クラシック音楽のひとりごと

今まで聴いてきたレコードやCDについて綴っていきます。Doblog休止以来、3年ぶりに更新してみます。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ「春」 パールマン(Vn)・アシュケナージ(Pf)

2006年02月05日 05時15分33秒 | 室内楽曲
立春であります。春であります。
しかし、四国伊予路は厳しい冷え込みでした。全国的に寒かったようです。

松山では椿神社(正式名称は伊予豆比古命神社)で「椿まつり」が行われています。毎年、寒さが一番厳しい頃に開かれる祭りなのですが、大勢の参拝客で賑わいます。
この椿さんが終わると伊予路に春が来るんです。
寒気の中で、しかし陽射しは春の陽光でした。

さあ、春。

そこで、今日、取り出したのは「春」。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調作品24「春」です。

ヴァイオリンはイツァーク・パールマン、ピアノはヴラディーミル・アシュケナージ。
1974年6月、ロンドンでのDECCA録音。まだ若い頃のパールマンとアシュケナージの黄金デュオが奏でる春の旋律に身を浸そうと・・・・(^-^)。

このソナタは、1800年頃の作曲。イ短調のVnソナタ(作品23)とセットでウィーン在住のフライズ・モリツ公爵に献呈たもの。
この時、ベートーヴェンは30歳。
若々しい情熱と希望と勇気とに満ちていた頃の作曲家を象徴するような、彼の作品の中でも、夢見るような美しい旋律が印象的なソナタであり、言わば青春の音楽でもあります。
まさに春にふさわしい名曲。

演奏も、若々しく颯爽としていて気持ちいい。
可愛らしい、優美な旋律が第1楽章から鮮やかに歌われてゆく。

パールマンのヴァイオリンがとにかく美音。流麗で柔らかく、高音部などふるいつきたくなるような魅力に溢れている。そして、弱音での繊細さ。
羽毛で頬を撫でられるような錯覚に陥る。優しくフワッと、気持ちよいことこの上ない。フォルティシモからピアニシモまで、ダイナミックレンジは広いし、しかもどの音も濁らないのだから、凄いテクニックだなぁと思う。
徹底して美しい音色で勝負している感じ。
(まあ、「春」だから、精神性だの神秘性だのはあまり関係ないか?)

アシュケナージのピアノも、パールマンに合わせて優美で繊細。
いつもの、透明なクリスタルガラスのような青白い音色ではなく、頬にうっすらと紅を差したような、やや上気したような音色。薄いピンク色の音。
そして、柔らかく美しい。

ひょっとしたら、録音の加減で、こういう音色になったのかもしれないが、それにしても綺麗なピアノだ。
(ヴァイオリン・ソナタは、クラシック音楽の録音の中で最も難しいジャンルだと、以前レコ芸で読んだことがある。鍵盤楽器と弦楽器、両者ともを美しく録ろうとするのは無理なのだと書いてあった)。

フォルティシモでも威圧感などはなく、しっかりと剛毅な響きをつくりだすところもイイ。

パールマンとアシュケナージ、両者のアンサンブルも見事。緊密と言うより、お互いの気持ちを尊重し合いながら仲良く合わせている感じがする。和気藹々といった雰囲気の演奏。
ベートーヴェンのソナタだから、ヴァイオリンとピアノが対等に拮抗するところもあって良いんじゃないかと思うのだが・・・・・、まあ、せっかくの立春、こういう楽しい演奏もエエなぁと思いつつ楽しみました。

30年以上前の録音なので、現代の室内楽録音に比べると少し古ぼけてきた感は否めませんが、この流麗で美音の洪水、この二人でなくてはなかなかこうはイキマセンな。
名盤だと思います。



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