チェインブレーカー及び関連領域の郵便史

ユーゴスラヴィア建国当時~1922年頃までの旧オーストリア・ハンガリー帝国地域のチェインブレーカーを中心とした郵便史

191101裏 小包第3期料金初日に第2期の料金を適用

2007年11月20日 20時19分34秒 | 小包第3期
191101裏 小包第3期料金初日に第2期の料金を適用

到着印:ZAGORJE OB SAVI 4 XI 19 a (1919年11月4日)、スロヴェニア語表記。
ただし、郵便局名のほとんどは最後の文字Iを除いて代金引換金の郵便為替用紙の下に隠されています。ドイツ語表記SAGORを削除してユーゴ化しています。
受取人サイン日付:1919年11月5日
備考:代金引換金の郵便為替用紙の左半分が残されています。この用紙はドイツ語とスロヴェニア語の二ヶ国語表記です。

191101表 小包第3期料金初日に第2期の料金を適用

2007年11月20日 20時18分55秒 | 小包第3期
191101表 小包第3期料金初日に第2期の料金を適用

第3期初日、クロアチアからスロヴェニア宛て
小包送票:ハンガリー王国10 fillér(小包送票代金の収入印紙、小包料金に含まない)、ハンガリー語・セルボクロアート語表記、薄青紙、小型

小包ラベル:Donja Stubica 354
その他のラベル:黄色紙に赤字でUtánvétel, Remboursement 代金引換を表すハンガリー語とフランス語の記載。

料金手書き:小包料金:記載無し、代金引換金額:右下に54.74

切手:スロヴェニア5 vinar (Mi.100石版)、2 Krona(Mi.110)、合計2 Krona 05 vinar

料金計算:第2期の料金で計算
重量料金1.2kg----1.5 Kruna
価格表記(保険)81 K---25 filir
代金引換54.74 K---20 filir
通知料金---10 filir
合計 2 Kruna 05 filir (貼り付け切手と一致)
備考:第3期の料金で計算すると、重量料金だけで3 Krunaになり、貼り付けられた切手を大幅に超えてしまいます。第2期の料金で計算すると、貼り付け切手と一致しますので、この小包は、第3期初日に誤って第2期の料金を適用したと考えられます。

消印:DONJA STUBICA 919 NOV -1 N11 B (1919年11月1日) ハンガリー型消印


小包料金 第3期 1919年11月1日~1920年5月15日まで

2007年11月20日 20時16分12秒 | 郵便料金
I. 小包料金 第3期 1919年11月1日~1920年5月15日まで

第2期以降はSHS王国(ユーゴスラヴィア)全土で統一された郵便料金として実施されました。

以下の料金を小包発送者から徴収しました:
(1)重量料金
3 kg以下----------------3.00 Kronen
3~5 kg以下-----------4.50 Kronen
5~10 kg以下----------9.00 Kronen
10~15 kg以下--------13.50 Kronen
15~20 kg以下--------18.00 Kronen

(2)かさばる小包:重量料金に対して50%増し
(3)通知料金:15 vinar

(4)配達料金:1.80 Kronen

(5)速達料金:2.50 Kronen

(6)代金引換料金:20 vinar

(7)価格表記(保険)料金
300 Kronen以下-----------------------------------------75 vinar
300 Kronen~1500 Kronen以下--------------------1.50 Kronen
1500 Kronen~3000 Kronen以下-------------------3.00 Kronen
3000 Kronenを越えると1000 Kronen毎に-----3000 Kronen以下の料金3.00 Kronenに、1000 Kronen毎に1.50 Kronenを加算

以下の料金は小包の受取人から徴収し不足切手で領収したと考えられます。
(8) 小包私書箱への小包の保管に対する小包1個当たりの料金
文献情報無し。
ただし、私の手元にはサラエヴォで10 hellerを徴収した使用例が2例あります。このため、この料金は以下のように第1期と同額であったと推定されます。
①スロヴェニアのリュブリャナ、マリボール、ツェリエ 10 vinar、その他では5 vinarと推定
②ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエヴォ、モスタル 10 heller、その他では5 hellerと推定
③クロアチアは不明

備考:
文献(1)にはオーストリア帝国の通貨であるKronen単位で料金表が記載されていますので、その方式に従ってここに記載しています。各地域の通貨への換算は「ユーゴスラヴィア建国当時の通貨単位」を参照してください(関連する全ての通貨が1:1の交換比率ですから換算は簡単です)。

参考文献
(1)Nachrichtenblatt der Arbeitsgemeinschaft Jugoslawien und Nachfolgestaaten 47/93, p.732-735 (1993)
Pror. Dr.-Ing. Klaus Wieland
Ausgewählte Postgebühren in Slowenien 1918 bis 1921
スロヴェニアにおける1918年~1921年までの郵便料金選集


II.ユーゴスラヴィア建国当時の通貨単位

1.オーストリア・ハンガリー帝国
①オーストリア帝国、占領下のボスニア・ヘルツェゴビナ: heller, Krone
②ハンガリー王国: fillér, Korona

2.SHS王国建国後
③スロヴェニア: vinar, Krona
④クロアチア: filir, Kruna
⑤ボスニア・ヘルツェゴビナ: heller, Kruna

小包第1期の郵便料金は旧オーストリア・ハンガリー帝国の料金であるため、この両国の通貨を使って記載します。
SHS王国建国後の各地域で発行された切手の額面は、各地域の通貨単位で記載します。
小額の通貨単位は小文字で記載し、大きい単位は大文字で書き始めます。
尚、1920年5月16日からセルビアとの通貨統合がおこなわれるまでは、上記の①~⑤の通貨の価値は同等でしたので以下の交換レートが成り立ちます:
100 heller = 100 fillér = 100 vinar = 100 filir = 1 Krone = 1 Korona = 1 Krona = 1 Kruna

参考文献
(1)MICHEL ÖSTERREICH-SPEZIAL 1990
(2)MICHEL Europa-Katalog Ost 1988/89
(3)MICHEL 1952年版のユーゴスラヴィア (国立国会図書館研究員・田中邦夫氏にご提供いただいたものです)
(4)Stanley Gibbons Stamp Catalogue Part 3 Balkans, 3rd edition, 1987