安倍総理は2012年12月末に第2次政権を発足させてからの在任期間が、8月23日で2798日となり、安倍総理の大叔父で総理大臣を務めた佐藤栄作元総理の在任期間と並び、歴代最長になった。この日を待っていたかのように、昨日28日、首相辞任の決意表明があった。
佐藤元総理は2798日の在任在任期間中、日韓基本条約批准、非核三原則提唱、沖縄返還をなし遂げ1974年にノーベル平和賞を受賞した。これに比べて、安倍総理の歴史に残りそうな功績は何であろうか。
就任当時、北朝鮮拉致問題の解決、北方4島返還、等華々しく打ち上げ、外交問題は俺に任せろと意気軒高であったが、一向に進展を見ないどころか北方4島では逆に後退してしまった。
安倍首相が個人的に親しいと自慢するトランプ大統領も金正恩委員長との直接会談でも拉致問題を取り上げたようであるが、何も進展は無かった。ロシアとの領土問題では2島返還と譲歩したにもかかわらずロシア国内では、7月4日発効のロシア改正憲法に領土割譲禁止の条項が盛り込まれ、返還は一層遠のいてしまった。
国内問題では、安倍首相は事ある毎に、「美しい国、日本を取り戻す」「戦後レジームからの脱却」「女性活躍社会」「岩盤規制にドリル」「一億総活躍社会」等、多彩で威勢の良いキャッチフレーズを連発したが、発信明瞭、結果うやむやの感である。
特にデフレ脱却を目的に物価上昇率2%を目指しアベノミクス、異次元金融緩和を断行した。当初、インフレが心配されたが、それどころか目標の物価上昇率も達成できていない。高齢者にとって、結果オーライであるが、国の借金は1100兆円を越え、市中に出回った金は株価の高止まりを支えている。GDPがコロナウイルス騒動のお蔭で異常な低落となっているが、株価だけは下がらないとはまさに異常状態だ。
また、アベノミクスのお陰で雇用が増大したとの評価もある。確かにコロナ騒動以前有効求人倍率が異常と言えるほど高かった。安倍首相も有効求人倍率の高いことを自慢してきたが、実体は非正規労働者の増加であった。総務省の労働力調査によれば、2013年から2018年までの6年間で雇用は380万人増加したが、この内55%は非正規職員だったそうだ。技術立国の名前が残るのは自動車産業位で、情報技術では世界にすっかり遅れてしまい、今や中国にも後塵を拝している。
長期政権が保たれた原因に関しては色々な評価がある。私には、高級官僚の人事権の把握と民主党政権のていたらくが2大原因と思われる。
内閣府の人事局による高級官僚の人事権把握は、政治家の無理難題を官僚に押し付けるとともに官僚の忖度を促し、政権への媚び諂いは森友・加計学園問題を引き起こしたが、政権はビクともしていない。
世論調査で安倍政権を支持する理由として、他に代わるものが無いとの理由が第1位を占めていた。野党時代に主張していたことが民主党政権の実現でことごとく裏目に出た。例えば、事業仕分けにより無駄を無くすことにより、財源の捻出はいくらでも出来るとの主張があったが、華々しい事業仕分けの結果は無残なものとなった。また、東日本大地震に続く、東電福島第1原発事故があり、安倍首相に、悪夢の政権との口実を与えてしまった。
立憲民主党を含む野党は未だにこの後遺症から抜け出せずに低迷しており、安倍首相にとっては幸運であった。2020.08.29(犬賀 大好ー630)