で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2175回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ドリーム・ホース』
競走馬を家の庭で、初老の夫婦が育てようとするドラマ。
2015年に世界的に話題を集めたドキュメンタリー映画にもなった奇跡の実話を映画化。
主演は、『リトル・ミス・サンシャイン』、『ヘレディタリー/継承』のトニ・コレット。
共演は、ダミアン・ルイス、オーウェン・ティール。
監督は、TVを中心に活躍するウェールズ出身のユーロス・リン。
物語。
2010年代、英国ウェールズ地方の小さな谷あいの村。
中年も終わりが近い女性ジャンは、夫ブライアンと夫婦で繰り返しの毎日を暮らしている。
娘たちも都会に出て、犬や鳩との動物競技を引退して、仕事と親の介護の単調で満たされない日々。
ある日、彼女はパブで、組合馬主経験のあるハワードの競馬での武勇伝を聞き、競走馬に興味を持ち、調べ始める。
ついに、夫を説得し、老後の貯金をはたき、牝馬を購入。
そう広くもない庭で、引退した牝馬を夫婦で育て始める。
種付けをさせて、生まれた仔馬を競走馬に育てるのだ。
脚本は、ニール・マッケイ。
出演。
トニ・コレット (ジャン/ジャニーン・ヴォークス)
オーウェン・ティール (ブライアン・ヴォークス/デイジー)
ダミアン・ルイス (ハワード・デイヴィス/会計士)
ニコラス・ファレル (フィリップ・ホブス/調教師)
カール・ジョンソン (カービー)
ステファン・ロードリ (ガーウィン)
ダレン・エヴァンス (グース)
シアン・フィリップス (マウレーン)
アンソニー・オドネル (マルドウィン)
リンダ・バロン (エルジー/母)
アラン・デビット (バート/父)
ジョアンナ・ペイジ (ハワードの娘)
ピーター・デイヴィソン (エイヴァリー卿)
スタッフ。
製作:キャサリン・バトラー、トレイシー・オリオアダン
製作総指揮:ダニエル・バトセク、オリー・マッデン、スー・ブルース=スミス、ピーター・タッチ、スティーヴン・デイリー、ポーリン・バート、ピアース・ヴェラコット、ジョエリー・フェザー
撮影:エリック・アレクサンダー・ウィルソン
プロダクションデザイン:ダニエル・テイラー
衣装デザイン:シャーン・ジェンキンズ
編集:ジェイミー・ピアソン
音楽:ベンジャミン・ウッドゲイツ
『ドリーム・ホース』を鑑賞。
10年代英国ウェールズ、初老の夫婦が競走馬を育てようとするドラマ。
2015年に話題を集めたドキュメンタリー映画にもなった実話を映画化。
実話ならではの順調すぎる展開でさくさくと、ちょっとした躓きが笑いと日々のストレスの積み重ね。
順調すぎる展開で、その裏にあるものを描き出そうとする作意が明確にある。
それを主人公すべてのドラマに入れていく。ああ、人生にはこういうものが必要なのだな。
トニ・コレットの渋面から歓喜の多層の心を表情と仕草で見せることで人間の深みを見せる。それをさらにわかりやすく、にじませるダミアン・ルイスの普遍性に、オーウェン・ティールの重み。群像の描き方がよい。
監督は、ウェールズ出身のユーロス・リン。彼女は、この出来過ぎた奇跡を、応援と張り合いという視点で見せた。本田宗一郎の言葉を思い出した。「何かを深く信じれば、誰でも自分の中に大きな力を見つけだし 自分を乗り越えることができる」
音楽の細かな仕掛け、冒頭から丁寧に楽器まで選んで、物語を運び、気分や誇りや生活を飾っていく。
撮影の抑制。
騎手や調教シーン、子供たちをほとんど出さないのが取捨選択の上手さ。だって、仔馬が子になるので、そこと重ねているので、自立した子はもう親なのです。
つまり、「応援する」って、特に何かできるわけでもない。でも、応援があると動ける。それが馬にどう伝わるかは分からないけど、彼の周囲には影響するから、馬にも届いていく。心は見えない何かで届いていく。ミントキャンディーの香りのように。
勝利で生まれたものだけど、勝利がない時がこの映画のポイント。
こういうささやかな人の心の有り様をテーマにするって難しいよね。
なにより、生きる張りについて、推しがある人には響くよ、これは。
夢は自分を応援する気持ちの声作。
おまけ。
原題は、『DREAM HORSE』。
『夢の馬』。
2020年の作品。
製作国:イギリス
上映時間:114分
映倫:G
配給:ショウゲート