一日が終わりに近づく、
薄暮と呼ぶ“たそがれ”時が好きで、
隔てる物のない空を見に
その時間を選んで海に出ることがあります。
焦がす様に海の向うに沈んだ後しばらく、
なごり惜しむように空や雲に映る残照。
夜明けと日暮れ
それぞれに薄明はありますが、
その呼び名に
『市民薄明』『航海薄明』『天文薄明』とあり、
日の出前や日没後と夜の闇のあいだを移り行く
明るさを指すのだそうです。
中間の“航海薄明”とは、
地平線や水平線が識別でき
1等星2等星を空に見る明るさ。
とかく海において
レース以外は大雑把な時の観念
ましてや気晴らし操作の漂流艇
人為の及ばぬ太陽を、
待つ身は長く“待たぬ月日はたち易い”といい
時間通りに下ろされる銀行のシャッターの如き宵闇に
うろたえ焦りながら目を凝らし、
ゆく宛てを探します。
その不安や苛立ちは、
乗り遅れたバスや行き損ねた好地を追うに似て
さながら明日への準備を促すように
我が身を振り替えさせ
判断力と、強い決意を高めるかとも思えるのです。(R)