サイエンス好きな男の日記

気が向いたときに、個人的なメモの感覚で書いているブログです。

太陽光発電の売却は得なのか(1)~まずは査定をしてみました~

2022-06-06 07:35:54 | 太陽光発電

最近、太陽光発電システムの売却に関するチラシやメールが届くようになりました。

「太陽光発電所を売却してみませんか?」とか「太陽光発電所を査定してみませんか?」など。

これまではあまり興味がなかったのですが、山梨および熊本の発電システムはすでに7.5~8.5年経過し、最近インボイスや出力制御抑制(特に熊本)などの影響を受けることもわかりました。そこで、試しに何社かに試算してもらいました。すべて税込。

山梨の太陽光発電システムの場合:

A社:仲介2,400万円 買取2,031万円
B社:仲介2,840万円
C社:仲介2,400-2,600万円
D社:       買取2,500万円 ⇒ 後日、架台が単管パイプであるため買取対象外と判明
E社:        買取2,130万円

※ 仲介の場合、仲介手数料は不要、あるいは仲介手数料を差し引いた金額です。

仲介の場合、およそ2400-2600万円ぐらいです。

山梨の購入時の価格は2,500万円であり、FIT起算日からすでに7.5年が経っていますが、購入時にかなり近い金額なのは驚きです。
仮に、2,400万円で売却する場合、年間売電収入は350万円ほどなので表面利回り 14.6%ほどになります。

 

熊本の太陽光発電システムの場合:

A社:仲介1,442万円、買取1,344万円
B社:仲介1,506万円
C社:仲介1,700-1,850万円
D社:       買取1,650万円 ⇒ 後日、遠方という理由で買取不可
E社:        買取1,280万円
F社:仲介1,667万円、買取1,500万円

※ 仲介の場合、仲介手数料は不要、あるいは仲介手数料を差し引いた金額です。

仲介の場合、およそ1500-1800万円ぐらいでしょうか。ただ、かなり幅がありますね。

すでに8.5年も経過した発電システムですが、思ったよりも高額で仲介・買取が可能なようです。
仮に、1,700万円で売却する場合、年間売電収入は250万円ほどなので表面利回り 14.7%ほどになります。

上記のB社とはAfterFITであり、以下のWebにて自動査定が可能です。
https://simulation.afterfit.co.jp/

 

買取というのは、場合によっては買い取った業者が転売により最終的な買い手を見つけた後で正式契約になるといわれたケースがありました。それって、その業者にのみ仲介を依頼しているのと何ら変わらないので、買取の場合にはそのあたりの契約をきちんと確認したほうがいいです。

 

太陽光発電システムの収益イメージ

ここで太陽光発電システムの収益イメージを確認しておきたいと思います。

山梨の場合、表面利回りは14% (売電収入:350万円、購入価格:2500万円)であり、所得税・住民税を30%とすると、税引後利回りはだいたい11%ぐらいになります。(根拠:(350-(350-2000/17)*0.3)/2500 = 11%)

そこでその利回り11%として売電累積収入(税引後)を計算したのがオレンジの直線です。一方、太陽光発電システムは20年後に価値がなくなるとしたのが緑線です。この緑とオレンジの線を足しあげたのが、収入+価値 の青線です。もともと価値が1だったものが最終的には2.2となることから、最終利益は 2.2 - 1 = 1.2 となります。

シンプルにこの最終収益を20年で得たと考えると、1.2 / 20 = 6% 。つまり、税引後実質利回りは 6% 程度だといえます。
一方、税引前実質利回りは (14%*20 - 1) /20 = 9% です。

また、このグラフにある通り、発電システムの価値が年々減少するため、7.5年経過すれば、(20-7.5)/20 = 0.625 なので購入額の 0.625 程度になっているかと思っていたのですが、そうではなかったことに驚きです。

 

 

また、7.5年経過したシステムを購入した場合は以下になります。ここで話を分かりやすくするため、購入額と同程度の額で売却できたとします。

オレンジの線の勾配は先ほどと同じです。しかし発電システムの価値は、残FIT年数12.5年で0となり、最終利益は 0.4 しか残りません。先ほどと比べて最終利益はおよそ1/3程度となってしまいます。

この場合、税引後実質利回りは 0.4 / (20-7.5) = 3% 程度です。一方、税引前実質利回りは (14%*12.5 - 1) /12.5 = 6% です。

ここではかなり大雑把な試算ですが、7.5年経過したシステムにて、もし購入した金額と同額で売却できた場合、売却後の資産運用で税引後利回り3%を超えるような運用ができるのであれば売却したほうがいいといえます。

実際には、山梨の場合には売却金額が購入金額と近い結果になりそうですが、これはたまたま山梨の太陽光発電システムを安く購入できた、といったほうが正しいですね。表面利回りが14%を超えるような太陽光発電システムは購入当時ほとんどなかったと記憶しています。

