桜の花びらがひとつ・・・
桜の花びらがふたつ・・・
重たげにふくらんでいた蕾がようやく開花・・・
「いたかい」
軽いノック一つで声をかけて入って来る。
「あら、Mさん」
階段を下りかけた私は、どうぞ、と言う前に、風呂から上がった夫を確認する。
まだ裸だ。
「Mさんが来たよ」
「お~い!上がって~」
「いっぱいやろそう」
「いいね~」
「ちっと買い物に行って来るすけ~」
お互いの顔もろくに見ないままで、Mさんは姿を消す。缶ビールと缶詰を買ってくるのだ。いつものことだ。
夫は着替えながら、「今日はMといっぱい飲むか」と、気分よさそうだ。昼間は友人と六万騎山に登ったので少々疲労している。
Mさんが来る前に入浴をする。
「azumiはどうした」
Mさんの声が聞こえた。
私は、髪をドライヤーで乾かすので時間がかかる。
又しても、「azumiはどうした」の声が聞こえる。
同じ事を何度も繰り返す。家で飲酒してきたようだ。
「はい、こんばんは」
戸を開けて挨拶。
「おお~っ、azumi悪かったな。しょっちゅう来て」
酔った顔が上気して、ニコニコ顔だ。
「悪くないよ。来てくれてありがとう」
そう言ったら、相好を崩して、破顔一笑ならぬ大爆笑になった。
酔っているから布袋様そっくりだ。
ウォーキングの行き帰りに、自宅の庭にいるMさんによく声をかけられる。
いつも笑顔だ。ちょっと前までは、雪片付けをしていた。うさぎ二匹といっしょだったりする。
Mさんとは親がいとこ、私はまたいとこの間柄。双方に、いとこがいたり、血のつながりが濃い。
夫が、
「Mに、ニコニコ話しかけられるので、立ち止まって話しをしたくなると、うちのお母さんも言っているよ」と。
この地域では、同級生や親しい人を、さん、づけでは呼ばない習わしがある。
最初、夫は戸惑った。
自分の妻を軽々しく、「azumi」と呼ぶとは何事だ、と。
私は、「M~」ではなく、「Mさん」と呼ぶ。
同級生でも、誰でも(どなたでも)同じだ。
「昔、azumiがうちのお父さんと友達になれそう、と言ったことがあったども、なあ、azumiおまえの勘は当たったな」
「よかったね。いい友達になれて」
その日の夕食は親子丼と、マイカップ一杯の赤ワイン。Mさんがいたので、少し酔ったのだろうか。何か、人生論を口にした。今、覚えていない。
Mさんが言う。
「azumi、学校の先生になっていればよかったな」
夫も、
「なるなら、小学校低学年の先生だよ。高学年は駄目、はり倒されちゃうよ」。
みんな、酔って好き勝手なことを言う。
ええ!
ええ!
私は、夢ばかり見てきただけのつまらない人間です。
向上心があればよかったのに!
今となっては、後の祭りです。
ちなみに、集会所の桜が満開になったら、茣蓙を敷いて二人で花見をするそうだ。
「次々といろんな人が集まって、楽しい花見会ができるぞ!!」
いいな~。
エンレイソウ(ユリ科)
イカリソウ(メギ科)
ムスカリ(ヒアシンス科ムスカリ属)
たけのこの若竹煮
娘婿の父上から旬の筍が届いた。
筍ご飯にしたり、掘ったばかりの若い美味しい筍だった。