地球温暖化の影響であろうか、今年の日本の冬は異常に暖かい。高齢者にとってありがたいが、雪が少なかったり、氷が張らない等、寒さを売りにする観光事業に大きな痛手となっているようだ。
この暖冬は地球温暖化の影響か、あるいは最近頻発する異常気象の一つかよく分からない。前者であれば毎年の現象となりそれに合わせて生活様式を変えれば対処出来そうであるが、後者となると突発現象であるため対処が難しい。
地球温暖化は統計上紛れもない事実であるが、最近の異常気象が地球温暖化の原因かとなると断定できないようだ。気象庁のホームページには、異常気象の多くの場合、上空の偏西風が通常と異なる位置を流れる状態が続いたことや、熱帯地域の対流活動の影響が遠い場所に伝わったことなど、地球の大気と海洋の自律的な変動による自然のゆらぎが主原因であると記されている。
このような自然のゆらぎは元々自然界にあり、このゆらぎの幅が地球温暖化の影響で大きくなっていると言えれば、ストーリーとして分かり易いが、断定できないと歯切れが悪い。
さて”ゆらぎ”とは、大なり小なり自然界にあまねく見られる現象で、一般的に知られるゆらぎは”1/fゆらぎ”であり、人間にとってそれが心地よく感じられる事象であるとのことだ。例えば海岸に打ち寄せる波の音は規則正しく一定のリズムを刻んでいるようだが、そのリズムは微妙に変動しておりこの変動が人間にとって心地よさを感ずる原因だそうで”1/fゆらぎ”と称せられる。
このゆらぎ現象は自然界のあらゆるところに存在し人の心を癒すが、異常気象の原因となるゆらぎは人間に脅威を与え、到底同じ現象とは思えない。
オーストラリアの火事は、日本国土の半分にも匹敵する面積を焼失させたとの報道がある。これほどまでに拡大した直接の原因は異常高温と異常乾燥だそうだが、この異常気象の遠因はインド洋のダイポールモード現象と呼ばれる海面水温の偏在であると解説される。
日本の異常気象もしばしばエルニーニョやラニーニャと呼ばれる海面温度の偏在で説明されるが、このような海面温度の偏在の原因が自然界のゆらぎとなるのであろう。
振動の一種に自励振動と称する振動がある。例えばブレーキの軋み音の発生であるが、速度や摩擦力等いくつかの要因が重なって発生する。気候を支配する要因は、温度、湿度、風、気圧等、更には地球の動きまである。これらの要因がゆらぎにどのように影響するか、解明には相当時間がかかりそうである。
さて、地球の近年の気温は、大気中の温室効果ガス濃度が増加し続けているにもかかわらず、2000年頃からは明瞭な上昇傾向が見られないのだそうだ。地球温暖化がこのところ足踏みをしておりこのまま続けば一安心ではあるが、これもゆらぎが関係しているようで油断できない。
この原因は、太平洋の表層が冷たく、西側の太平洋内部に暖かい海水が閉じ込められる状態にあることで、地球表面の平均気温が上がっていないように見えるだけなのだそうだす。このような自然のゆらぎは十年から数十年程度の間隔でゆれ動くので、地球温暖化はいずれ元のスピードに戻るだろうと恐ろしいことを予言している。2020.02.05(犬賀 大好-572)