ひとり語り 劇車銀河鐵道 いちかわあつき

 ひとり語りの口演や、絵本の読み語りなどの活動をしています。
 何処へでも出前口演致します。

普通の日々 PART 2

2008-06-14 14:55:28 | Weblog
 僕の勤める会社は人員整理が始まり、何人かの仲間が退職していくという状態になっていました。僕はかろうじて留まり、一縷の望みを繋ごうとする会社で、これまでとは少し異なった仕事内容に従事していました。
 そんな状態ではありましたが、僕は付き合っている彼女と結婚することを決め、デートに忙しい日々を送っていました。
 芝居の道は捨てたといいながら、デートでの話題はしばしば演劇の話になり、少し演劇に興味を持っていた彼女に別役実の戯曲を読んで聴かせるなんてこともしていました。
 結婚を承諾してもらう条件に、もう東京に行くなんてことはないか? と、念を押されたほどでしたから、よっぽど芝居のことばかり話していたのだと思います。

 そんな折も折、地元の劇団「夜明け」から、劇団創立35周年を記念して、親子向けミュージカル、井上ひさし作の「11匹のネコ」をやることになったので、そこで主役のにゃん太郎を演ってみないかと誘われました。
 劇団「夜明け」は、僕が東京での青年劇場との経緯もあり、接触は避けていたのですが、そんな風に声をかけてもらって、心が揺らぎました。
 もし会社が順調で、仕事も忙しく最初の1年目のような時だったら、即座に断っていたと思います。僕はもう演劇を捨てた人間ですとか何とか、カッコつけたセリフを吐いて・・・。しかし、仕事の状態はそんな風だし、芝居から離れて約2年、そろそろ芝居の虫が、身体のどこかでむずむずしだしていたのです。
 もちろん、僕の一存では決められません。1番に彼女に相談しました。実は彼女も前に少し、劇団「夜明け」に短期間でしたが携わっていたことがあって、その時はもう辞めていたので、少し複雑な思いはあったのでしょうが、「貴方が演ってみたければ、演ってみたら・・・」と、僕の気持ちを察して、承諾してくれました。
 それで、この公演1回きりのつもりで、出演させてもらうことに決めたのです。
 本来が脳天気な僕、仕事がそんな状態なのに、結婚も決め、おまけに芝居出演まで決めてしまいました。1985年の春の頃のことだったと思います。