ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

まだ言ってやがる

2010-06-22 00:47:32 | 福岡伸一
たまたま見つけてしまいました。以下は引用と軽い突っ込み。

「動的平衡」発想のもとはチョウの飼育~福岡伸一さん編(2)

(引用はじめ)
本当のチョウは非常に自分の食べるものを禁欲的にかたくなに守っていて、アゲハチョウの中でも、ナミアゲハだったらミカンとかカラタチとかサンショウしか食べないし、キアゲハだったらパセリとかニンジンしか食べないし、アオスジアゲハだったらクスノキしか食べない。どんなにおなかがすいているはずでも、ナミアゲハやアオスジアゲハにパセリを与えても食べないで死んでしまう。私がチョウの飼育を通して最初に学んだのは、生物の食性に関する厳しさというものでした」

 福岡さんは笑顔を絶やさずに話を続ける。「食べ物を限定するということは、ある限られた資源をめぐって、ほかの種と無益な争いを起こさないように棲み分けているということです。昆虫少年だった私は知らず知らずにそれらを目の当たりにして、いつしか動的平衡という考えを持つに至るきっかけになったと思うのです
(引用終わり)

食われる側である植物の防衛戦略についての考察がまるでないんですが・・・・・・。カラタチやサンショウが刺を発達させているのはどうしてですか?あと、クスノキって昔は防虫剤の原料でしたよね。こういう初歩的なことを指摘してくれる人が周りにいないんでしょうか?
ついでにニッチについても。

生物はみな優劣なく循環する~福岡伸一さん編(4

(引用はじめ)
福岡ハカセがいうニッチとは凹(くぼ)みをイメージしたもので、生物が凹みにうまくはまって、棲み分けていることを指している。
(引用終わり)

結局今西の呪縛から逃れる気がないのかなぁ。たぶん外来生物問題とかの個別事例に詳しくないからこういうことが言えるんだろうなぁ。

保全についても言っています。こちらはそれなりに重要かつおもしろい。

(引用はじめ)
「ある種が消え、ある種が出てくるというのはある意味では生命進化の必然なので、絶滅しそうな種をどうしても救わなければならない、というふうには私は思わないんですよ。それが必要な局面はもちろんあると思いますけれども、それだけが生物多様性の保全ということにはならない。要は、絶滅危惧種をとにかく救わなければならないということばかりに目を奪われると、生物多様性の本当の大切さを見失ってしまう。微生物だって、トキだって、アオスジアゲハだって、パンダだって、地球上の物質循環のプレーヤーとして活動しているという意味では優劣はない。種としてみれば、等価と言えるでしょう」。
(引用終わり)

まあ分類学的には等価値ともいえるかもしれませんね。ただ、プレイヤーにも上手い下手があるように生態系にもキーストーン種というものがいまして。そのキーストーン種が消えると雪崩をうったように生態系が崩壊するんで保全ではキーストーン種の発見と保全が優先されますね。安直に等価というのはそういう生態系内での役割を無視することになるのであまりいいとは言えませんね。そこらへんの視点が欠けているのが残念。大筋はいいんですけどね。
このシリーズを読んでみて安易な発言が多いと感じました。入門書を2,3冊読んでくれればこうならないと思いますが、どうしてこうなった。
この人は素で間違えているのか自論のためにわざと間違えているのかいまいちまだわからないですね。

福岡伸一の幻想を破壊してみた

2010-02-19 21:26:19 | 福岡伸一
 独特の見解で生物多様性について語る福岡氏は生き物の関係についても非常に独特(悪く言えば過去の遺物)な見方をします。たとえば新聞記事でこのようなことを言っています。

>福岡:私は子供のころから昆虫が好きで、チョウを自分の手で育てていました。そのころに気づいたことがあります.例えば、アゲハチョウの幼虫は、ミカンやサンショウの葉しか食べません。一方、アゲハチョウにたいへん近い種のキアゲハの幼虫は、パセリやニンジンの葉しか食べません.いずれも、どんなにおなかがすいても、決められた食べ物以外は決して食べないのです。
このように、あらゆる生物は自分が食べる食べ物の種類を厳しく限定しています.これは生物が生存する場所、あるいは発する声の周波数にも当てはまります。ほかの種の領域を侵さないように自分の分際を守る。そして、ほかの種との無益な争いを避ける。それが生物多様性を支える厳格な基本原理です。

ナショナルジオグラフィックでもこのように話しています。

>生物というのは自分の食べ物を非常に限定しています。しかし、栄養素としてみれば、アゲハチョウの幼虫はミカンの葉でないとダメなことは何もないのです。どんな植物であっても食べて消化すれば、たんぱく質、アミノ酸、脂質、そしてビタミンはそれらから摂取できるわけです。しかしアゲハチョウはどんなにお腹が空いていてもキアゲハが食べるパセリを食べない。幼虫はみかんの葉が無ければ餓死して死んでしまいます。

