最近の文在寅韓国大統領は眠れぬ日々を送っているだろう。今年4月の国内総選挙、2022年春の大統領選挙を控え、国内外共に八方塞がりであるからだ。
文大統領の司法改革は長年の夢だったとのことであるが、側近だった曺国(チョ・グク)前法相の辞任で頓挫したままだ。韓国のソウル中央地検は、昨年末チョ氏を娘の不正入学疑惑などに絡み、虚偽公文書作成や収賄などの罪で取り調べているそうだ。大統領の長年の信頼できる親友からも足を引っ張られるとは情けない話だ。
しかし、これは大統領にとって些細な問題であり、国内外の問題を見ると解決は並大抵ではない。
今年も薄氷の上を歩く状況のようだ。経済成長率は2018年(2.7%)と昨年(2.0%)に続いて今年も2%台にとどまると予想される。3年連続の2%台成長は朝鮮戦争後初めてで、経済の屋台骨である半導体の市況悪化で輸出や設備投資が冷え込んでいるからだそうだ。
韓国貿易額が減少しているのは、日韓の相互不信の影響があるかも知れないが、それよりも米中貿易戦争がらみで対中や対米の貿易額の減少が大きいと思われる。またここに来て新型コロナウイルス騒ぎで追い打ちをかけられている。踏んだり蹴ったりの有様だ。
文大統領は、今年の新年の辞で開城工業団地及び金剛山観光の再開を含む様々な南北の協力を提案した。韓国政府は朝鮮半島の問題に関連して、”米朝関係は前輪、南北関係は後輪”と称し、相互の依存的関係を重視しており、これも南北融和の一提案である。
この提案は北朝鮮にとっても渡りに船の筈であるが、北朝鮮は文大統領の提案を無視しただけでなく、韓国政府を対話の相手としないとまで明らかにした。北朝鮮と韓国は同一民族で仲良くすることはにお互いに多大なメリットがあると思われ、北朝鮮のこの態度の意外さに驚かされる。文大統領の個人的な思いは友好であろうが、韓国の北朝鮮対策はすべからく米国の認可を要し、文大統領の一存では何も出来ないと金委員長は分かっているのだ。
一方肝心の米国のトランプ政権からは今年以降の米軍の韓国駐留経費を前年度の5倍以上と増額を要求されており、怒りを何処にぶつけてよいやらストレスは貯まるばかりであろう。
韓国の文大統領はやはり新年の演説で、日本は最も近い隣国で、未来志向に進化させていく、と日韓関係の改善に意欲を示した。また、同時に日本の輸出管理を巡る措置の撤回を改めて求めたが、新たな提案は無く、改善に対する強い意欲が感じられず、日韓和解が進む気配は無いようだ。この煮え切らない姿勢も国内支持層に対する配慮からであろう。
日韓和解が進むとすれば、韓国国会の文喜相国会議長の動きに期待がかかる。議長は日韓関係の懸案となっている元徴用工問題解決のため、慰謝料の支給対象を拡大する新たな法案を作成し、昨年12月13人の国会議員とともに提案した。
しかし、その後法案が成立したとの報道も無く、どのようになっているのか不明である。恐らく賛否両論入り乱れ、文大統領の姿勢もはっきり示されていないのであろう。
文大統領は色々な難問を抱え眠れぬ日々を送っているものと思うが、テレビで拝見する限りにおいては以前とさほど顔色は変わらない。他人、しかもよその国の人が考えるほど深刻な問題では無いのかも知れない。2020.02.15(犬賀 大好-574)