くづれゆく 枯れ松ありて 秋さびし 夢詩香
*松の写真がないので、エノコログサで代用です。
この近くに小さな空き家があって、その荒れ放題の庭の隅に、枯れた松の木が立っているのです。
誰も世話をしませんから、その松の木は枯れたままだんだん崩れてゆく。そのさまが寂しく悲しく、表題のようなのを詠んでみました。
松という木は、人間に秩序感覚を呼び覚まします。見ているだけで人間の心に作用し、美しいことをしようという心を刺激するのです。
松の木があるだけで、人間はかなり整ってくる。そういう木なのですが。
それが今、見る影もなく枯れてしまっている。それはこの世界で、秩序というものが崩れてきている表現ではないかと探ります。
世の中には偽物ばかりが繁栄し、本当の自分で働くよい人間がめったにいない。そういう世の中になってしまっては、松の木も青々と茂ることが難しいのではないか。
田舎の隅の小さな空き家の庭で、だれに振り向かれることもなく、枯れて崩れてゆく松の木を見ながら、この世を嘆いてみました。