ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

38億年 生命進化の旅 感想2 まぁ池田清彦だし

2010-07-31 22:31:46 | 池田清彦
 え~、この本の感想もこれで終わりにしたいと思います。正直、他にやることが溜まっていますので。今回はニッチと遺伝子についてです。

以下引用
P132
恐竜や首長竜のような大型の爬虫類が絶滅した後、そのニッチはどうなったのだろうか。環境が回復すれば、系統は違っていても形態や生態が似通っている動物がそのニッチに入り込んで生息しているはずである。たとえば、かつての魚竜のニッチには現在ではイルカが入り込んで生息しているように見える(中生代にいた爬虫類のイクチオサウルスと現生の哺乳類のイルカの生態や形態は、かなり似通っていると思われる)。しかし、たとえば首長竜の絶滅後、そのあいたニッチに入り込んで生息している生物はいるだろうか。ネッシーのようなものが普通に生息しているのだとすればかつての首長竜のニッチが現在もあると言うことができるのだろうが、ネッシーは実際には存在せず、ニッチも具現していない。つまり、いちど絶滅したらその後はもうなくなってしまったニッチも結構あるのだろう。巨大恐竜のニッチもまた、その後にはほとんど引き継がれていないように見える。哺乳類については自称以降に述べるが、白亜紀末期頃から様々な哺乳類が出現し、恐竜絶滅後に多様化するけれども、巨大恐竜と似通った生態と形態を持っている哺乳類はいない。100トンもの巨体が生存可能な陸上のニッチはなくなってしまったのだろう。
引用終わり

ニッチというのはその生物の生態系内における役割、人間に例えれば職業です。
この場合、首長竜のニッチって水中における大型捕食者ですよね。クジラがそうじゃないの?首長竜が魚やアンモナイトを食べていたようにクジラが現代では魚や頭足類の捕食者ですが?なんでニッチの話をしているのに形態にしか目がいかないのか。なぜ生態面の話をしないのか理解に苦しみます。
遺伝子についてもまるで理解できないことを嘯いています。

以下引用
P148~149
現生の生物についてはDNA解析が可能だから、それによって系統を確かめることができる。ところが、DNA解析によって得た系統と形態による分類は合致しないケースが多い。
中略
逆に言えば、DNA解析の結果、同じ系統だということになっても、その形態はまるで異なることも多いのである。DNAが形を決めているわけではないのだ。
引用終わり

ハァ?(゜A゜)普通、DNAによる系統解析って淘汰圧のかかりにくい中立な領域を使うんですが。形態という自然淘汰のかかりやすい所とは関わっている遺伝子が違うんですよ。そもそもDNAによる系統解析が中立説から発展してきたことを知っていればこんなことは言えないはずですよ。なにこの一知半解。まぁ理解度が半解どころか崩壊してる気もしますが。まるで出来の恐ろしく悪い大学生を見ているようだ。本人は総合説へのネガキャンのつもりでしょうが、違いをきちんと把握して説明すべきことを説明しないのは教育者として下衆だよね。

いろいろ書いてきましたが、感想としては、「まぁ池田清彦だからね。この程度はデフォだよね(´・ω・`)」。

38億年 生命進化の旅 感想1? 追記あり

2010-07-29 06:18:24 | 池田清彦
 池田清彦の「38億年 生物進化の旅」の感想です。全部読むなんて時間の無駄にもほどがあるので6章から後しか読んでいません。それでも著者の駄目さ加減は十二分に伝わりましたけど。しかし、文章を書くということもそれを評するということもそれをする人間の頭の出来を知らしめますねぇ。今回は氏のクジラに関する発言を取り上げます。
(以下引用)
P177
約5000万年前といえば始新世の前期だが、その後の始新世中期に生息していたバシロサウルスというムカシクジラ(原鯨亜目)をみると、もはや肢は無くなっている。どうやらクジラの肢は、徐々にというよりは、相当急激に無くなったようである。

P212
たとえば5000万年ほど前のクジラには肢があった。では肢のあるクジラが肢のないクジラへどのように進化していくかを考えてみよう。陸に住んでいる肢のあるクジラに肢が縮まるような変異は明らかに適応的でないはずだ。だから受動的な適応しか許されなければ、陸棲の肢のあるクジラが陸棲のまま肢のない方向へ進化することはあり得ない。肢のあるクジラが海の中へ進出して、突然変異で肢がなくなるまで、あっぷあっぷしながら生き続けていることなどはさらにありえない。大きな形態変化の結果、肢が縮んでしまい、陸で生活するより海で生活するほうが生きやすくなったので、海に入ったに違いないのだ。
(引用終わり)

