20年ほど前、派遣社員で働いていたとき、
旅行の費用がないので、早朝の市場のアルバイトをしました。
朝5時から8時までの海鮮物の仕分け作業。
1月か2月だったでしょうか。
朝5時の外はまだ真っ暗で、とても寒かったです。
そこが終わってからでも、10時からの派遣先には間に合いました。
当時、そこで働いていた人たちは、
年配の女性、出稼ぎ中国人などが多かったようです。
3,4日たって少し作業に慣れたころ、
隣で作業している年配の女性が話しかけてきました。
「秋にさ、社員旅行があるんだよ。
あんた、旅行なんか行ったことないんだろ。
日帰りだけどね、楽しいよ。一緒に行こうね」
わたしは南の島への、
ダイビングツアー代のために働いているのに、
その言葉を聞いて居たたまれなくなり、
そこで働いている方々に申し訳なくて、1週間で辞めました。
今の仕事の帰りにスポクラに行くために、
荷物を抱えて出勤しています。
「そのバッグなに?」
「帰りにスポーツクラブに行くのでその荷物です」
「あっ、そうなの。いくらかかるの?」
ロッカーで聞かれたことは、
あっという間にパートさんたちに広がりました。
パートさんの中でも一番の古株のSさん。
彼女はパートさんの中でただ一人、スポクラに通っています。
「あんた、ジムに行ってるんだって?」
「はい」
「どれぐらいやってんのさ」
「まだ2ヶ月ぐらいです」
「週に何回?」
矢継ぎ早にいろいろと聞かれました。
ニコリともせず、まるで尋問のような感じ。
どうせなら、Sさんの通っている
スポクラの様子とか聞いてみたかったのですが、
そんな雰囲気ではありませんでした。
みなさん、清掃の仕事にン十年という方々。
一般企業の事務職上がりのわたしは、異端者かもしれません。
その異端者でも、今の職場でうまくやっていきたいのです。
60過ぎのわたしにほかに勤める所がありません。
わたしは生活に少しの潤いを足したくて、
今の仕事をしています。
「他の仕事はしてないの?」
「家は賃貸、持ち家?」
「年金って自分のなの?」
そう聞かれるたびに、馬鹿正直にこたえていたわたし。
無口でいたほうがよかったのかな・・・。
きょうは一度家に帰ってから、スポクラへ行きました。
家に帰って出直すのは大変そうでしたが、意外に大丈夫でした。
出勤時の荷物は控えめに、いろいろな質問の答えも控えめに、
これからはカメレオンのように、
職場の色に合わせようと思います・・・。