ジャン=フランソワ・ミレーの
『落穂ひろい』の絵はあまりにも有名ですが
麦穂を拾う農民の、
その心情を図ることはなかったと思います。
ましてやミレーがその“風景”のなにに感じ入ったかなど
知る由も無かったに違いありません。
5月の田植えから丸4ヶ月を経て育った
もち米の稲を鎌で先週刈り取り
竹竿で作った稲架けに干しておいた稲わらから籾をとる
通称“いねこき”といわれる脱穀の作業がありました。
いまどきは刈入時にコンバインなどで
稲刈り脱穀等一連の作業を機械化
農家の負担を軽減するところが多いのだそうです。
あえてこだわった“古式ゆかしき”手刈り、ハザカケ
脱穀の締めくくりが『落穂ひろい』。
八十八の手間隙かけた大事なお米、
一粒といえどもおろそかにできません。
工程の途中で落ちた、
いわゆる取りこぼしの稲穂を
『もったいない』と単純な気持ちで拾い集めた茎穂は結構な量。
ひと歩きだけで黄金の実は、
およそどんぶり一杯分になったでしょうか。
役目を終えた田んぼには株元の根っこだけが残り
秋日に照らされて乾いた土には深いヒビ割れが入っていました。
はちきれんばかりに詰められた
籾袋の山を見て思わず田んぼに一礼。
たぶんここには、
絵画のような貧農の“落穂ひろい”の人ではなく
鳩やカラスがおとなうと思います。(R)