今回はかなり大雑把な議論でしたが、減価償却による減税効果、インボイスの導入により益税が得られない、出力制御抑制、パワコン故障、20年後の太陽光発電の価値評価をきちんと行い、売却後にどのくらいの利回りで運用できるなら売却したほうがよいか、次回はもう少し正確に議論したいと思います。

 

仲介売買相場から見た査定価格の妥当性の評価

この査定価格の妥当性を検証してみます。

以下は、2022年5月時点で太陽光発電システム仲介のポータルサイトに掲載されているFIT経過年と表面利回りをプロットした図です。
ポータルサイトでは、価格や利回り、売電単価といった情報がすぐにわかるのですが、FIT経過年は要問合せといった形で、Web上にその情報を公開している例が少なかったのですが、得られた情報をもとに以下にプロットしました。しかも、経過年が短いとあまり参考にならないので、だいたい4年以上が経過している発電システムを選んでいます。

横軸はFIT起算日からの経過年、縦軸は表面利回りです。ある程度FIT経過年数が経ったシステムを対象としたため、売電単価は24円(2件)、32円(7件)、36円(6件)、不明(3件)と比較的高いです。なお、40円は見つかりませんでした。

データ数が少ないのでちょっと難しいですが、線形近似でFITさせた青い破線を見るとやや正の相関があることがわかりますが、あまり強い相関はなさそうです。
太陽光は自然相手ですし、不動産のように入退去で収益が途切れるリスクもありません。したがって、これまでの実績をもとにかなり正確な収益性を評価できるため、もっとはっきりとした相関があるかと思ったのですが、そうではないのはまだ市場が成熟していないからなのでしょう。

青の破線では4年後に利回り10%であるため、その点を通るような妥当な表面利回り f(t) = 年間発電量 / 売却額 を描いたのがオレンジの曲線です。

f(t)=0.0375+1/(20-t)

この曲線の意味としては、あるFIT経過年 t の発電システムを購入した場合、残りのFIT期間中に得られる年あたりの収益は一定。

つまり、購入額を x  とすると、FIT終了時までの収益は 売電収入 - 購入額 なので f(t) * x *  (20 - t )   - x  です。これを  (20-t) で割ったものが年間収益であり、これが購入額 x に比例するという条件を付けると先ほどの曲線が得られます。購入額 x で規格化すると、(f(t) * (20-t) -1 ) / (20 - t)= 一定 です。f(4) = 0.1 (4年後に利回り10%)の条件を付けることで"一定"の値が決まり、先ほどの式になります。

もし、山梨の発電システム(t=7.5) が2400万円で売却できる場合は 350万円/2500万円=0.146 より表面利回り14.6%、熊本の発電システム(t=8.5) が1700万円で売却できる場合は250万円/1700万円=0.147 より表面利回り14.7%となります。これを先ほどのFIT経過年と表面利回りの図にプロットしたのが赤い点です。

オレンジ曲線からかなり上方に位置しているため、平均的な仲介の相場よりも安い価格提示だとわかります。ただ、このオレンジ曲線はあくまでも売主側の希望価格であり、実際にいくらで売却できたのかは不明です。そもそも、ネットに掲載されている物件なので、売れ残りとみることもできるため、本当に売却するつもりなら、やはり、赤い点くらいの価格でないと売れないのかもしれません。

 

山梨の太陽光発電の回収率

これまでどれほど回収できたのか、これも大雑把に試算します。

山梨の場合、年間350万円、運用開始から6.5年経過(FIT起算日から1年後に運用開始)しているため、350万円*6.5=2275万円。

一方、これまでの減価償却の合計が750万円ほどなので、税金は (2275-750)*0.3=450万円。

したがって、これまでの運用の結果、儲けとしては 2275 - 450 = 1825万円 となり、全額の2500万円の73%ほどが回収できていることになります。

それだけ回収できていて、さらに投資額と同額に近い金額で売却できるのであれば、それもありだなと思い始めました。
さらに、太陽光を持ち続けるデメリットとしては、インボイスで課税事業者になると消費税10%の益税を失いますし、出力制御抑制は少なくとも熊本の発電所では影響を受け始めます。さらに、10年を超えることでパワコンの故障頻度やパネルの劣化の影響も出てくる可能性があります。また売電単価40円だからこその利回りであり、FIT終了後ももちろん太陽光発電の買取が続くでしょうがさすがに売電単価はかなり下がりますから、そのまま持ち続けることのメリットがあまりありません。

しかも、現在の築古戸建てや社債などの他の運用では、利回りは税引前であれば8%ほどは見込めるため、資金をそちらへ振り向けることで、太陽光を持ち続ける場合よりも、より多くの収益が期待できそうです。

 

今後…

今回、非常にざっくりとした試算をしましたが、次回、本当に売却することがどれほど得なのか、より正確に試算したいと思います。

 

 

 

 

 

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