クラシック音楽のひとりごと

今まで聴いてきたレコードやCDについて綴っていきます。Doblog休止以来、3年ぶりに更新してみます。

ボールト/LSOのブラームス 交響曲第3番ヘ長調

2006年07月21日 03時28分39秒 | 交響曲
雨が続いています。よく降ります。
雨のせいで、窓を閉めていても涼しい一日でした。

そこで今日はブラームスの交響曲を聴きたくなりました。

取り出したのは、ブラームスの交響曲第3番ヘ長調作品90。
サー・エードリアン・ボールト指揮ロンドン交響楽団の演奏。
1970年から72年にかけてEMIに録音された全集を、DISKYが廉価盤で再発したもの。ホンマ激安で有り難い。

ロンドン響は、冒頭のトランペットがしくじっているが、全体的には好演。
ボールトの指揮は地味で堅実。奇をてらうことなく、匠気をひけらかすこともなく、ひたすら作曲家に忠実に、作品を音化してゆく。
男性的なダンディズムに貫かれた指揮ぶり。ただ音楽のそこかしこから、ためらい、恥じらい、振り返ったり逡巡したり・・・そんなブラームスが見えてくる。
スピーカーからもれてくる空気もブラームス的な感じ。すこしくすんだ、モヤッとした空気が流れてゆく。
ブラームスは誠実で、しかし内気な人だった。そんな人柄がボールトに乗り移ったか。

ロンドン響の響きもイイ。華やかにならず、ややくすんだ、渋めの音がいかにもブラームス的。ウィーン的な優美さやドイツ的な重厚さはないが、実質に徹したいい音がする。

白眉は中2つの楽章か。
第2楽章アンダンテの曖昧模糊とした風情。木管の綾なす響きは大変デリケートでニュアンス多彩。弦楽セクションも、地味だが優しく温かく包み込むような響きが、実にイイ。ホルンや木管の味わいは格別。コーダでのヴァイオリンの引きずり方も、何とも云えぬ哀愁あり。

第3楽章ポコ・アレグレットは、映画音楽にも用いられた有名なメロディ。
ボールトはテンポを速めにとってサラッと進んでゆく。情緒纏綿・お涙頂戴・ドロドロの愁嘆場とは、無縁のダンディな演奏。しかし、その速さが、ニュアンス一杯の速さ。味わい深いというか、男のやせ我慢というか。
木管と弦楽セクションのバランスが良い。互いに慈しむように寄り添って語らう。後半部でのホルンのソロなどは、ボールト盤でなければなかなか聴けない情趣あり。


録音状態は、さすがに古くなってきました。
EMIの録音なのでそんなに期待しちゃイケナイんでしょうが・・。
ただ、ボールトの意図はよく伝わります。
いや、違う。意図らしい意図はないんです。作為などないんです。
自然なブラームスです。でも、ニュアンス一杯。
これは、男のブラームスですな。



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