about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『阿波DANCE』(2)-3(注・ネタバレしてます)

2008-11-22 02:10:02 | 阿波DANCE
・茜が阿波ダンスなるものを踊ることになったと聞かされて、茜の不満顔をよそにお母さんはにこにこしている。
何とか言いつつも一緒に踊る相手を見つけ土地に馴染んできた茜が嬉しかったんでしょうね。

・茜たちの練習風景を見ながら、湯川に「私たちも融合しなきゃですよね」と語るさやか先生。
彼女の発言が実際に何を意図してるのかはわかりませんが、とっさに観客の頭には湯川の期待通りの意味が浮かんだはず。ちょっとエロ風味の台詞で映画に華を添える。
自分の期待されている役割(お色気担当)を踏まえて、それをきっちりこなしている星野さんに拍手。

・茜の指導のもとヒップホップダンスを踊る面々。この時やたら人数がいますが、みんないずれ阿波ダンスを踊る気でいるんでしょうか。
そして一人リズムが遅れているコージ。阿波踊りの才能はここで生かされないものなのか。実際にも男子四人の中で勝地くんと北条くんが一番ダンスに苦戦したそうです。

・自宅の酒蔵の中でヒップホップの練習をするコージ。いつもなら阿波踊りを練習するところなんですが。上手く踊れなくて悔しいから+昼しごかれたせいで無意識に体が動いちゃうってところでしょうが、案外ダンスが楽しくなってる面もあるのかな?
お父さんが踊るコージに目をとめているのでさすがに何かいうかと思ったら完全スルーでした。

・部屋で勉強机に向かいつつ足だけで踊るユッキー。勉強してるのかと思えば阿波ダンス用の衣装のラフスケッチを描いている。彼の画才が初めて表現される場面。

・お寺で木魚叩きつつかなりおおっぴらにダンス練習中のカズとミノル。なんだかんだでいつも一緒のこの二人、結構な仲良しさんですよね。

・授業中に早弁しつつ足でリズムを取るコージ。勉強・早弁・ダンスと3つ同時進行(ダンスは無意識かもですが)の忙しさ。
彼の足の向こうにはやはり同様にリズムを取る足が3つ見える。四人組の席が横並びならではのシュールさ。

・今度はコージが茜に阿波踊りを教えようとするが茜はヒップホップ以外は踊らないと反発。
しかし茜と一番というか唯一仲の悪いコージがなぜコーチ役をやるのか。やはり学校一の天水ということで彼が教えるのが当然、と本人も回りも思った結果なんでしょうか。

・茜を追ってきたユッキーが「このままやったら審査通らへんかも」と俯くのへ、「大丈夫。あたしがいるから」と茜は笑顔を見せる。
おそらく阿波へ来て以来(少なくとも作中では)初めて見せる笑顔なのでは。茜のユッキーに対する親しみがうかがえます。

・審査の席で、笑顔で踊るコージに苛立つ茜は、たびたび体当たりするなどあからさまな態度の悪さ。
しかしコージが茜の行動に驚きながらも反発一歩手前でとどまっていることでぎりぎりチームワークは保たれている。突き飛ばされたコージが茜に向ける表情に、そのぎりぎりの感情がうかがえます。

・一人審査員の目の前で出ていって踊る茜。以前ヒップホップの大会?で優勝した経験のある茜は、審査員を引きつけるパフォーマンスには自信があったんでしょうね。実際茜の独断専行にすっかりペースを乱されたほかの四人が踊り止めてしまったのに、審査員は茜のダンスに合わせてついリズムを取ったり、「新しい鳴門の息吹」(by校長)とか誉めそやしたりしてましたし。
この時、一人踊り続ける茜の姿をカメラが色々な角度から、時には斜めに画面を揺らしながら映していることで、彼女の踊りをひときわダイナミックに見せる効果をあげています。

・父親の鶴の一声で審査不合格になったにもかかわらず、「(茜のせいで)父ちゃんに恥かかしてもうたやないか」と言い出すコージは、かなり重度のファザコンですねえ。
茜がそのへん突っ込むかと思ったんですが、「死ぬまで二人で伝統守ってれば」と言っただけで、意外にも「ファザコン」系の悪口は言わなかった。両親が最近離婚し、それ以前も別居状態が長く続いてたと思われる茜は父親に縁薄いだけに、父子の絆をむげに貶める気にはならなかったのかも。

