
去年のこと、ビショップ博物館で見た毒の神の像について、いろいろ書いたことがありました(こちらです)。
その中で、毒の神については以下のようなことを書いています。
「中でも恐れられていたのが、カライパホアという毒の神。遠い昔、同じ名の木に毒の神のスピリットがのり移ったとか。その結果、その木は、木の上を飛ぶ鳥は死に、枝の落ちた泉の水を飲んだ人々は死ぬというほどの、強力な毒のパワーを持つ木になったという伝説があります」
…ほかにもハワイ神話には、木にまつわる不思議な話がたくさんありますよね。たとえば、木を切ろうと試みた男たちが次々死んだ話とか(ワケアとパパという神々がパンノキに入り込み、土地の酋長がその木を切らせようとしたのですが、切ろうとした男たちが死んでしまったのですね)。
上記のような話の数々、まさに神話的な話だ~と思っていたのですが、先週、仕事で木材屋さんを訪問する機会がありまして。いろいろお話を聞くうち、「毒のパワーを持つ木」「木を切った男が死ぬ」というのは、もしかして実話を元に作られた話なのかも? と思うようになりました。
(それはパンノキではないのですが)木材屋さんによれば、木の中には強い毒性を持つものが実際あるそうです。たとえばシルキーオークとか…。シルキーオークは、切るにも加工するにも気をつけないといけないよう。
またリリウオカラニ女王の愛したクラウンフラワーの樹液にも、強い毒があるそう。クラウンフラワーに群がる蝶、モナークバタフライも、結果として強い毒を持っているのですって。
さらに木の種類に限らず、木についているカビや菌がアレルギーを誘発することもあるそうです。そういった木を切るうち、「場合によっては喉が詰まったりして、病院に担ぎ込まれることもあるだろうね」と、木材屋さん。木の粉が粉塵のように舞ったり、樹液が飛んだりすることはいくらでもあるでしょうからね。
もちろん大昔のハワイでは救急車も呼べなければ、エピペンを打って危機一髪、アレルギー症状を中和する、なんてこともできなかったわけで。そのまま喉を押さえて死んでしまうことも、あったかもしれませんよね。そんなことから、毒の神の神話や、木を切って死ぬ…のようなシーンが生まれたのかもしれません。
…今までファンタジーだと思っていた聞いていた神話も、そんな木材屋さんのディープな話を聞くことで、とたんに現実味を浴びて迫ってきた気がしています。
このように、ハワイで暮らすうち、歴史だけではなく神話についてもハッとする気づきの瞬間がたびたびあり…。それこそが、私が神話をこよなく愛する理由の根底にあるのかもしれません。神話ってエキサイティング!
本もいいけれど、実地の勉強も大切だな~と感じた、木材屋さんでの一件でした。