うろキョロ散歩

楽しくお散歩をするのが唯一の趣味。
お散歩の徒然に観たこと感じたことなどなどを書き込んでいこうかな、

チーム・バチスタの栄光

2008年01月29日 | ブックスタンド
海堂 尊著 宝島社刊
内容(「BOOK」データベースより)
東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を臓器制御外科助教授として招聘した。彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、成功率100%を誇り、その勇名を轟かせている。ところが、3例立て続けに術中死が発生。原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長・高階は、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼しようと動いていた。壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。そしてチーム・バチスタ・メンバーの相克と因縁。医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか…。栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは。


感想
久々に引き込まれるオモシロさを持った推理小説に出会いました。

医療ミステリーという枠組みの中でも堅苦しさが無く、とっても読み易い。
成功率100%だった或る手術が、立て続けに3度術死という最悪の結果を招く。そこには医療ミスを凌駕するある秘密が隠されているのではないか・・・。大学病院の院長は院内のアウトロー的存在の主人公に極秘内部調査を託す。
登場人物の個性が一人一人際立っていました。中でも白鳥は強烈で、田口との2トップで聞き込み調査を進めて行く場面は見所満載。
探偵役の2人のキャラクターの書き分けがよくできていて うまく役割分担ができています。
さらに手術描写がリアルで且つ繊細さを持っている。
面白い場面では徹底的にコミカル。シリアスな場面はキュッと締めるというメリハリが利いている。

推理小説好きで色々な小説を読んできたので、小説の半ばまで読めば大体犯人が絞り込める自信のある私ですが、この小説は最後まで犯人が解らなかった。ミステリーとは基本的にまず事件が起きて犯人探しがはじまる。一体誰が犯人なのか。犯罪の手口は何なのか。どうやって被害者を加害者は殺したのか。そして犯人の動機は何なのか。これらを読者として探り当てるのがミステリーの醍醐味であるはずだ。しかし本書は違う。まず登場人物が極めて限定されている。この中に犯人は必ずいる。これだけ登場人物が限られていて、一体どうやって落ちにもっていくのか。途中から読み手の関心はこっちの方に移っていく。

最後の最後で医師のというか医療現場での「生」と「死」の本音と建前について、医師である著者の考え方が述べられているのだろうと思われます。
ここ最近では滅多に御目に掛かれない素晴らしいミステリー作品でした。