つる子さん、どうしたいんですか?」

「飼おうよ」

「ツタンカーメン飼うモンじゃないし、もし仮に飼うとしても1匹だけです」

「じゃちょっと聞いてくる」

「聞いてきてください」

「10匹じゃないとダメだって」

「じゃ、出て行ってもらってください」

「われは王なるぞ、って言ってる」

「知るか!って怒鳴ってください」

「呪いをかけてくれようぞ、って」

「なんぼのもんじゃい!て」

「もうすでにかけたから、とけないからこの呪いは、って」

「ぬ、動かない、まぶたが動かない!」

「ほら、呪いがきたよ!」

「まぶたが動かずに、今まで見えなかった精霊が見える」

「精霊?」

「精霊、きれいだ」

「じゃいいじゃない」

「ツタンカーメン、ちょっと話していいですか?」

「聞いてくる」

「お願いします」

「いい、って」

「ツタンカーメン殿、ともに暮らしましょうぞ」

「よかろう、って」

「家事当番もよろしくお願いしますぞ」

「いやだ、って」

「このやろう!」

生首

2011-02-14 | リッスン・トゥ・ハー
生首があった。地面に生えていた。その下に胴体も埋まっている可能性もありますよ、と助手は言うが、私は信じない。検証もしない。あれは生えているのだ。その下には根があって、地下深くに伸びている。今もぐんぐん伸びていて、我々の想像を遥かに超えるスピードで伸びていて、だからあの生首は少々引っぱっても取れることはない。私、引いてみる。ぐいっと引いてみると、生首は私を睨む。なんという表情だろうか。痛みとか、屈辱とか、否定的なものではない。むしろ、気持ちいい時の、ああたまらん、という表情。たまらんのんで、もっと引いてください、という乞う目。さあ、さあ、と促す目。なんという欲望の深さだろうか。なんという情念の塊であろうか。それが生首の望む未来であるならば、生首の希望であるならば、私はすべてそっくりそのまま叶えてやろうと思う。思うことになんの罪もないのだから。助手は目を閉じている。察しているのだ。戸惑っている私の心情を察して目を閉じてくれている。私は空を見上げる。空は青すぎて困ってしまった。私は困ってしまった。生首がそこにあろうがなかろうがどうでもいいような気がした。