日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

エネルギー基本計画における原発の位置付け

2019年03月30日 14時02分07秒 | 日々雑感
 現在のエネルギー基本計画は昨年7月3日に閣議決定された。その時の計画では、常に踏まえるべき点として、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むこと、を原点として検討を進め、2030年、2050年に向けた方針を示すとの位置づけであった。

 福島第1原発事故の後始末には40年かかる当初の計画であるため、ほぼ30年先の2050年に向けた計画の中では避けて通れない課題の筈だ。しかしこの事故の反省と教訓を肝に銘ずると言いながら、廃炉に伴う諸問題に対し何ら方針を示していない。

 通常原発の運転期間は原則40年であり、1970年代に作られた初期の原発は寿命を次々迎える。廃炉には放射性廃棄物が付き物であるが、この最終処分地については、相変わらず忘れた振りを続けている。

 国はエネルギー政策の基本として、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)、安全性(Safety)を3E+Sの原則と決めておるが、安全性はこれから作るエネルギー源に向けた話であり負の遺産に対する安全性は無視されている。

 さて2030年のエネルギーミックスについては、再生可能エネルギーの最大限の導入、原発依存度の可能な限りの低減といったこれまでの基本的な方針を堅持しつつ、エネルギー源ごとの施策等の深掘り・対応強化により、その確実な実現を目指すとしており、原発を特に重視するとは言っていない。これは世論を意識して意識的に避けていたと思われる。

 しかし、最近この基本方針を無視するような動きがあった。すなわち、経済産業省が原発で発電する電力会社に対する補助制度の創設を検討していることが分かったのである。これまで原発は他の発電に比べ安価であると言われてきたが、この根拠が原発事故で無くなってしまったため、温室効果ガス対策が全面に出たきた。

 この補助制度は、原発からの電気を買う電力小売事業者に費用を負担させる仕組みを想定しており、実現すれば消費者や企業が払う電気料金に原発を支える費用が上乗せされることになるそうで、2020年度末までに創設をめざすそうだ。

 原発の依存度を出来るだけ下げるとの掛け声とは裏腹に、原発を維持する為に消費者にも負担をさせようとする魂胆である。原発は他の電源に比べ安価であるとの特徴は原発事故のお蔭で無くなり、温室効果ガスを排出しない電源との特徴だけになったが、原発事故の後遺症は今後何万年と続く。

 2050年という長期展望については、技術革新等の可能性と不確実性、情勢変化の不透明性が伴い、蓋然性をもった予測が困難であるため、常に最新の情報に基づき重点を決めていく複線的なシナリオによるアプローチとすることが適当である、としている。

 非常に漠然とした展望であり、多くの人の意見の無難な所を並べただけとの感であり、将来に向けた主張が無い。今後もその場その場で、近視眼的発想により物事を決めていくことになるだろう。

 さて先日福島第1原発事故の対応費用が総額81兆~35兆円になるとの試算を民間シンクタンク「日本経済研究センター」がまとめた。試算を示したリポートはこの費用の増加を踏まえ、「中長期のエネルギー計画の中で原発の存否について早急に議論、対応を決めるときではないか」と指摘しているが。2019.03.30(犬賀 大好-533)