日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

金正恩、トランプ両氏のチキンレースのとばっちりは習近平氏へ

2017年05月13日 09時11分14秒 | 日々雑感
 北朝鮮は4月29日、北朝鮮のほぼど真ん中、北倉(プクチャン)付近から北東方向に弾道ミサイル1発を発射したとのことだ。このところ、軍事力を背景に圧力を強めるトランプ米大統領に対し、北朝鮮の金正恩最高指導者は弾道ミサイル発射で応じたわけだ。この発射実験は失敗に終わったとのことであるが、国際的な批判を避けるため敢えて途中爆破したとの論調もあり、本当の所は分からない。

 北朝鮮は、核・ミサイル開発に突き進む姿勢を改めて示す一方で、5月13日現在、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射を抑えている。9日の韓国の大統領選挙では北朝鮮に融和姿勢の文在寅(ムンジェイン)氏が勝利し、公約通り金政権に接触してくるのを待ち、そこで打開策を見つけようとする算段で、それまで大人しくしているのかも知れない。

 一方、トランプ氏は米国内の低支持率に焦っているとのことで、何とか実績を上げたいと考えているようだ。このための一つの方策が、オバマ前政権の戦略的忍耐とは決別し、原子力空母を日本海に派遣したり、原子力潜水艦を釜山に入港させたり、大陸間弾道ミサイルを試験発射したりして軍事的に威嚇しているが、金正恩が白旗を揚げる気配は無く、行き詰まり感が出てきた。どうもトランプ戦略は場当たり感が強く、軍事的威嚇も大きな戦略の一環では無さそうである。

 トランプ大統領のもう一つの特徴は方針を容易に変更する事であるそうだ。その場しのぎと理解すれば欠点であるが臨機応変と理解すれば長所である。そこで軍事的な圧力だけでは限界があると判断したのか、中国に圧力をかけることに重点が移されたようである。

 北朝鮮と中国は朝鮮戦争を共に戦い、血の同盟と言われる深い絆がある。中国にとって北朝鮮は資本主義社会との緩衝地帯であり現状維持が最も好ましいようである。北朝鮮にとって中国はその90%を占める貿易の相手国であり、持ちつ持たれつの関係にある。

 これまで、中国が国際世論から北朝鮮への経済的な締め付けを要求されても、余り実行しなかったのはこのような背景があるからだと言われている。しかし、最近北朝鮮は中国の意見も聞かなくなったようだ。親中派で叔父の張成沢氏や兄の金正男氏を殺害したり、核実験等を強行したり、持て余し始めた最中、改めて米国が強硬に締め付けを要求してきた分けだ。中国にとってとんだ災難が降りかかってきた分けだ。

 トランプ氏は、中国が米国の希望に従わない場合、貿易不均衡や為替操作国認定で中国を攻めるつもりのようであり、現時点では習近平氏を褒めちぎって、じっと実行するのを待っている。

 現時点で一番頭を悩ましているのは、習近平主席であろう。トランプ氏の意向に従い北朝鮮を締め付けると、国家が崩壊するかも知れない。かと言って、北朝鮮を放置すれば、トランプ氏の自国への経済的な締め付けが控えている。

 トランプ大統領が北朝鮮の非核化を目的とするのに対し、北朝鮮は核保有国としての国際的認知が目的であるので核実験等は必須であり、簡単には妥協点は見つかりそうにない。北朝鮮の非核化が話し合いで解決出来れば、中国や米国ばかりでなく世界にとって理想的な解決であろう。

 金正恩は、身内の者を殺害までして、現体制を築き上げてきた。核放棄は現体制を否定することであり、即、金王家の破綻への道である。核凍結することが現実的な落としどころかも知れないが、問題先送りでしかない。

 北朝鮮と中国は兄弟のような関係だ。しかし、兄弟の争いとなると骨肉の争いとなり激しさを増す。北朝鮮北部は、中国およびロシアと接する。中国東北地区の吉林省周辺に朝鮮族がおよそ200万人ほど居住していることも問題を複雑化しているようだ。

 また他方、北朝鮮と中国の仲違いに乗じて、ロシアが食指を伸ばしてきたとのことだ。北朝鮮がロシアと新たな定期航路を開設するらしい。かって日本との定期航路に就航していた万景峰号を使い、北朝鮮とロシア間を1か月に6~7往復する予定とのことだ。中国の強い締め付けもロシアが抜け道になるかも知れず、習近平氏は頭を悩ましていることだろう。2017.05.13(犬賀 大好-337)