……バカじゃない?クジラの先祖って後ろ足がヒレ化して、それがまた尾びれの進化に伴い徐々に縮小していっているんですけど。P176で古いクジラの例としてアンブロケタスを出しているのに何を言ってるんですか。アンブロケタスの復元図を見れば後ろ足がひれ状に変化しているのがわかるはずですが。それ以前の問題としてクジラの祖先は水辺に生息していた4足動物なんですが。「日本の哺乳類学③水生哺乳類」加藤秀弘編のP26にはクジラの系統を示す図があります。これを見ると徐々に肢が縮小していって、かわりに尾びれが発達してきたことがわかります。
結局、池田氏の言っているようなことはクジラの進化に関する文献を複数当たっていればとても言えないんですね。比較対象もなしに急激に起こったに違いないなんて断言しているのもアウト。そもそも比較しなければそれが早いのか遅いのかもわからないのに勝手に急激に起こったと決めつけています。急激に起こったと言うのはいいけど、それは何を基準に決めたんだ?って話ですよ。この手の話は対象の他に比較としてアウトグループを設定することくらいは知っていてもおかしくはないんですけど。

参考文献
「日本の哺乳類学③水生哺乳類」加藤秀弘編
「ありえない!?生物進化論」 北村雄一著

追記
2年ほど前に後ろ足のひれが発達したクジラの化石が見つかっています。池田氏は調べる気はないでしょうが。
クジラの進化系統図に新たな一枚が追加された

池田清彦領域

2010-07-23 21:12:43 | 池田清彦
 先日、はてなで池田清彦領域というタグを作りました。読んで字のごとく、池田清彦レベルの知的怠惰、論点のすり替え、用語のオレ様解釈なんかをやる人物用に作ったタグです。これを作るきっかけとなった人物はtwitterでニセ科学やホメオパシーという代替医療に関して見当はずれな発言を繰り返して批判されています。まさに生兵法は大怪我のもとの体現者です。
いくつか発言へリンクを貼っておきます。

物理の方法と地質学の方法

で、ここでふたたび言い放つ。言葉はひとり歩きしない。聞き手が歩かせるのだ。聞き手の責任を問う。誤解は、するほうが悪い。私が書く日本語は、字句どおりに読みとるべし。一文字もおろそかにせず読むべし。行間を勝手に読んではならない。

ブログでは文脈を考慮しろと言い、twitterでは一字一句そのまま受け取れと。この二つを総合して考えると「オレに都合のいい解釈以外認めない」ということですわなぁ。いい年した大人が何言ってるんだか。この人は専門家内での議論や論文の査読をしてもらうという経験を本当にしたのか疑問に思います。

さて、本家の方は最近どうしているかといえば、こんなことを言っていました。

全国民必読 長生きしたければ病院に行くな

引用はじめ

「40代の頃、初めて内視鏡で胃の検査を受けさせられ、50代でも便潜血検査で陽性だからというので、胃がんやら大腸がんの検診を受けさせられた。

 がんはなかったのですが、そういった検査そのもので体調を崩したんです。後で、『何もないのにオレの腹はかきまわされたのか』と腹立たしくなってね。

 そうやって具合が悪くなってからかな、門外漢だった医療のあり方とか、余計なことを考える余裕ができたのは。それで、いろいろと調べたり考えたりするうちに検査そのものにより懐疑的になって、一切受けなくなったわけです」

引用終わり

予防を結果論で否定するというのは相変わらずのずれっぷりです。そんな口が叩けるのも検査で何もないことがわかったからでしょうに。後だしジャンケンで勝った気になっているのは相変わらずですね。
しかし、仮に池田清彦がきちんと情報を調べ、論理的に誤謬のない文章を書き、批判対象の言っていることを捻じ曲げずに伝えるようになったら、それはもはや池田清彦ではなく池田清彦の形をした異次元の何かなので、トンデモ観察をして楽しむ分には今のままでもいいのかもしれません。言及される方は迷惑ですけどね。

池田氏の温暖化懐疑論

2009-02-16 21:28:09 | 池田清彦
 綾波シンジさんに頼まれた(なんか不遜な言い方だな)池田氏の温暖化懐疑論を「正義で地球は救えない」から引用します。僕は温暖化についてあまり知識がないので正確な判断はできませんが、それでもヤバそうに思われる部分を引用します。

