菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

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映画1000本父vs事件1000件警察署長。 『共謀家族』

2021年08月08日 00時00分12秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1915回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『共謀家族』

 

 

 

映画1000本の知識を持つ父が、家族を守るため、事件1000件の知識を持つ警察署長と相手に完全犯罪に挑むサスペンス。

 

出演は、『ドラゴン・ブレイド』のシャオ・ヤン、『チィファの手紙』のタン・ジュオ、『ラストエンペラー』のジョアン・チェン。

 

監督は、本作が長編デビューとなるサム・クァー。

 

 

物語。

幼少時に中国からタイに移住したが孤児となったリー・ウェイジエは、現在はインターネット回線会社社長。妻や高校生の長女と幼い次女と幸せに暮らしている。
最近、長女ピンピンの様子がおかしいことに気を病む。
彼女には、誰にも言えない秘密があった。
その秘密からピンピンはある犯罪に手を染めることに、
映画マニアであるリーは、娘を家族を守るため、それまで見てきた映画のトリックを応用して完全犯罪に取り組む。

オリジナル脚本:ジュアスー・ジョセフ
リメイク版の脚色:Upendra Sidhaye 

脚本(脚色):ヤン・ウェイウェイ、ジャイ・ペイ

 

 

出演。

シャオ・ヤン (リー・ウェイジエ(李維傑))
タン・ジュオ (妻アユー(阿玉))
シュー・ウェンシャン (ピンピン(平平))
ツァオ・シィラン (アンアン(安安))

ジョアン・チェン (ラーウェン警察局長)
ツィアニャン・ビアン (スーチャット)
フィリップ・クン (デゥポン議員)
ミン・シュアイシー  (ソンクン)

チョン・プイ (食堂の主人ソン)



スタッフ。

製作:マー・シュエ リン・チャオヤン
製作総指揮:チェン・スーチェン

撮影:ジャン・イン
美術:ジャオ・シュエハオ
衣装:リー・ミャオ
編集:タン・ホンギア

 

 

『共謀家族』を鑑賞。
現代タイ、映画1000本の知識持つ父が家族のため、事件1000件の知識持つ警察署長相手に完全犯罪に挑むサスペンス。
高評価のインド映画を中国でリメイク。きっちりと中華味のメロウなエンターテインメントにしたてた。
プロローグとエピローグで挟んだ四部構成に、映画研究がきっちり効いている。映画ファン以外も脚本の妙味に唸る。映画ファンなら自分だったら、どの映画の知識でどうする?と楽しみが尽きない。
キャストもキャラを作りこんできて外しません。シャオ・ヤン普通のお父さんなのもいい。ジョアン・チェンの母の甘さと怖さ。
なんといっても、出てくる映画のセンスがちょうど抜群。メジャーマイナー、欧米アジア、古典定番若手と全作に頷くレベル。
実は、中華映画らしく、言葉の使い方やキャスティングは結構いい加減だけど。
最後が気になるはずなので、オープニングシークエンスをきっちり覚えておくと吉。ここにも西洋映画のテクニックがきっちり。もう一度、冒頭を見たくなるぜ。
演出はまだ硬いが、シナリオの面白さに沿っているので、十分。
ただ、ミステリーとしては新味もあるけど、ベタでわかりやすいです。見巧者は裏を読みましょう。
おお、どうなるのよ、とお話の面白さにわくわくする鐘作。

 

 

 

 

おまけ。

原題は、『誤殺』。
『間違いの殺人』。

英語題は、『SHEEP WITHOUT A SHEPHERD』。
『羊飼いなしの羊の群れ』、『指導者のいない烏合の衆』。

 

2019年の作品。

 


製作国:中国
上映時間:112分
映倫:G

 


配給:インターフィルム=アーク・フィルムズ  

 

 

マラヤーラム語で制作されたインド映画『Drishyam』(2013)をヒンディー語でリメイクした『ビジョン』(2015)(原題同じ『Drishyam』)を、中国映画としてリメイク。

オリジナル版の監督・脚本のジュアスー・ジョセフによる『Drishyam 2』 (2021)がある。

 

 

 

 

 

ネタバレ。

映画好きの父親の映画選球眼の良さは、この手の映画では最高レベル。
『ショーシャンクの空に』論から始まって、『情婦』、『セブン』、『偽らざる者』に、家族と映画館で見ているのは『バッドジーニアス』だもの、全部外れなしの逸品揃い。
それと、なんといっても、『悪魔は誰だ』だ。
『悪魔を見た』と間違えている感想を見たが、韓国映画の秀作『悪魔は誰だ』よ。そりゃ、『悪魔を見た』にあやかった邦題だけど。

アメリカ映画はザ・定番ではあるけど。

タイは、アジアでも有数の映画大国で、アメリカ映画のロケ地として、よく使われている。
タイアクションは、アクション映画の一ジャンルとなっているし、独自のエンターテインメントは世界基準で、日本メジャーでは太刀打ちできないほどの質を誇る。

警察が調べたのは配信で890本だから、映画館でも見てて、1000本て計算じゃなかろうか。

タイの中国人人口は約10%くらい。
現地の中国人も、タイ語を話す人が多いという。
それに、リーは子供のころからの設定なので、警察が中国語をしゃべるのは、中華街の警察署だとしても、かなりご都合。

 

それと、タイは一般的には、あまり英語が流通してない。
旅行した時に、英語で話しかけても、だいたい通じなかった経験あり。

 

ヤギを入れて、死体を移し替えたのは、父が罪を自分が被るつもりだったのの伏線。
墓を開けた時、棺桶の蓋の裏に血がついていたので、実はスーチャットは息を吹き返した可能性がある。
なぜって?
この映画のオープニングシークエンスが伏線になっている。
生きて棺桶に閉じ込められる男の話だ。
ヤギを入れたのは、そのためでもある。
これで、警官ソンクンはウェイジエか、その工事業者への疑念を抱くから。

知らない情報があった方がいいというのも映画全体の伏線だったりする。

そして、そこから暴動というウェイジエの想像を超える事態になってしまう。
家族の平穏な暮らしを願った男は、事件が広がれば平穏さは失われると判断したのだろう。

 

 

『ビジョン』(2015)からけっこう脚色されています。
映画1000本vs事件1000件は『共謀家族』での潤色。
『ビジョン』(2015)は、さらに丁寧にトリックを描きています。242分あるしね。
インド的な倫理やトリックも最後も違うので、見比べるのはかなり楽しいです。
こちらも、いづれ紹介します。

 

 

 

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