雨上がりの一日、夜風が涼しいのです。
爽やかな六月の夜風を部屋に入れながら、ショパンを聴いておりました。
■ショパン:バラード 第1番ト短調 Op.23
■演奏:アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(Pf)
■録音:1971年10月ミュンヘン DG盤
ミケランジェリのショパンのディスクは少ない。おそらく、メジャー・レーベルに録音しているのはこのディスクが唯一のものではなかろうか。(もっとも、ミケランジェリの場合は、ディスクそのものが少ないのだけれど)。それだけにDG盤のショパン作品集は貴重と言えそう。
精妙でデリケート。知的によくコントロールされたショパンであって、望郷のやるせない思いとか、揺れ動くロマンの心情とかはあまり感じられない。情念のほとばしり、感情の爆発からは遠いところに位置していると云うべきか。
音楽のフォルムは最初から最後まで崩れず、ひたすたミケランジェリの世界に没入してゆく。聴いていると、「形而上学的」などと云う言葉を思い出すほど、この演奏は全く感情的にならない。その点ではとても面白い演奏。
ピアノの音色は非常に美しい。録音は40年も前なのに、あまり感じさせない美しさ。
ニュアンス多彩で、大変繊細な音色感、色彩感。
う~ん・・・・素晴らしいなぁと思う。
と、思って五味康祐の著書『いい音いい音楽』(1980年10月10日 読売新聞社刊。この本の出版前の1980年4月1日に死去。これが絶筆となった)を読み返してみて驚いた。
五味はミケランジェリをジャリタレとこき下ろすんですな。
この本の102ページ「新旧演奏家を聴きくらべたら」というエッセイの一節に、五味はこう書くのです。ちと引用します。
「先日FMを聴いて、久しぶりに感動した。(中略)ショパンの『バラード1番ト短調」をミケランジェリとコルトーで聴かせてくれたのだが、新旧を比較すると、いかに往年のピアニストたちは各自にすごい芸格をもつ演奏家だったかがわかり、レコードのありがたさを再認識した。
ミケランジェリも、たしかに音色は華麗だが、往年のコルトーのと聴きくらべると、まるでジャリタレである。ミケランジェリの美しさにひかれてきた私(五味のこと)は、あまりなコルトーとの芸術の違いに愕然とした。だから音楽演奏はこわい。」
ふ~む・・・ボクはミケランジェリは十分にスゴイと思うのだけれど、コルトーの全盛期はそれ以上だったのか・・・・。
と思いつつも、同書籍の中で五味は「他人の褒め言葉うのみにするな」とも書いていますので、うのみにしないようにしましょう・・・(笑)。
ところで、この「他人の褒め言葉うのみにするな」というエッセイでは、ポリーニをぼろくそにこき下ろします。ポリーニのベートーヴェン後期ピアノ・ソナタ集は駄目なのだそうです。そのことについては、またの機会に。
爽やかな六月の夜風を部屋に入れながら、ショパンを聴いておりました。
■ショパン:バラード 第1番ト短調 Op.23
■演奏:アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(Pf)
■録音:1971年10月ミュンヘン DG盤
ミケランジェリのショパンのディスクは少ない。おそらく、メジャー・レーベルに録音しているのはこのディスクが唯一のものではなかろうか。(もっとも、ミケランジェリの場合は、ディスクそのものが少ないのだけれど)。それだけにDG盤のショパン作品集は貴重と言えそう。
精妙でデリケート。知的によくコントロールされたショパンであって、望郷のやるせない思いとか、揺れ動くロマンの心情とかはあまり感じられない。情念のほとばしり、感情の爆発からは遠いところに位置していると云うべきか。
音楽のフォルムは最初から最後まで崩れず、ひたすたミケランジェリの世界に没入してゆく。聴いていると、「形而上学的」などと云う言葉を思い出すほど、この演奏は全く感情的にならない。その点ではとても面白い演奏。
ピアノの音色は非常に美しい。録音は40年も前なのに、あまり感じさせない美しさ。
ニュアンス多彩で、大変繊細な音色感、色彩感。
う~ん・・・・素晴らしいなぁと思う。
と、思って五味康祐の著書『いい音いい音楽』(1980年10月10日 読売新聞社刊。この本の出版前の1980年4月1日に死去。これが絶筆となった)を読み返してみて驚いた。
五味はミケランジェリをジャリタレとこき下ろすんですな。
この本の102ページ「新旧演奏家を聴きくらべたら」というエッセイの一節に、五味はこう書くのです。ちと引用します。
「先日FMを聴いて、久しぶりに感動した。(中略)ショパンの『バラード1番ト短調」をミケランジェリとコルトーで聴かせてくれたのだが、新旧を比較すると、いかに往年のピアニストたちは各自にすごい芸格をもつ演奏家だったかがわかり、レコードのありがたさを再認識した。
ミケランジェリも、たしかに音色は華麗だが、往年のコルトーのと聴きくらべると、まるでジャリタレである。ミケランジェリの美しさにひかれてきた私(五味のこと)は、あまりなコルトーとの芸術の違いに愕然とした。だから音楽演奏はこわい。」
ふ~む・・・ボクはミケランジェリは十分にスゴイと思うのだけれど、コルトーの全盛期はそれ以上だったのか・・・・。