P26>百年前より0.7℃高いことがどれほど問題なのだろうか。

P27>二〇世紀前半は化石燃料を大量に消費していない。したがって、当然、CO2もそれほど出てはいなかった。にもかかわらず地球の平均気温は上がっていたのだ。そして、石油の大量消費が始まりCO2がたくさん排出され始めたはずの1940年~1970年代には平均気温はむしろ下がっている。つまりCO2の排出量と気温の上昇関係はかならずしもパラレルになっていない。

P28>シュミレーションでは、パラメーターを調整することによって観測結果に整合的になるようなモデルが選ばれている。どのパラメーターをどう調整するかは人間(研究者)の恣意的な選択で決まる。過去の減少を最も説明しやすいモデルになるようにいくらでもパラメーターを調整することができるのである。

ついでにお前が言うなと突っ込みたくなる一文。

P35>CO2による地球温暖化の危機をセンセーショナルに扱ってさんざん危機を煽ってきた人たちは、科学者の論文をきちんと読んでいるわけでもないのだろうし、様々な観点や論点を自分の頭の中で整理するというようなことをまったくしていないのだろう。

さすがグローバルに物事を考えられる人の言うことは説得力がありますね。おもに負の方向に。これを書いている今もはらわたが捩じ切れそうですw)読者を笑い死にさせるつもりですか池田先生?

このほかにも池田氏は同じ懐疑論者である丸山茂徳氏や伊藤公紀氏の本を好意的に紹介しています。

一冊で判断しなくてもいいじゃない

2009-02-14 23:36:46 | 池田清彦
 「環境問題のウソ」の書評の後にもやった参考図書紹介です。
論理的思考全般
詭弁論理学
入門!論理学

保全生態学全般
サクラソウの目
環境を守る最新知識

外来生物全般
外来生物が日本を襲う!
外来種ハンドブック
移入・外来・侵入種―生物多様性を脅かすもの
日本の外来生物―決定版

資源の無駄
外来生物事典

論理的思考訓練の問題集
環境問題のウソ

例によって池田氏の本の評価は低いです。だって池田氏の理論や情報なんて当てにならないもの。
 上記の本の中でも特に押さえておいてもらいたいのは「詭弁論理学」と「外来種ハンドブック」です。「詭弁論理学」は言わずと知れた名著ですし、外来生物問題に首を突っ込むなら「外来種ハンドブック」は読んでおくべきです。かなり前の本なのでいささか情報が古いきらいがありますが外来生物の定義など基本的な事柄についてはしっかり解説してあります。池田氏の言うことを支持するしないは別としても池田氏の言論の裏くらいはとってもいいんじゃないでしょうか?さもないと自分が支持するものが本当に正しいのかどうかわからないですから。

正義で地球は救えない 書評その8 相手に厳しく自分にめちゃ甘く

2009-02-08 20:21:21 | 池田清彦
 長くやってきた「正義で地球は救えない」の書評もこれでいったん終わりとします。最後はサブタイトルどうり池田氏の他人に厳しく自分には甘い部分、悪く言えばダブルスタンダードなところを批判します。
池田氏はアメリカの昆虫学者が出した現在の生物種の数の推定についてこう述べています。

P76>そんな丼勘定のような推計の数値しかないのであって、今、種の数がどれくらいかということを正確に言うことは誰にもできない。
 もちろん、それが今、どれくらい絶滅しているかについても、実のところはまったくわからない。だから、「一年間に約4万種と言われる現在の絶滅のスピード」という話に確かな根拠はまったく無い。

ここから鑑みるに池田氏は以下のことを嫌っているようです。
1.曖昧な数字を出す
2.根拠のないことを言う
そんな池田氏は自説で数字を出すときにどうしているかというと・・・・・・

P85~86>生物の長い歴史の中では、亜種は、1万~2万年もあれば進化するレベルのものであり、消失と出現を繰り返してきたことを考えれば生物多様性の保全にとって根源的に重要なものだとは思われない。

(゜O゜)あれ~?
亜種は1~2万年もあれば進化するという根拠はどこですか?ここで僕が不正確な引用をしているとお疑いの方は原典を確認してみてください。少なくとも四.生物多様性という正義の中には根拠が載っていません。さらに池田氏は基本的に参考文献を巻末に載せないので仮にあるとしても第3者が検証するには多大な労力を必要とします。これではご自身が丼勘定と言っているアメリカの学者の方が根拠を示している分だけまだましではないでしょうか。
つまり池田氏は他人がやるときはケチをつける部分を自分がやるときは知らんぷりというわけです。ずいぶんと不公平な態度ですね。
 さらに突っ込むと池田氏は>「一年間に約4万種と言われる現在の絶滅のスピード」という話に確かな根拠はまったく無い。
とおっしゃっておいでですが1年間に4万種というのは化石なども使って算出された数字のはずです。割と有名な話のはずですけど、どうして確かな根拠はまったく無いとまで言い切れるんでしょうか。もしかして都合の悪い部分は無視?
ここで仮に数字が曖昧だからダメなのだというとじゃあ自分はどうなのさとカウンターが返ってきます。ぶっちゃけ池田氏は詰んでます。

正義で地球は救えない 書評その7 根拠は出さないの?or出せないの?

