議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

衆院予算委の分科会

2022-02-16 | 国会雑学
現在、衆議院予算委員会では分科会審査が行われています。

2022(令和4)年は、2月16日に7.5時間、17日に5時間の日程で開会されます。

分科会については、過去のエントリー「衆議院予算委員会分科会」をご覧いただければ幸いですが、全府省庁、皇室や国会、裁判所を含む政府関係機関を8つのグループに分けて、30分を1枠として、個別具体的な質疑が行われることが多い点も特徴のひとつです。

さて、久々の国会雑学として今回は分科会が行われなかった例を含め、1975(昭和50)年以降で、分科会審査を多く行った年と少なかった年について紹介したいと思います。

[1975(S50)年以降、分科会審査が長かった例]

5日間:1975(S50)年、1978(S53)年
4日間:1977(S52)年、1979(S54)年、1981(S56)年、1982(S57)年

[1975(S50)年以降、分科会審査が短かった例]

0日間:1987(S62)年、1989(H元)年
0.5日間:1976(S51)年

最近は、1日間か1.5日間の例が多くなっています。

分科会が全く行われなかった2例、1987(S62)年と1989(H元)年については大混乱の国会でした。

とくに、後者の1989(H元)年については、憲法第60条の規定による予算案の自然成立を許してしまった年でもあり、この件については過去例も含め、改めて紹介したいと思います。

なお、参議院においても昭和56年度総予算審査以前は分科会を開会していましたが、現在は各委員会に総予算について審査を委嘱する委嘱審査方式(※)を採用しています。

※委嘱審査とは(2015年4月16日)

国会の休会

2021-12-19 | 国会ルール
〇国会法第15条

国会の休会は、両議院一致の議決を必要とする。

国会の休会中、各議院は、議長において緊急の必要があると認めたとき、又は総議員の4分の1以上の議員から要求があつたときは、他の院の議長と協議の上、会議を開くことができる。前項の場合における会議の日数は、日本国憲法及び法律に定める休会の期間にこれを算入する。各議院は、10日以内においてその院の休会を議決することができる。

国会法第15条に規定される両議院の議決により「休会」となったのは、過去4回だけです。

いずれも今の国会になってから間もない第1回国会から第3回国会までのことです。

[休会した国会の回次・期間と理由]

第1回国会:昭和22年6月4日~昭和22年6月22日
(19日間休会)新内閣の諸準備のため

第1回国会:昭和22年9月1日~昭和22年9月14日
(14日間休会)内閣の議案提出準備のため

第2回国会:昭和22年12月10日~昭和23年1月20日
(40日間休会)年末年始のため

第3回国会:昭和23年10月24日~昭和23年11月7日
(15日間休会)新内閣の諸準備のため

その後は、国会法に基づく正式な議決を経ての国会の休会はありません。

ただ、与野党間の合意での「自然休会」状態になったことはあり、最近の例でいえば、下記の3例が該当します。

平成19(2007)年:第168回国会(臨時会)総理退陣以降表明後
平成23(2011)年:第177回国会(常会)東日本大震災発災後
平成27(2015)年:第189回国会(常会)お盆期間中

公選法第31条と想定される選挙日程

2021-09-07 | 憲法
〇日本国憲法第45条

衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

〇公職選挙法第31条(抜粋)

衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、議員の任期が終る日の前30日以内に行う。
2 前項の規定により総選挙を行うべき期間が国会開会中又は国会閉会の日から23日以内にかかる場合においては、その総選挙は、国会閉会の日から24日以後30日以内に行う。
3 衆議院の解散に因る衆議院議員の総選挙は、解散の日から40日以内に行う。

憲法第45条は、衆院議員の任期を4年とし、解散の場合には、その期間前に任期が終了することを定めています。これまで、任期満了選挙は昭和51(1976)年に一度行われていますが、憲法に規定される衆院議員の任期は超えていません。