・「どうせ理解されないよこんな田舎じゃ」「一人で踊ってた方がよっぽど楽しい」。
茜の暴言は今に始まったことではないですが、この時ばかりはいつもつっかかるコージのみならず、他の三人も芯からショックを受けた顔をしている。自分たちを完全否定されたようなものですしね。

・「意味意味て、おまえはイミヤマイミコちゃんか!」。茜のおじいちゃんのわかるようなわからないようなツッコミ。茜が唇だけで「イミヤマイミコ・・・」と呟いてるのが何か可愛いです。
そしていきなり正式離婚して茜を鳴門へ連れてきたお母さんの思い切り良すぎる行動の理由は「アホになりたかった」からだと明かされる。
このお母さんの行動に見られるように、物事にいちいち意味を求め、人生にいちいち意義を求め、そうすることで自分をガチガチに縛ってしまいがちな現代人に、「踊るアホウに見るアホウ」の阿波踊りを介して、もっと無心に、素直に生きることを楽しもうというメッセージを贈るのがこの映画の目指すところだったんじゃないでしょうか。
だからこそコージの父も伝統うんぬんにこだわり「無心に踊る」ことを忘れているコージを叱ったんでしょうし。

・本当は阿波ダンスなんてやりたくなかった、と父親に不合格にしてくれたことへの感謝を述べるコージ。
これだけ父親に頭が上がらない、尊敬するあまりたえず顔色をうかがってしまう姿は、仲間の前では強気なコージだけに何とも情けなく映る。
お父さんに怒鳴られてさすがに今度こそは反抗するかと思えば、複雑に表情をゆがめてはいたものの、結局言葉を飲み込んでしまう。コージの父親越えにはもうしばらく時間が必要なようです。

・夜明け前、一人踊る茜。背景の空の色、いつもよりスローテンポの曲に合わせて踊る茜のシルエットが美しい。
気乗りしない様子で途中で踊りやめてしまうのは、やはり仲間と踊る方が楽しいことを発見したゆえですね。

・またまた「うずしお」でラーメンを食べるコージたち四人。夏休みらしく私服姿に変わった以外は、見事に初登場時と話す内容が一緒。茜が抜け阿波ダンスがポシャったことで、彼らの意識も振り出しに戻ってしまったんですね。
・・・と思いきや彼らの話題は阿波ダンスへの未練へ。普段は大人しく見えるユッキーが半ば茜をかばう形で「誰も阿波ダンス本気やなかった」と皆の勝手さを鋭く指摘する。
もともと阿波ダンスの発案者はユッキーですもんね。親から医大受験のプレッシャーをかけられ踊りを奪われようとしている彼だけに、みんなで阿波ダンスを完成させたかった思いもひとしおなんでしょう。

・コージが出て行ったあと、「ほんとに四人で阿波踊りやるんか」と不満げに語りあうカズとミノル。ユッキーはまだしもこの二人は阿波踊りへの情熱に関してコージとはずいぶん隔たりがある様子。
彼らがヒップホップ、ついで阿波ダンスに飛びついたのは茜目当てというばかりでなく、もともとさして阿波踊りを好きじゃないっぽい(女にもてそうにないのが理由だろうが)のに、コージに引きずられていやいややってたせいなのかもしれません。

・茜を美術館に誘ったユッキーは、本当は画家になりたいという思いを打ち明ける。おそらくは親友のコージにも打ち明けたことのない夢でしょう。ヒップホップ一辺倒で(傍迷惑なまでに)わき目もふらない茜の情熱に刺激を受けたからなのでは。
踊りへの情熱という点ではコージも一緒ですが、彼の場合踊ることで親と対立するどころか親の背中を追いかけるように踊りにのめりこんでるわけですから、親のいいなりに自分の夢をあきらめようとしているユッキーにとっては、親と衝突せずに好きな道を歩めてうらやましいと思いこそすれ刺激を受け憧れる対象にはならないんでしょうね。
しかし卒業したらニューヨークで踊りたいという茜の表情に迷いがあるのをきちんと見抜いている彼はさすがの慧眼です。

