日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

部族社会に民主主義の普及は果てしない時間を要する

2021年09月08日 09時54分28秒 | 日々雑感
 アフガニスタン駐留米軍は今年8月30日、撤退を完了し、バイデン米大統領は米史上最長の20年に及ぶ戦争の終結を宣言した。2001年のアメリカ同時多発テロ事件を機に開戦したが、撤退完了前にイスラム主義組織タリバンの復権を許し、その上過激派組織イスラム国(IS)系勢力の自爆テロ攻撃も受けるなど、米国にとってほぼ敗戦の幕切れとなった。

 米国はテロ撲滅目的で戦争を始めたが、途中でアフガニスタンに民主主義国家を作ろうと変更したが失敗に終わった。しかし、現在首都カブールでは少数ながら女性による女性解放のデモ行進が行われているとのことで、全くの無駄では無かったようだが、民主主義国家への道のりは果てしなく遠そうだ。

 そもそもアフガニスタンは、国土面積は日本の約1.7倍、人口は約1/4で、人口の約45%がパシュトゥーン人からなる多民族国家である。国民の大多数がイスラム教を信仰しているが、約85%がスンニ派、約14%がシーア派で、互いに仲が良い訳ではなく、また少数ながらシーク教徒、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒も存在するそうで、一つにまとめるのはいかにも大変そうだ。

 現在のアフガニスタンの地域に人類が住み始めたのは、旧石器時代である紀元前10万年頃だそうで、歴史の古さは日本の比ではない。紀元前8000年頃には農業や牧畜がおこなわれ、多くの部族が権力を競って王国を興してきた。19世紀に入ると、部族間の争いに加え、イギリスとロシアによる争奪戦の場と化した。

 タリバンはアラビア語で”学生”を意味する”ターリブ”の複数形だそうで、イスラム神学校で軍事的・神学的な教育を受けた生徒で構成され、1994年に創設された比較的新しい組織とのことだ。理想に燃える生徒が主体であったため、過激なところもあったであろう。タリバンは1994年にアフガン内戦の有力な勢力として台頭し、米国主導のアフガニスタン戦争が始まる前には国の大部分を支配していた。

 アメリカ同時多発テロ事件は、イスラーム過激派アルカイダによって行われたテロ攻撃であるが、タリバンは首謀者のウサマ・ビン・ラディンなどを客人として受け入れていたため、西欧国家からテロ国家とみなされて攻撃を受け、米国の圧倒的軍事力の下タリバン政権はあっけなく崩壊した。

 アフガニスタンでは2001年にタリバン政権が崩壊し、次のカルザイ政権のもとで2004年に新憲法が制定されたが、中央政府よりも各部族の影響力が強く、コーラン等にもとづく規定が残っていており、民主主義はごく一部でしか機能しなかったようだ。

 古くからの部族社会に民主主義が根付かないことは、映画”アラビアのロレンス”で思い起こされる。この映画は実在のイギリス陸軍将校のロレンスの、オスマン帝国からのアラブ独立闘争を描いた歴史映画である。ロレンスはアラビア半島からのトルコ追い出しに成功したが、アラブの部族の因習に打ち勝つことが出来ず、失意の下に国に帰ることになったが、米国兵の多くもアフガニスタンから同様の帰国となったであろう。2021.09.08(犬賀 大好ー744)