令和3(2021)年9月7日現在、衆院議員の任期満了が10月21日となっていますが、現職首相が9月3日に退陣を表明し、今後、最大政党の総裁選に突入することとなり、「憲政の常道」とされる任期満了前の総選挙が厳しくなっている見方が大勢を占めています。

そこで今回は、公選法第31条第1項から第3項の規定に基づき、その規定の趣旨と考えられる選挙日程について概観したいと思います。

まず、衆院議員の任期満了(10月21日)に向けて想定されるパターンは、公選法第31条第1項から第3項の規定に基づき、3つあります。

1.任期満了選挙(公選法第31条第1項)

任期満了の前30日以内に行う=9月21日以降に行う

2.任期満了選挙(公選法第31条第2項)

任期満了の53日以内に国会が開会されていれば閉会から24日~30日以内に行う
=今回の場合、任期満了の53日以内は8月29日(日)以降であり、8月29日以降に国会が開会すれば、その国会閉会から24日~30日以内に行う

3.解散(公選法第31条第3項)

解散から40日以内に行う


上記1~3のパターンで考えられる日程は下記に記したいと思いますが、その前に、公選法第31条第1項と第2項の任期満了選挙について考えたいと思います。

憲法第45条は衆院議員の任期を4年と定めており、議員の任期満了の日まで会期を設けることは可能です。

よって、第1項に規定する任期満了による総選挙の原則を貫くときは、国会開会中に総選挙の公示がなされ、あるいは、国会開会中に総選挙が執行されることとなります。

この場合、現に在職中の議員は、その議員としての職責を果たすためには選挙運動ができず、選挙運動に専念すれば議員としての職責が果たせなくなるという不都合な事態が生ずるため、これを避けるのが第2項の趣旨です。

つまり、任期満了直前まで立法府の議員=衆院議員として仕事ができるようにするための規定であって、今回のように最大政党の総裁選の都合で使うことを念頭に規定されたものではありません。

であるならば、コロナ禍において、せめて、現に憲法第53条に基づく臨時会の召集要求が出されていることから、ただちに臨時会を召集して、国民のための議論を国会で行うのが筋ではないでしょうか。

[衆院議員の任期満了(10月21日)に向けて想定される日程]
※選挙期日(投票日)は日曜日限定、公示はその12日前に限定の場合

(1)任期満了選挙(公選法31条1項)任期満了の前30日以内=9月21日以降


9月14日(火)公示、9月26日(日)投票
9月21日(火)公示、10月3日(日)投票
9月28日(火)公示、10月10日(日)投票
10月5日(火)公示、10月17日(日)投票

(2)任期満了選挙(公選法31条2項)任期満了の53日以内に国会開会なら閉会から24~30日以内
=8月29(日)以降に開会すれば閉会から24~30日以内

 
どこかで召集し、10月21日に閉会の会期であれば、
11月2日(火)公示、11月14日(日)投票

(3)解散(公選法31条3項)解散から40日以内

総裁選後、10月上旬に召集、10月4日までに解散した場合、
10月26日(火)公示、11月7日(日)投票

10月5日以降、10月11日までに解散した場合、
11月2日(火)公示、11月14日(日)投票

10月12日以降、10月18日までに解散した場合、
11月9日(火)公示、11月21日(日)投票

10月19日以降、10月21日までに解散した場合、
11月16日(火)公示、11月28日(日)投票=最遅

第204回国会における束ね法案

2021-06-01 | 雑感
第204回国会の内閣提出法律案は、最終的に63本でした。

うち、本則で3本以上の法律案を束ねた内閣提出法案は、実に26本にも上ります。

技術的に束ねざるを得ない改正法案があるのは事実ですし、束ね法案が一概によろしくない、というわけではありません。

ただ、複数の法律を改正等しようとするときにこれらを束ねて一本の法律案として国会に提出する「束ね法案」は、法律案を束ねることによって国会審議の形骸化を招来するとともに、国会議員の表決権を侵害しかねないものです。