この蝶と食草の関係は福岡氏のお気にいりなようですね。じゃ、この幻想破壊してみよっか。
まず、基本的な事実から述べますと、植物は食べられることを防ぐために葉や根にアルカロイド系などの毒物を持っています。わかりやすい例でいえばトリカブトが代表例ですし、身近なところではジャガイモがソラニンという物質を含んでいます。葉や根を食べられるのは成長や生死にかかわりますから、よほどのメリットでもない限りそういうことは植物としては避けたいわけです。そのために棘や各種毒物で自衛します。
 これは蝶と食草の関係についてもあてはまります。植物側は葉を食べられたら生きていけないので葉に毒物を持って葉を食べるやつらを排除しようとします。それに対し食べる側の蝶もその毒物を解毒するような酵素を進化させて対応します。そして植物もさらに防御を多様化、強化して、それに応じて蝶も対抗していって・・・という流れになります。これを「軍拡競争」といいます。この結果、蝶は自分の食草しか食べられないスペシャリストになりました。
このように蝶の場合は特定の解毒に特化したが故に汎用性を持っていません。自分の食草以外のものは植物の毒によって食べられない。無理に食べたら最悪死にます。たとえ死ななくても成長が阻害されたりしますので、同種内での競争に勝って子孫を残すのに不利です。

福岡氏の場合は栄養だけに着目して植物の防御戦略についてまったく考察していません。だから、ああいう分を守っているとか素人丸出しのことが言えるわけです。進化は慈善事業じゃないですよ?

追記2/20 ここではあたかも目的を持って進化したかのように書いていますが、実際の進化は無目的で計画性のないものです。

福岡伸一に侵略される生物多様性

2010-02-09 23:23:50 | 福岡伸一
 今回は福岡伸一が関わっている生物多様性に関する事柄を調べてみました。まったく、福岡伸一が変なこと言わなきゃあ料理とか別の記事が書けるのに……。

生物多様性 日本アワード 審査委員会委員名簿

岩槻 邦男

福岡 伸一

全く対照的な二人が委員に入っているのを見てビックリ。
岩槻氏は兵庫県立人と自然の博物館の館長であり、文化功労者として顕彰されたこともあるくらいのまっとうかつ一流の専門家です。そんな方が委員として入っているくらいですからおそらく真面目なものと思いたいんですが……なんで福岡氏までいるの?あからさまにいらないでしょう。まともな人選してくれよ……。

「地球いきもの応援団」メンバー

個人的にヤバそうなのをピックアップ。

養老孟司 (生物学者/東京大学名誉教授)

茂木健一郎 (東京工業大学大学院連携教授)

福岡伸一(生物学者)

曲者がそろってますなぁ。生物多様性に関しては池田清彦の劣化コピーの養老に茂木までいますか。完璧に放っておいたら生物多様性が食いものにされますねこりゃ。
この侵略的外来生物を早くなんとかしないと。

これはアクセサリーとしか思ってないかな

2010-02-08 21:19:48 | 福岡伸一
 週刊文春に連載されている「福岡ハカセのパラレルターンパラドクス・生物多様性の真の意味」を読んでみました。感想としては意外にまともでした。生物多様性がどうして人間に必要かという部分の説明は割とオーソドックスなものに沿っていました。ただ「動的平衡」を何度も持ち出してくるのには辟易しましたが。これや前の新聞記事を読んだ感じではこの人は生物多様性に対する社会的関心を高めるというより生物多様性を「動的平衡」のアクセサリーにする方に関心があるかなと。生物多様性を「動的平衡」で説明できるとすることにより「動的平衡」の箔付けに使ってますね。「地球いきもの応援団」は生物多様性の社会的関心を高めるため作られたと言いますが、このような人がいることを考えると実態はくさいですかね。案外、放鳥されたトキの餌やりをすべきとか素で言いそうな気もします。
僕の方針としては今回はシリーズ化する予定はないです。これが相当やばかったらやるつもりでしたが思いのほかまともでしたので。ただ、この人が生物多様性に関して正確な情報を伝えることより自説を広めることを優先しているのは確かなようなので動向はチェックしてある程度たまったらシリーズ化して批判するかもしれません。

福岡伸一がまるで生物多様性を理解していないことについて

2010-02-06 21:05:30 | 福岡伸一
前回で終わりにしたかったけど、前回のやつは若干、生物多様性や進化生物学の知識が事前にないとどこがおかしいかわからないかもしれません。今回は、少しそこらへんを解説しながら福岡氏がいかに生物多様性を理解していないかについて明らかにしていきたいと思います。
まず、生物多様性とは何か一般的な教科書でよくつかわれる定義を引用します。

