歳を重ねていくごとに、
たっぷりとした黒い髪は、白髪が増え貧弱になり、
張りのあるしなやかな肌は、しなびたようにがさついて、
高かった声は、抑揚のない野太い声になり、
薄くピンク色の爪は、分厚く黄ばんだ色になり、
そして、慎み深く柔らかな心は、
もう怖いものなしとばかりに、厚かましくなりました。
職場で時々声をかけてくれる人がいます。
わたしよりも5歳ぐらい上の感じです。
「明日からは寒くなるから気をつけてね」とか、
「お先に失礼します」とか、
いたって普通の言葉ですが、
その言い方と物腰がとてもチャーミング。
ちょっと顔を傾けて、上目遣いのあいさつ、
とてもかわいらしいな感じです。
わたしから去って行ったかわいらしさ、
それは歳のせいではなかったんですね。
なんでも歳のせいにして、努力や改善を怠っていたのです。
でも、歳を重ねたから感じることもあります。
街路樹の根元に咲き始めた草たちの、
小さな若草色を見ていると、
とても愛おしい気持ちになります。
ここで自生してくれてありがとう・・・なんて。
いつまでも見ていたいです。
妹が亡くなり、母が亡くなり、父が亡くなり、
わたしひとりになりました。
ずっと続いていた血筋が、わたしで途絶えてしまう、
そのことをちょっと切ないと思うようになりました。
両親が生きていたころは、
家族の中にいても、心はとても孤独でした。
でも、今、家族のつながりを、ほんの少し感じるようになりました。
今までお墓参りは、
法事のほかには数回しかしていません。
明日はお彼岸の中日。
ちょっと家族を感じにお墓へ行ってみようかな。