また、どの法律がどのように改正されるのか等が国民に分かりづらくなり、適切な情報公開とはならないおそれもあります。

これらは、このブログにおいても何度も指摘してきたことです。

今次常会は、とにかく束ね法案の割合が高いと言わざるを得ません。今次常会の閣法の本数を絞るために、束ね法案を多用したのではないかと考えざるを得ない状況でもあります。

束ね法案の立案作業においては、複数の法律案の立案作業を同時並行で行わなければならず、改正内容も幅広く、合議等を必要とする組織体が多岐にわたることも少なくありません。

このため、束ね法案の立案作業は、一般に、束ねる法律案の本数が多ければ多いほど、従事する職員に負荷がかかることになり、また、日程の余裕が失われることになると考えます。

事実、今次常会では、特に束ね法案において条文誤りや参考資料の誤りが続発したのです。この点については、別途書きたいと思います。

今次常会の束ね法案について、とにかく束ねた本数が多いという意味で、デジタル改革関連法案を紹介します。

参議院で予算案3案を審査中の3月に、衆議院で早々に審議入りしましたが、新規制定法4本と束ね法案1本(この中に59本)を一括審議するという、丁寧とはほど遠い形で審議が行われてしまいました。

内容もさることながら、束ね法案と一括審議で済ませてしまう審議の在り方については、議会人として思うところが多々ありますし、これだけの本数を束ね、なおかつ所管が寄せ集めの担当であれば、参考資料の誤りが多発するのは避け難い側面があったのではないでしょうか。

なお、今回のデジタル改革関連5法案の法案名は下記のとおりです。

[デジタル改革関連5法案]

〇デジタル社会形成基本法案(新規制定法)
〇デジタル庁設置法案(新規制定法)
〇デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(59本の束ね法案)
〇公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(新規制定法)
〇預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(新規制定法)


59本の束ね法案だった「デジタル社会の形成を図るための~法律」に含まれる法律は下記の通りです。

1.住民基本台帳法
2.社会福祉法及び介護福祉法
3.看護師等の人材確保の促進に関する法律
4.精神保健福祉士法
5.地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律
6.健康増進法
7.電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律
8.個人情報の保護に関する法律
9.行政手続における特定の個人を識別するための電話の利用等に関する法律
10.地方公共団体情報システム機構法
11.公認心理師法
12.民法
13.抵当証券法
14.死産の届出に関する規程
15.地方自治法
16.農業協同組合法
17.農業保険法
18.戸籍法
19.公認会計士法
20.損害保険料率算出団体に関する法律
21.建設業法
22.土地改良法
23.船主相互保険組合法
24.建築士法
25.商品先物取引法
26.鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律
27.漁船損害等補償法
28.宅地建物取引業法
29.公共工事の前払金保証事業に関する法律
30.中小漁業融資保証法
31.土地区画整理法
32.内航海運組合法
33.国民年金法
34.確定給付企業年金法
35.農業信用保証保険法
36.建物の区分所有等に関する法律
37.不動産の鑑定評価に関する法律
38.不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律附則第六条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされた同法第四条の規定による改正前の不動産の鑑定評価に関する法律
39.漁業災害補償法
40.通関業法
41.社会保険労務士法
42.都市再開発法
43.大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法
44.農住組合法
45.借地借家法
46.不動産特定共同事業法
47.政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律
48.密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律
49.資産の流動化に関する法律
50.建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律
51.マンションの管理の適正化の推進に関する法律
52.高齢者の居住の安定確保に関する法律
53.マンションの建替え等の円滑化に関する法律
54.刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
55.犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
56.株式会社地域経済活性化支援機構法
57.大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法
58.公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律
59.行政不服審査法

(参考)
束ね法案と一括審議-その1」平成27年5月16日
束ね法案と一括審議-その2」平成27年5月17日
束ね法案と一括審議-その3」平成27年5月25日
束ね法案と一括審議-その4」平成27年7月17日
束ね法案と審議時間」平成27年7月18日
第190回国会における束ね法案-その1」平成28年2月7日
束ね法案と一括審議-番外編」平成30年1月19日