・「俺はもういっぺんやりたいんや。大学東京やし、茜と過ごせるのもあと少しやし」「ごめん、あたしやっぱりこの町で踊るの無理」。
もう一度阿波ダンスをやろうと誘うユッキーに茜が断りを入れる場面ですが、ユッキーの台詞には意識的にか無意識にか愛の告白要素が入り込んでる気がする。茜の返答は言葉どおりの意味しかないんでしょうが、物語的には茜がユッキーを「振った」ことの暗示ですね。
ここで茜の理解者ポジションだったユッキーが恋人候補としては脱落し、現在は喧嘩ばかりしてるコージとの関係が対立→愛情に変わっていくんだろうなーと思わせます。実際にはコージとも恋仲といえるほど深くならなかったですけどね。

・自分の自転車と交換にいきなり茜のキックボードに乗って去ってゆくユッキー。この唐突な行動は先の茜の拒絶に相当ショックを受けたってことでしょうね。やはり失恋気分だったのか。
彼女の愛用するキックボードに乗りつつ茜を偲ぶつもりなんでしょうかね。

・通りすがりに自転車に乗る、というか乗れない茜を見つけたコージは、気軽に声をかけ自転車の乗り方をコーチする。
自転車の乗り方は普通父ちゃんに教わるものという台詞からは、今は息子に厳しくそっけない父親もコージが子供の頃はもっと気さくな父だったんろうと想像させます。
先にあんな経緯があり茜を最低だと罵ったコージが、いかに直情型のさっぱりした性格とはいえ何らわだかまりを見せないのがいささか不思議でしたが、「いっこも笑わへんやないか」「本当は寂しいだけやろ」といった台詞からは、彼がユッキー同様、本当は楽しいにもかかわらず笑顔を見せない茜の孤独感に気づいているから、彼女に腹を立てるより痛々しく感じる気持ちが先行してるのがうかがえます。
単純バカに見えて案外他人のことをきちんと見てるんですね。

・ニューヨークへ行くと言って家を出ようとする茜は、「どうせ本気じゃないんでしょ」という母をどれだけ自分のことを知ってるのかと責める。
わずかに声を荒げ、泣くのをこらえているように声が震える。榮倉さんの演技が冴えるシーンです。

・家を出ようとした茜は思い立ってコージの父を訪ねる。この時ちょうどコージが自転車が帰ってくる。
夕暮れ時に茜と別れてから彼が今まで外で何をしていたのかは、少し後で明かされることになります。

・自分の踊りのどこが悪いのかと父親に詰め寄る茜の非常識な行動を、最初コージは咎め父にとりなそうとするが、父親が茜の踊りを作り物呼ばわりするのを聞いて、「父ちゃんに何がわかるんや」と敢然と茜の味方に立つ。
奇しくもこれは茜が家出直前に母に告げた「何も知らないくせに」に呼応している。親に反抗する子供の常套句には違いないですが、喧嘩ばかりだった二人の気持ちがここに来てはっきり呼応しているのが感じとれます。

・「俺は父ちゃんのコピーになんかならんからな!俺らには俺らの踊りがあるんや!」。 
この「俺ら」というのはいつもの四人組のことではなく茜と自分を指してるんですよね?コージは父が自分に踊りを教えてくれないと拗ねてますが、それはまさに偉大な父を慕いすぎてるコージが自分のコピーになってしまうことを怖れていたからなのでは。
だからここでコージが自分に反抗したことは、父ちゃんにとってはむしろ喜ばしいことだったんじゃないでしょうか。もちろん一抹の寂しさはあるでしょうけど。しかし本当に勝地くんは父子ものが多いなあ。

・茜を駅まで追いかけてきたコージはふたたび金メダルを差し出す。
さかんにくしゃみをする(本当にくしゃみしてるみたいに見える。上手いなあ)コージの姿に、彼がわざわざ海に入ってメダルを拾ってきてくれたこと、さっきも父親に逆らっても自分をかばいさらにはダンスを誉めてくれたことを思って、ずっと睨みあってきたはずなのになぜ?と戸惑っているのが、何か言おうとして言い出せないその表情に集約されています。

・ホームに電車がやって来たとき、コージは「早よ行けや、本気なんやろ」と言う。先にお母さんが「本気じゃないんでしょ」と言ったのと反対の反応。
この時結局茜は電車に乗りませんが、最終的に一人鳴門を離れ夢を叶えるため東京に向かったことを思えば、コージの方が実の母親よりも茜の心情を正確に察していたと見ていいでしょう。
ジャンルは違えど同じように踊りを愛する者としての共感なんでしょうね。

(つづく)


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