菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

自由落下、自在上昇         『落下の王国』

2008年09月16日 03時07分08秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第14回。



「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」



『落下の王国』







いやぁ、ついに観れました。
以前【死ぬまでに観れるか?】で書いた作品ですから。
4年間、撮影してたんですねぇ。
観れるかと思っていた頃には、まだ出来ていなかった、と言うわけで。


さて、映画の方は、まさにスクリーンにぴったりの作品でした。

予告編で、しっかり物語が語られないのは、物語がないのではなく、これが物語についての映画であるからだろう。

失恋してヤケになり、危険なスタントに挑み怪我をした青年が、出会ったのは、同じくオレンジの木から落ち、腕を折った少女。
青年は少女に物語を話し始める。
それは、ある5人の復讐の物語。
青年が少女に物語を聞かせるのは、実は目的があったのだ。

青年が語る物語が、少女の目から通して変形していく。
その物語の世界は、まさに絢爛豪華な想像力の翼が自由に羽ばたく幻想の実現。
目くるめくとか、おとぎ話のようなとか、形容詞がぴったりなのだ。


ターセムが、実は『ザ・セル』以前から映画化に動いていた作品で、原題は『THE FALL』で、『その落下』。
『ザ・セル』以降、いくつもあったオファーを断り、自身の会社で自主制作として着手。
その決断は、友人のスパイク・ジョーンズが見せてくれたジョージ・ルーカスが撮ったコッポラ監督作品『雨の中の女』のメイキング『THE Filmmaker』から。
その中で、コッポラが言った「多くのフィルムメーカーは成功すると、どんどん巨大な作品を手がけていく。成功の後、個人的な作品を手がけていくことは冒険であり、難しい。そして、私は、そう、ありたい」がきっかけ。

確かにコッポラは『ゴッドファーザー』の成功の後で、『カンバセーション~盗聴』という個人的な作品を手がけている。
考えてみれば、ジョージ・ルーカスも世界一巨大な自主制作『スター・ウォーズ』新三部作の監督だ。


弟アジット・シンの後押しと、二人の友人スパイク・ジョーンズとデビッド・フィンチャーの協力を受け、その巨大で個人的という相反する作品に挑んだターセム。
その戦いは、妥協0で、徹底的にこだわり抜いて、長期のオーディション、製作予算の追加、世界各国、世界遺産と絶景地でを必要な時に、一日1ショットとかやりぬき、4年間の撮影を経て、完成したのだ。


その制作方法は、実に奇抜。
まずは4歳の少女に物語を聞かせるパートを撮影し、彼女が実際に反応した部分を脚本、ロケーション(彼女に「物語のあのシーンはドコが舞台だと思う?」聞いて決めたりしたそう)に反映させて、撮影プランを練り直したそうだ。

なぜ、4歳の少女にしたのかという理由も奮っていて、現実と空想が未分化な年齢は、5歳以前というデータに基づいてとのこと。

時代設定も1915年とし、世界が映像に支配されていない設定にし、CGもほとんど使用していないだとさ。

まさに少女の目を通して物語を描くために。



物語、そして、映像にこだわりまくった映画のある意味、一つの真髄に向かおうとした作品。
ぜひぜひ、出来るだけデカいスクリーンと音響設備の整った映画館での鑑賞をオススメします。







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