と思いつつも、同書籍の中で五味は「他人の褒め言葉うのみにするな」とも書いていますので、うのみにしないようにしましょう・・・(笑)。
ところで、この「他人の褒め言葉うのみにするな」というエッセイでは、ポリーニをぼろくそにこき下ろします。ポリーニのベートーヴェン後期ピアノ・ソナタ集は駄目なのだそうです。そのことについては、またの機会に。
コルトーのショパンピアノ曲集CD6枚セットの中に、この曲の1926年録音が入っていたので、聴いてみました。コルトーの他の曲における演奏に比べ、特にこの曲の場合、演奏者の解釈が際立っている印象を受けました。
私は、この曲に関しては、アシュケナージの若い時の録音が好みで、それに取って代わるものではないものの、有名な演奏家の演奏が伝わってくる貴重な録音だろうと思います。ミケランジェリの演奏録音も聴いてみたいと思います。
五味氏がどのような意味で「芸格」という言葉を使ったのか分かりかねるのですが、「芸風」という意味に近いのであれば、その評価は人様々ということで、参考に聞き置く程度でいいのかな、と思います。HABABI
僕はコルトーのことはよく知らないのですが、五味康祐の本は何冊か読みました。『西方の音』『天の声』は良かったです。今も時々取り出しては読んでいます。この本には随分影響されました。学生時代に入手して30年、今も古びていないような気がします。
五味の毒舌は、これはこれで結構面白いんですよね。
そうそう、『いい音いい音楽』には「カラヤン帰れ!」というエッセイがあって、カラヤンとその聴衆をコケにしています。五味はカラヤン嫌いで有名でした。
五味の文章は面白いです。嫌いな演奏家だと罵詈雑言、カラヤンなどはヒドイ云われようです。笑ってしまうくらいです。
しかし、演奏に向かう姿勢は真摯です。レコードを愛していたんでしょうね。
さて、コルトーのことは殆ど聴いていないので分からないんですが、アシュケナージはイイですね。最も好きなピアニストです。録音がDECCAということもあるのでしょうが、とにかくピアノのおとが綺麗です。硬質で輝くような音がきこえます。アシュケナージのショパンは本当によく聴きました。
毎日の楽しみが一つ増えました。
ここ数年、いろんなピアニストの録音を聴くようになって、好きなピアニストが山ほどできて困ってしまいます。
以前レーゼルの3つのBOXセットを記事でご紹介されていましたが、私は昨年暮れからレーゼルにすっかりはまって、よく聴いています。
特に、今進行中のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集録音が素晴らしく良いですね。
著名な批評家の先生方の文章は面白くはあるんですが、極端な見方が多く好みとは合わないところがあって、専門家のレビュとしては作曲家の方のブログや本を参考にしています。
それでも、評価が正反対になることは多いので、あとは自分で聴いて判断するしかないというところですね。
若い頃のポリーニのベートーヴェンを批判する方も多いですが、堅固な造形力と明晰さがあるので、私はグルダよりもずっと好きです。
「気ままな生活」のyoshimiさん、お元気そうで何よりです。この春から僕は自宅に戻りましたので、ポツポツとエントリーしています。またよろしくお願いします。
レーゼルのピアノ、いいですねえ。3つのBOXは激安の衝動買いだったのですが、随分楽しませてもらいました。レーゼルの新しいベートーヴェン全集が進行しているんですね。これは未聴なのですが、いちど聴いてみたいです。
ポリーニの演奏はおしゃるようにきわめて明晰、とても晴れやかな演奏で、面白いなぁといつも思います。
Amazonで検索したところ文庫本で再発されてものがあったので早速注文いたしました。
内容に関しては以前に書かれたものの二番煎じの感は否めず正直がっかりいたしました。
本編よりもむしろ娘さんの由扶子さんのあとがきのようなもののほうが面白かったです
特に父の死後、オートグラフがいい音で鳴らなくなった、父に殉死したというくだりにはホロリとさせられました。
氏は音楽とオーディオを真摯に愛し続けました
、それが故に時にはそれが暴走した時もあったようです。
氏のLPのコレクションは驚く程少なく500枚程度だったようです
これは自分の美意識にそぐわないもおは容赦なく捨ててきた結果
つまり聴き込んで自分にとっての名盤だけが残されたということでしょう
自分のコレクションは五味氏よりも数の上でははるかに多いですが
聴き込んでこれが自分にとって名盤といえるものの数はとてもとても及びません
五味氏の文章に触れるとこのことが頭に浮かび
もっと真摯に聴かなくちゃいけないとミチョランマの山を見ながら反省するのです
まとまりのない長文、失礼しました(__)
五味康祐の本は何回も読み返しましや。『西方の音』や『天の声』、それに『オーディオ巡礼』など・・・・。今でも、色あせない文章が多いです。『いい音いい音楽』のあとがきの、娘さんの文章はエエですね。感動的です。
そうそう、五味のレコード架蔵数の少なさ、ひげをつけないで大切に扱うことなど、レコードへの愛着について熱く語っているところはエエですね。大好きなところです。
私もパスピエさん同様、未聴の山を築いてしまってアカンなあと思っています。反省です。