2009-01-30 17:25:41 | 池田清彦
今回は、池田氏が主張の根拠を示していない部分についてです。池田氏の場合、通説と全く異なる主張をしているにもかかわらず論拠を示さないということがままあります。

P91>一時期、密放流によって増えているという指摘もよくなされていたが、実際には、他の種類の稚魚の放流に交じって各地の河川や湖沼に広がったケースがほとんどだと考えられる。

一時期も何も今でも密放流が原因という指摘は健在ですけどね。それどころか池田氏の言うような放流に混ざって広がったのがほとんどという見解は支持されていません。そもそも放流に混ざって広まったというのであればコクチバスの拡散を説明できませんから。他にもブラックバスのミトコンドリアDNAを用いた解析などでも東日本と西日本ではブラックバスの遺伝子に違いがみられます。放流に混ざって広がったのであれば全国でブラックバスの遺伝子に違いは見られないでしょう。これらのことから研究者の間では放流に混ざって広まったという見解は支持されていないのです。
ネット上で参考になる資料としては瀬能氏がオオクチバス小グループ会合で出したものがあります。リンク先を見ていただければわかると思いますが池田氏の主張はとっくに論破されたものなんですね。池田氏がこれに反対して先の主張をするのであればなおのことその根拠を示さなくては説得力がありません。

連絡 いとみみずさんへ
   舟木氏の書評はすべて書籍に移動しました。

論理的思考うんぬん以前の問題

2009-01-27 20:01:07 | 池田清彦
 只今体調が悪いので池田氏批判ができません。代わりにネットで見つけた池田氏支持者の姿勢に突っ込みます。
部長Mブックブログ
リンク先で特に驚いたのがこの一文。

>ブラックバスやグリーンアノールなどの外来種が、在来種を滅ぼした事実はこれまで絶無であり、駆除のために大量の税金を投入するのは非常に愚かだと言うのです。

(°▽°;) エッ!?
もう一回引用。

>ブラックバスやグリーンアノールなどの外来種が、在来種を滅ぼした事実はこれまで絶無

( ¨)¨)¨)¨)¨)¨)¨) エー!!
ブログ主さんはいったいどこから絶無という根拠をもってきたのでしょうか。池田氏すら絶無とは言っていないはずですが。
ちなみにグリーンアノールの被害については先日引用したもののほかにもネットに転がっています。
侵略的外来種グリーンアノールの食害により破壊された昆虫相の回復に関する研究
これらはグーグルで「グリーンアノール」と検索すれば容易に見つけることができます。
ほかにもナイルパーチやミナミオオガシラなど外来種が在来種を絶滅させた例はいくらでも探せます。専門書読めとは言いませんが、とりあえず裏くらいはとりましょうよ。ネットで簡単に探せるんだから。
ブログ主さんは最後にこうも言っています。
 
>新年に当たり、考え方を考えさせられた一冊でした。

・・・・・・・考え方以前に検索の仕方覚えましょうよ。


正義で地球は救えない 書評その6 グローバルに考え墓穴を掘る

2009-01-22 15:40:43 | 池田清彦
 池田氏はよくグローバルとかマクロといった言葉を使って全体をよく見て物事を考えることを推奨しています。全体をよく見て物事を考えることそのものに異論はないのですが、池田氏がそれを実践できているかは非常に疑問です。これは昔「環境問題のウソ」の書評を書いたときにも指摘したんですが「正義で地球は救えない」ではこれがさらにわかりやすい形になって表れています。

P99~100
>環境変動により、元の生息地には棲めなくなってしまった生物は、外来生物として他の生態系に侵入して生き延びるほかはないので、すべてを現状維持しようという努力は、結果として種の絶滅に手を貸すことになりかねない。侵略種として猛威をふるっているグリーンアノール(トカゲの一種)は、本来の生息地(北アメリカの南部)では、さらに南のキューバなどから侵入してきたブラウンアノールに駆逐され数を減らしてきているという。侵入地域では外来種として駆除され、本来の生息地では他の外来種により亡ぼされてしまったら、この生物種は地球上からいなくなってしまう。地球規模でグローバルに考えることが必要なのだ。
 人類にとっていちばん重要なことは、種の絶滅を防ぐことだ。生態系の固有生物相の保全や本来の生息地での固有種の保護も大事だけれど、それにこだわるあまり、種が絶滅してしまったら、元も子もない。

