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お気に入りの音楽や活字。その中に秘められた想いと、世の中の事、セールスの事をリンクさせて紹介していきます。

リズミカルな表現手法を身につける

2010-12-19 | Haruki Murakami
“1Q84”を読むまで殆ど、村上春樹氏の著を読んだことが無かった、、後追いで読むで何かイヤで。。。 しかし、たまたまタイトルに引かれてその書籍に触れて脳髄に直撃を受けた。。前頭葉がビシビシ刺激されたというか。。一気にムラカミ・ワールドに染まってしまいました。。今年に入り、、“風の歌を聴け”からの長編はすべて読み込みまして、、、堪能と官能の1年を過ごせたように感じます。

今日はその中で、、異作の一つ“国境の南、太陽の西”1992年10月に書き下ろし長編小説として講談社より発売。アメリカのプリンストンで書かれました。 次作“ねじまき鳥クロニクル”の執筆中、、第1稿を推敲する際に削った部分が元になり、、そこに更に加筆するカタチで完成させた作品です。

時代はバブル絶頂期の東京。。自分は不完全だと感じる主人公の僕(ハジメ)が自身の成長過程を振り返りながら、、『上品なジャズバー』を経営し裕福で安定した生活と家族に恵まれ。。奥様と子供2名との暮らしが表面的には何の問題も無いだが、、ココロの空白は埋めることができないような虚無感がある。。昔の忘れられない思い出。。淡い島本さん刹那な思い出とそしてイヤなカタチで別れた彼女イズミの思い出が頭の中を過ぎる。。。 そんな中成功を収めた主人公が、、雑誌ブルータスに取り上げられ、、過去の友人などがザジバーへ足を運んでくれ、イズミの変わり果てた現状を知ることになり、、イズミがこの場所へ来るのではないかという感覚に陥る、、しかし雨の降る夜に表れたのは島本さんだった。。。。。 過去に街で見かけた「赤」い女性は島本さんであり、、主人公の前に登場する島本さんはいつも「青」 一見すると何でもない過去から心引かれた女性との不倫? ラヴ・ロマンス。。そして家庭崩壊で、彼女と最後は一緒に・・なんてありきたりの表面浚い型の文章になっちゃうようなモノですが、、そこはムラカミ・ワールド。。捲りめく現世と黄泉の通信衛星的な不可思議な感覚へと読者を誘います。。 島本さんは本物なのか、、イズミの化身なのか? 独特な生きている人物なのか? 死んでいる人間との霊的通信の中を読者は現実と重ねて表現しているのか?? 浮遊感たっぷりの感覚はデビュー作品の『鼠』の表現からスタンスとしては変わらないですね。。 このタッチが独特な世界を醸し出し、、何でもない恋愛小説をここまで「盛る」か!!と読後感を思わせる変な感動が押し寄せます。 面白いです。。音楽に造詣の深い氏ならではの「音」の活用。ページを捲るたび聞えるBGM・・ 読みながら聴覚の創造力をここまで高めることができるのもムラカミ・ワールドの特徴ですね。。 視覚的要素はどの書籍も当たり前ですが、、こんなに聴覚を刺激作品を毎回毎回生み出すパワーと表現力も魅力の一つだと感じます。。

もちろん視覚的要素としての表現力を凄まじいモノがありますが、、何でもない食事を作る作業も表現の仕方でこんなに味覚を刺激されるのか。。と感じるくらい説明表現がうまいですよね。 本を読むとバーへ行ってお酒片手につまみが食べたくなったり、、パスタが食べたくなるのは他の作者では絶対に無いですね。
“ノルウエーの森”は「赤」と「緑」が死と生の表現として活用され対比しながら物語が進みましたが、、この作品は「赤」と「青」。赤は生の象徴で、青は死の象徴。。そんな対比の表現と色使いを感じるとまた見える世界がありますね。。

普通の日常をここまで非日常的に表現できる。。ウマサ、面白さ。。 単なる不倫小説になっちゃうことをここまで深く、、バブル時代の幻想を揶揄し、、マヤカシの世をあざ笑うかの如く。みんな!目を覚ませ!!と このまま行っちゃうと、、日本は太陽の西。。国が沈むよ~ なんて言っているようで・・・日出る国が、、太陽の西へ行けば・・・中国 そして、、次作品“ねじまき鳥クロニクル”では、、日中戦争を含めた、、日本が一度没する過程の一部が赤裸々に表現されることになりますね。

普通のことでもどこまで上手く表現できるか。。自社も商品・サービスなど、、村上春樹の文章から学べることは沢山ありますね。何気ない表現に着目してみよう~

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