条約の締結手続き

2021-02-18 | 国会雑学
〇条約の承認権(日本国憲法第61条、第73条)

条約の締結権は、内閣にありますが、条約は国家間の合意であるとともに、国内法的効力を持つものが多く、時として国民を拘束する命令や権利・義務に関する法規範を内容とすることがあります。

よって、内閣の意思だけでは問題との観点から、国会との共同責任として条約を成立させることが適当とされ、国会の承認を経なければならないこととされています。


では、その国会承認である条約の締結手続きはどうなっているのでしょうか。まず、条約には、「二国間」と「多国間」の条約があります。

「二国間」:条約交渉を経て、それまでの交渉を踏まえて署名
「多国間」:条約の趣旨や内容について基本的な賛意の表明として採択後に各国が署名して国会に提出

国会では両院の承認を行い、締結に至るという流れです。その締結の方法は4種類あります。

1.批准(憲法第7条第8号、天皇陛下による認証)
2.受諾・承認(天皇陛下の認証必要なし)
3.加入(多国間条約で他の外国間で既に署名済み又は発行済み)
4.公文の交換(二国間条約)

締結後はどうするか、ですが、下記を経て効力が発生することになります。

「二国間」:批准書の交換、外交上の公文の交換、相互通告
「多国間」:批准書、受託書、承認書か加入書の寄託

なお、締結の方法の選択は条約の定めによります。

条約は予算案と同様、衆議院の優越が認められています。ちょっと亜流な紹介の仕方ですが、よろしければ約2年前のエントリー「衆議院の優越(条約)」をご覧ください。

ただ、だからといって、条約の提出を内閣自ら定めた期限を超えて遅れるにも関わらず、その報告を片方の院に対して失念するようなことがあってはならないと思います。

独立機関の委員会出席-その2

2021-02-17 | 国会ルール
〇国会法第72条

委員会は、議長を経由して会計検査院長及び検査官の出席説明を求めることができる。最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。

〇国会法第105条

各議院又は各議院の委員会は、審査又は調査のため必要があるときは、会計検査院に対し、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができる。

前回は、司法権たる裁判所が委員会に出席する場合の国会法の書きぶりが、国務大臣や会計検査院のそれとは大きく異なることを紹介しました。

〇国71(抜粋)委員会は、国務大臣の出席を求めることができる。
〇国72前段(抜粋)委員会は、会計検査院長の出席を求めることができる。
〇国72後段(抜粋)最高裁長官又は代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる


そこで、今回は会計検査院の項目が独立しているのはなぜか、に着目してその理由を紹介したいと思います。

まず、会計検査院の位置付けについて確認します。

〇会計検査院法第1条:会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。

会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する一方、会計検査院法第30条において、検査官が国会に出席して説明できることも定めています。

国務大臣等と異なる条文で会計検査院長等の委員会への出席説明を置いた理由は、ひとえに会計検査院が内閣から独立する地位に置かれているためです。

国の財政を処理する権限は行政権たる内閣に属しますが、これを国民の代表機関である国会の統制の下に置かなければならない、という原則は財政民主主義を反映したもので、その財政民主主義の一つとして会計検査院の存在があるのです。     
なお、平成9年の国会法改正により、国会から会計検査院に対して特定事項の検査を要請することが可能となっており、これについては約3年半前のエントリー「会計検査院に対する検査要請」をご覧いただければと思います。

さらに、もう一点。会計検査院検査官については、国会同意人事の所信聴取対象者となっています。

内閣から国会に提示される人事案の中でも、日本銀行総裁や公取委員長など、特に重要な幾つかの人事案についてのみ衆参両院の議院運営委員会で所信を聴取し、質疑することとなっており、会計検査院検査官はこの対象なのです。詳細は、約5年前のエントリー「国会同意人事-その2」をご覧いただければと思います。

