日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

北朝鮮の金正恩委員長の次の一手は何か

2019年03月09日 09時00分06秒 | 日々雑感
 先日、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長の米朝首脳会談が行われたが、会談は物別れに終わった。金委員長は会談直前まで会談の成功を信じていたようだ。つまりトランプ大統領が内政で成果を上げられないため外交で成果を上げようと焦っていると確信を持っていたようであるからだ。

 会談決裂の理由は、北朝鮮と米国の言い分が異なるが、北朝鮮は寧辺の核施設を廃棄する代わりに経済制裁の全面解除を要求したとの米国の言い分である。寧辺の核施設は大規模であるが、核施設は寧辺以外にも存在することは米国の調査結果からも広く知られており、当然北朝鮮側も承知していた筈である。しかし、大統領の焦りが非常に大きいと信じて寧辺の破棄で十分と判断したのであろう。

 一方、会談とほぼ同時刻に米国議会でコーエン前顧問弁護士の公聴会が開かれており、そこでの大統領の不正が多々暴露され、失地回復のためには安易な妥協は逆効果と判断したようだ。この判断が、金委員長の期待を裏切ることに繋がったのであろう。

 金委員長は、米朝会談に出かける際には、連日その動静を国内テレビで放映し、会談成功に自信満々だったようであるが、あっさり裏切られた。この会談と公聴会が同時期に開催されたのは、偶然の一致であろうか、誰かが仕組んだとすればその読みに感服する他ない。

 金委員長は絶対的な独裁者であり、この程度の失敗に批判は出ないだろうと思うが、そうでもないようだ。ネットには、仮に金正恩委員長が完全核廃棄を進めようとしても、その周辺には必ず抵抗する勢力が存在するらしい。

 金正恩委員長は、「自分だけだったら米国と直ぐに妥結できるかもしれない。しかし、自分の下で政権を支える人が、軍部や政府に200人くらいいる。彼らの意見を無視して、核兵器を廃棄して交渉を妥結させるのはなかなか難しい」と語ったと言う情報もあるくらいだ。

 これまで多大な資金と人材を投入して、核兵器やミサイルを開発してきたことを考えると、いくら独裁者と言え、方向転換はかなり困難であろうことは、容易に推測できる。

 更に、北朝鮮という国を維持するためには軍事力が必要だが、軍事力を維持するためには膨大なマンパワーが必要となる。その点核兵器の保有は安価で絶大な威力となるため、破棄は簡単ではない事情もある。

 しかし、昨年の北朝鮮の経済は、一段と深刻な状況に陥っているようだ。米国が主導する経済政策は、中国やロシア側ではかなり緩んでいるようだが、全体からすれば僅かで、最近北朝鮮を訪問した在日朝鮮人は、「北朝鮮はいま第2の苦難の行軍」に入ったと異口同音に語っているそうだ。

 昨年の日本の夏は猛暑であった。猛暑は日本のみならず北朝鮮でも一部地域では気温が40度を超すなど記録的猛暑が続き、コメやトウモロコシといった農作物に大きな被害が出たようだ。国連食糧農業機関(FAO)も、ほとんどの北朝鮮の家庭が食糧不足に陥っていると診断している。

 金正恩委員長の当面の目標は核を保有したままででの経済制裁の解除である。北朝鮮には地下資源が豊富との話だ。経済制裁が解除されれば、この地下資源の輸出で食料はいくらでも買える。

 当分、経済制裁の解除は望めなくなった。トランプ大統領は例年行われる大規模な米韓軍事演習の中止を決めた。それに応えて北朝鮮はミサイルや核爆弾の実験が出来なくなった。最近東倉里のミサイル発射場の整備を始めたとの情報もあるが、それより残された有力な手はサイバー攻撃だ。何しろ兵器の開発や製造より元手がいらない。2019.03.09(犬賀 大好-527)