>生物多様性は、種多様性だけでなく、種内の遺伝的な多様性、生物群集や生態系の多様性、ひいては、それよりも高次のシステムで、人間の活動と自然の合作ともいうべき景観の多様性をも含む広い概念である。
保全生態学入門P17より引用

>人によって多少意見や表現が異なるが、生物の多様性は種、遺伝子、生態系の3つのレヴェルで考えることができる。
保全生物学P7より引用

>生物多様性とは、生態系、種、種内の集団の多様性、種内の遺伝的多様性を含む概念である。
保全遺伝学入門P20より引用

生態系の多様性とは川や海、森といった生態系のバリエーションのことです。種の多様性とはどれだけその地域に在来種が生息しているかということで、遺伝的多様性は種ないし個体群内での遺伝子のパターンのバリエーションのことです。ここでちょっと気をつけてほしいのは、多様性が低い=劣っているというわけでは必ずしもないことです。例えば種数が20の森と30の川を比べても、どちらも固有の要素(種、生態系としての役割等)をもっているのでどちらが優れているとは一概に言えません。また、遺伝子の多様性が種分化を促し種の多様性の原動力となるように多様性はそれぞれ関連性をもっているのでどれを軽視していいというものでもありません。

ネット上にあるものもいくつか紹介します。
Wiki 「生物多様性」
EICネット 
ここで重要なのはどこで紹介されているものでも生態系、種、遺伝子はどれもきちんと生物多様性として扱われていることです。この時点で福岡氏の言う

>福岡:生物学でいう多様性は、大きく2つに分けられます。1つの種の中にさまざまな個性があるという意味での多様性と、種そのものの多様性です。最近語られることの多い「生物多様性」は、後者を指しています

は遺伝子と種の多様性しか紹介していないうえに勝手に生物多様性=種の多様性としており、生物多様性の説明としてはだれがどう見たっておかしいことがわかります。たしかに種の多様性は注目されやすいですが、それは他を無視していいという裏付けにはなりません。いったいどんな生物学ですか。この時点で大学生よりよほど理解度が低いです(へたすりゃ中高校生以下)。生物多様性関係の入門書すら読んでいない気がするのは気のせいでしょうか。
ここから余談になりますが、一つ疑問なんですが体内の働きだろうと生物多様性だろうとなんでもかんでも「動的平衡」で締めくくりますけど、科学の用語としてみた場合ここまで守備範囲が広いっておかしくないですか?たとえるならピッチャー一人で野球をやるようなもの。現実にそんな万能ピッチャーはいませんが。
この世界はそんな言葉一つで説明できるほどこの人にとっては単純なんでしょうな。機械論より味気ない気がするのは僕だけでしょうか。

ちょっと見過ごせない 福岡伸一が生物多様性について語っていること

2010-02-04 20:39:36 | 福岡伸一
 福岡伸一が生物多様性関係で動いているという情報があったので少し検索していたらこのような記事が引っかかりました。正直、ここまでひどいとは思いませんでした。池田清彦の方がまだましじゃねえかと思えるくらい。

生物界で多様性が保たれている理由とは

>福岡:生物学でいう多様性は、大きく2つに分けられます。1つの種の中にさまざまな個性があるという意味での多様性と、種そのものの多様性です。最近語られることの多い「生物多様性」は、後者を指しています。

いやいや、違いますから。なんで勝手に二極化させたうえに片方を無視してるんですか?生物多様性は生態系、種、遺伝子の大きく分けて3つって、この分野を勉強するなら誰もが一番最初に習いますよ。この時点で生物多様性についてなにもわかってないじゃないですか。

ほかにも相変わらず今西進化論を持ち出してきています。今西に操を立てる義務でもあるのかこの人。

>あらゆる生物は自分が食べる食べ物の種類を厳しく限定しています.これは生物が生存する場所、あるいは発する声の周波数にも当てはまります。ほかの種の領域を侵さないように自分の分際を守る。そして、ほかの種との無益な争いを避ける。それが生物多様性を支える厳格な基本原理です。

べつに限定してないっすよ福岡先生。本当に限定されてるならシカの食害とか起こらないでしょ。スペシャリストとジェネラリストをいっしょくたにしているとしか思えません。生態学の初歩の知識すらないんじゃないですかこの人。

>では、なぜそれほど厳しく生物多様性は保たれているのか。それは、地球全体の「動的平衡」が崩れるのを防ぐためです。動的平衡とは、すべての物質が絶え間なく循環しながら、なお全体のバランスが保たれている状態を意味します.

え?それって物質循環じゃないの?

追記2/4 タイトルを書き足しました。