独立機関の委員会出席-その1

2021-02-16 | 国会ルール
〇国会法第72条

委員会は、議長を経由して会計検査院長及び検査官の出席説明を求めることができる。
最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。


今回は三権分立の観点から、たとえ話を交えつつ、国会のルールを紹介したいと思います。

とある委員会で参考人質疑にあたり、どなたをお呼びするか話題になりました。ある分野の権威で、与野党ともに〇〇氏の話をうかがいたいとなりました。そこで、最新の役職を確認したところ、大学教授兼最高裁判所判事であることが判明しました。

最高裁は言うまでもなく司法権に属します。三権分立の観点から、国会の委員会にお呼びすることはできるのでしょうか。はて、まったく委員会に呼べないのかといえば、そうではありません。

たとえば、裁判所所管事項についての予算や定員に関しては、その説明を裁判所が行う必要があります。実際、現在開会中の国会には、「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」(閣15号)が2月2日、国会に提出されています。

よって、司法権に関する事項であっても立法の対象となるために、国会法は、最高裁判所に対して委員会に出席説明することができることとしているのです。

ただ、国務大臣や会計検査院長とその書きぶりは全く異なります。

〇国71(抜粋)委員会は、国務大臣の出席を求めることができる。
〇国72前段(抜粋)委員会は、会計検査院長の出席を求めることができる。
〇国72後段(抜粋)最高裁長官又は代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる

国務大臣や会計検査院長は、国会の側に出席を求める権限がある形になっている一方、司法権たる最高裁に関しては国会の側に出席を求める権限がある形をとっていません。

つまり、最高裁に関しては国会の側に出席説明を求める権限はなく、委員会が出席説明の要求を行ったとしても、それによって最高裁側に法的な出席説明の義務が生じるわけではないということなのです。

司法権の独立を、国会法が配慮している証左ではないでしょうか。

臨時会の会期

2021-02-15 | 国会雑学
〇国会法第12条

国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。会期の延長は、常会にあつては一回、特別会及び臨時会にあつては二回を超えてはならない。

令和3年(2021)年2月15日現在、開会中の国会は第204回国会(常会)です。

直前は、第203回国会(臨時会)であり、その会期末はコロナ禍においてただの一度も延長されることなく、当初予定された41日間で令和2(2020)年12月5日に閉会しました。

今回は、これまでの国会の歴史の中で、臨時会で長期だった国会がいつ、どの程度の期間だったのかを紹介します。国会法第12条の規定には、臨時会は2回まで延長できることとされており、長期だった臨時会における延長回数についても併せて紹介します。

[長期だった臨時会]

昭和63年 第113回国会 163日間(延長2回)
平成5年 第128回国会 135日間(延長1回)
平成19年 第168回国会 128日間(延長2回)

国会法第10条で常会の会期を150日間と定めており、それを超える日数の臨時会は、昭和63年の例1回しかありません。

では逆に、短期だった臨時会はというと、会期1日間になりますが、過去に3回あります。

[短期だった臨時会]

昭和61年 第105回国会 1日間
平成8年 第137回国会 1日間
平成29年 第194回国会 1日間

コロナ禍においては、昨年の臨時会、少なくとも1回は延長すべきだったのではないかというのが筆者の見解です。国会は開会中でなければ立法措置等を行う機能を有しないためです。

委員会への国務大臣の出席

2021-02-12 | 国会ルール
〇国会法第71条

委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席を求めることができる。

〇参議院委員会先例録246

内閣総理大臣その他の国務大臣並びに内閣官房副長官、副大臣及び大臣政務官並びに政府特別補佐人の出席要求は、成規の手続を省略して、委員長から直接これを行うのを例とするが、成規の手続により、議長を経由してこれを行った次のような例もある。

各委員会に出席する国務大臣については、それぞれの委員会の所管を踏まえ、各委員会で協議され、決定されています。

なお、各委員会での協議とは、実際には理事会でのそれを指します。

委員会への国務大臣の出席については、国会法第71条で「委員会は、議長を経由して内閣総理大臣その他の国務大臣(中略)の出席を求めることができる」と規定されていますが、実際は、参議院委員会先例録246にあるとおり、「出席要求は、成規の手続を省略して、委員長から直接これを行うのを例とする」運用がとられています。

