日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日銀の政策続行を想う

2016年03月23日 09時47分07秒 | 日々雑感
 3月15日、日銀は金融政策決定会合で金融緩和およびマイナス金利政策の維持を発表した。一時期2万円を超えていた株価も1.7万円台となり、折角の円安効果が薄れてきたためか、経済界は一層の金融緩和を期待する。日銀は、これまでの政策を続行すると言わざるを得ないのであろう。更なる拡大は将来の負担を大きくするばかりだし、縮小は景気減速に直結するであろう。行くも帰るも、地獄が待ち受ける。

 日銀が今年1月29日に公表した1月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、消費者物価の前年比が、「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、2017 年度前半頃になると、またまた先送りした。原油価格の低迷が長引くとの理由からだ。

 金融緩和というのは、日本銀行が現金を発行して世の中のお金の量を増やすことである。黒田日銀総裁の異次元緩和は市中の国債を買い取って、現金を市中に増やし、企業の景気を良くすることを目的とした。企業の景気が良くなれば、従業員の給料が上がり、消費が拡大し、また企業が儲かるとの好循環を期待させるものであった。しかし、成長戦略は観光事業以外は軌道に乗らず、市場に溢れるお金も新規事業等の投資に回っていないようだ。

 また、世の中のお金の総量が増えること自体がインフレムードとなり、消費者物価の上昇2%達成は容易に達成される筈であった。経済は”気”からを期待したが、少子高齢化社会を迎え、将来への不安の方が大きく、人々は踊らなかった。

 ただ、お金の価値を下げた為円安となり、自動車産業等の輸出企業は大儲けし、最高益を更新し、従業員の給料はそれなりに上がったようである。輸出企業は利益を上げたが、輸入産業は逆である。円安で輸入品は値上がりした。輸入企業はそのまま自社で損を被る筈は無く、大手の食品メーカーは昨年9月から冷凍食品やワイン、ジャム、ハムなどを値上げした。この春にも値上げは各種あるようである。食料自給率30%程度の日本にとって原材料の値上げの影響は大きい。

 異次元金融緩和は、成長戦略の点では上手くいかなくても、円安効果で消費者物価を上昇させる筈であった。しかし、黒田総裁にとって石油価格の下落との予想外の出来事が発生した。石油価格の低迷はガソリン価格の他石油製品の低下となり、物価上昇を妨げる結果となった。現在消費者物価上昇率は0%に近く、またエネルギー価格の寄与度は、-1%強位と言われているので、石油安の出来事が無くても、大雑把には、1%程度の消費者物価指数の上昇であろうか。

 大目に見ても、これでは異次元金融緩和は失敗であったと言わざるを得ないだろう。しかし、少なくとも円安には大いに効果があり、輸出産業は大儲けし、黒田様様であろう。しかし、賃金上昇は輸出産業をはじめとする大企業限定であり、中小企業まで広がっていないようだ。

 物価上昇が賃金上昇となり景気好循環を目指していたが、実質賃金は下がっているとの話だ。厚労省が2月8日に発表した「毎月勤労統計調査」によると、2015年の働く人1人当たりの実質賃金は、前年比で0.9%減。4年連続でマイナスとなった。

 また、先の展望リポートでは、消費者物価上昇2%達成後は、平均的にみて、2%程度で推移する と見込まれると述べているが、果たしてその通りになるであろうか。日銀の言うことは大分信頼性が落ちてきた。黒田日銀総裁は、いつも能天気に、ニコニコと記者会見するが、内心はドキドキであろう。本心を顔に出してしまえば、景気は”気”からである。アベノミクスは一気に破たんするに違いない。
2016.03.23(犬賀 大好-218)