日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

学歴社会と学習塾の役目

2016年03月16日 08時40分36秒 | 日々雑感
 今は3月中旬、来年の受験のため、今日も塾のチラシが新聞に入っていた。相変わらず、いや益々塾は繁盛しているようだ。

 さて、グーグル社は世界トップの IT 企業であるが、人材採用では学歴・成績を考慮せず、年齢や人種にもとらわれず本当に優秀な人材を採用するとのことである。日本の企業もグローバル化に対応して、世界で活躍できる人材を採用したいのは当然であろう。そこで、日本企業は公式的にはどの有名企業も学歴を問わないとしているが、新卒採用の場合、学歴フィルターなるものが厳然と働いているようである。これは、出身大学により試験前に篩い分ける仕組みとのことである。

 学歴フィルターなるものが大手を振っている理由として、他に有効な判断基準が無い、があるようである。新卒者の場合即戦力ではなく、入社後教育により育てる風潮が今なお強く、出身大学を基準に選択するのが無難であるからだ。将来活躍できる人材を前もって試験等により見分けることは困難であり、特に学歴偏重主義の下で育ってきた人間には一層難しいと思われる。

 従って、若者にとって、一流企業に就職する為には有名大学に入学することが人生にとって最重要事項となる。一流企業と言えども他社に吸収されたり、終身雇用だからと言って安穏として居られない世の中ではあるが、まだまだこの風潮は強い。そこで有名大学に入るために塾に入り、合格のためのテクニックを身に付けるのが一般的である。

 少子時代を向かえ、入学希望者全員が大学に入れるような時代となったが、学歴フィルターでふるい落とされないためには、どこの大学でもよいと言う訳には行かない。そこに塾の存在意義がある。現在、入学試験は記憶力と早さが決め手であるため、その為のテクニックを教え込んでいる。変革の時代を向かえ文科省も思考力・判断力・表現力を中心に問う入試方法に変えようとしているが、塾の役目は生徒を大学に入学させることであり、入試がどのように変革されようが、塾は素早く対応するに違いない。どの塾も、少子化時代を迎え個別指導方針に重きを置くように、時代の要求に素早く対応するのが、一民間企業である塾の経営方針である。

 塾では効率的に点数を上げることに的が絞られる。歴史を学ぶ目的は、なぜその時にそのような出来事があり、後の世にどのような影響を与えたかを知り、現在に生かすことである。しかしそんなことは二の次であり、事件の名前と起きた年代を覚えた方が点を取りやすい。しかも、沢山の事件を語呂合わせで覚えることが効率的である。鎌倉幕府の成立した年、1192年を”いい国作ろう鎌倉幕府”は有名である。そこでは理屈抜きにつめこみ教育が徹底される訳だ。

 ある決まった条件下では効率化は非常に有効であるが、条件が変わるともろくも崩れる。塾の功罪は後で顕著に現れる。学生から企業に就職したが、自分を取り巻く社会環境に馴染めず、会社のお荷物となっている東大卒の話はよく耳にする。社会は記憶力だけでは動かないのだ。

 今後、記憶力から思考力・判断力・表現力が必要になると言う。今では悪評高い”ゆとり教育”は、この意味では非常に適切な教育法となる筈であった。ゆとり教育はつめこみ教育の反省からであった。しかし、時代が早過ぎたのか、具体的な指導法が分からないまま、単に先生のゆとりの時間で終わってしまったのは残念であった。

 公立の中学、高校は、体育や音楽の授業もあり、総合的な人間形成が目的である。塾の目的は受験戦争に勝つことである。そこではつめこみ教育の欠点など考える必要がない。両者の目的は一致することは無いだろう。従って学歴社会が続く限り、塾の役目は終わらないであろう。
2016.03.16(犬賀 大好-216)