では、委員会に出席する国務大臣を変更する場合はどうするのでしょうか。これまでは、〇〇委員会に出席していた国務大臣が、△△委員会に出席することになる場合のことです。

これについては、まず、〇〇委員会理事会で協議し、調えば、変更先の△△委員会理事会で協議して、その手続は終了します。

つまり、出席大臣の委員会の変更については、当該委員会が自律的に決めることなのです。

最近の傾向として、これまで例のなかった参考人質疑が議院運営委員会で行われたり、緊急事態宣言の国会報告の場として議院運営委員会が使われたり、と何でもかんでも議院運営委員会で裁けばよい、との風潮があるような気がしてなりません。

仮に、出席大臣の件にしても、当該委員会の理事会で協議が調わなかったため、やむを得ず、議運理事会で方向性を確認したい、ということであればまだしも、当該理事会でそもそも何ら協議も行われていない段階で、議運理事会で委員会の出席大臣変更の方向性を確認しようとすることは筋違いです。

各委員会の所管事項と所管大臣は「表裏一体」の関係にあるかもしれませんが、それを言うなら、規則に定める各委員会の所管事項を協議すべきではないでしょうか。

議院規則と先例

2020-07-26 | 憲法
○日本国憲法第58条第2項

両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。 

憲法第58条第2項は、議院規則を定めています。

議院規則とは、議院の会議その他の手続及び内部の規律に関して各議院の議決によって定められる法規範のことです。

衆議院には衆議院規則が、参議院には参議院規則が存在し、議院自身が国会外の機関や他の議院の干渉を受けることなく、議院内部に関する事項について規定し、議院自律権の重要な内容を定めているのです。

憲法上、各議院の内部事項は議院規則で規定するよう定められていますが、実際には、国会法が憲法との間に介在する形をとっています。そのため、議院規則は国会法の施行細則を定めたような様相を呈しており、各議院の内部組織の改編を行う場合にも、国会法の改正が必要となっています。

例えば、昭和61年に参議院独自の機関である調査会の制度が創設されましたが、この場合にも国会法及び参議院規則の一部改正を行いました。ただ、直近の平成30年参議院改革協議会報告書に基づく行政監視機能強化に関しては、国会法の改正はせず、参議院規則の一部改正にとどまっています。

国会法の改正は、衆参両院の本会議を通過させないといけませんから、双方の院に関係しない場合、特に国会法の改正は大変です。参議院の調査会制度創設のときがそうだったように。

なお、議院規則は議院の内部事項を対象とする法規範であるため、その制定・改正については公布が必要とされていません。しかし、各議院の活動は単に議院内部にとどまるものではなく、国民や内閣など外部との関わりを持つことも例外的なことではありません。そのため、議院規則の改正等については、法律の公布と同様に官報に掲載され、国民に周知されるよう取り扱われています。

これに対し、先例とは、議事関係法規に規定のない事項、その解釈に関する事項その他議院の運営に関する事項についての前例であり、議院の運営につき議事関係法規とともに拠りどころとなっているものです。

国会は、憲法、国会法及び衆参議院規則などの議事関係法規に従って運営されていますが、これらの法規だけであらゆる事態に対応することは不可能です。

例えば、憲法第67条第1項において、内閣総理大臣の指名は他のすべての案件に先立って行うよう定められています。ただし、実際の議事運営においては、議員の議席指定や正副議長の選挙など議院の構成のように、内閣総理大臣の指名に先立って進めるべきものもあり、これら議事日程の編成については先例に書き込まれています。

このように、法規の内容では足りないところを補充しながら円滑な議事運営を図るため拠りどころとなるのが先例であり、議会の先人が積み重ねたものである以上、その存在は重いのです。

○日本国憲法第67条第1項

内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。