ふむふむ。すごいですな。ご自身の主張がブーメランとなって跳ね返ってきている。
批判にあたり、補足知識を追加しておきます。まず、グリーンアノールは複数の固有種の絶滅ないしは著しい減少にかかわっています。
国立環境研究所によれば

>食物となる樹上性かつ昼行性の昆虫。オガサワラシジミはおそらくグリーンアノールによる捕食のために絶滅かそれに近い状態となった。オガサワライトトンボ、オガサワラトンボ、シマアカネ等の固有のトンボ類も父島と母島ではほぼ絶滅し、グリーンアノールの侵入していない属島に残るのみとなった。オガサワラゼミなどの大型の昆虫も捕食され、種によっては著しく数を減らしている。

とあります。
さて、ここでいくつかのシナリオを考えてみましょう。

1本来の生息地でも侵入先でもグリーンアノールが絶滅する→地球上から消える種は1種
2本来の生息地でも侵入先でもグリーンアノールが生き残る→グリーンアノールの補食のため侵入先の固有種のうち2種以上は最低でも絶滅し地球上から消える
3本来の生息地では生き残り、侵入先では絶滅→地球上から消える種はなし

保全生態学上もっとも好ましいのは3でしょう。池田氏は種の絶滅を防ぐことが重要とおっしゃっていますので当然複数の種が絶滅するのは好ましくないと判断するでしょう。さて、池田氏の主張は1のシナリオを防ぐために侵入先のグリーンアノールの駆除はグローバルに考えて好ましくないというものです。しかし、先に述べたようにグリーンアノールは少なくとも2種以上の絶滅に関与し、これを放って置いた場合その被害はこれからも増えると予想されます。ということはグローバルに考えるとグリーンアノールを侵入先で駆除したほうがより多くの種を守れるということになります。
単純に考えると1種残るより複数種残った方が地球規模でも種多様性が保たれるはずです。なぜ池田氏は1種を守るためだけに複数種を絶滅させることを容認するのでしょうか?グローバルに考えると池田氏とは全く別の結論が出るのはなぜでしょう。

今回の論点は「1種を守るのに複数種を犠牲にする必要があるのか」ということでした。


正義で地球は救えない 書評その5 進歩のない池田氏2

2009-01-18 15:31:39 | 池田清彦
 さて、だいぶ間が空きましたが続きです。しかし言ってることが数年前とほぼ同じことのループ・ループ。なんだかなあ。

P98>繰り返すがアライグマにせよブラックバスにせよ、それによって滅ぼされた在来種はいない。

だから絶滅だけが問題視されるべきかのように書くのはあんたの開発などへの批判と整合性が取れなくなるって。絶滅させなきゃ何やってもいいの?違うでしょ?

同ページ>祖先が「外来」の出自であることを理由に差別をするのは悪しき国粋主義ではないのか。

はいはい、「差別」に「国粋主義」ね。なんたらの一つ覚えのごとく使ってくださるおかげで耳にタコができましたよ。具体的にどういったことをするのが「差別」に当たるんですかね。この文章の前後から推測すると外来種の影響を憂慮して駆除などをすることのようですが。仮にそうであるなら池田氏も「差別」をしていることになりませんか?確かに池田氏は駆除に賛成はしていませんが外来種の影響には憂慮しているようです。たとえば氏はP95で以下の主張をしています。

>自然は複雑系だから、それまでにないものが新たに加わったらどういう影響がでるかはわからない。だから私は外来種を日本に持ち込むことに関しては現行のやり方よりももっと厳しく規制したほうがいいと考えている。その上で、日本に居ついてしまった外来種に関しては、過剰な対応をする必要はないと言っているのだ。

この違いって定着した外来種に対してどう対応するかですよね。少なくとも外来種の影響について憂慮している点は共通しています。それで思うんですが憂慮して行動するのを「差別」と呼んで憂慮すること自体は何で「差別」にならないんでしょうね。池田氏の言葉を借りるなら外来種を持ち込むことに関して規制することの根拠だってその生物の出自が「外来」だからです。「外来」であることを理由に憂慮することが「差別」にあたるならほかならぬ池田氏自身がその「差別」を実行していませんか?ぜひとも池田氏にどうやって線引きしているのか理由を説明していただきたいものです。