ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

早めに読みたい本二冊

2009-04-30 22:26:54 | 書籍
 最近は地球温暖化に関連した本を読むことがあります。その中で懐疑論系の本に出くわすこともあります。
「温暖化のウソと真実」千代島 雅
この本を知ったのは進化生物学、保全生態学系の専門誌「生物科学」にこの本が好意的に紹介されていたからです。
著者の経歴を調べてみましたが、この著者だいじょうぶなのか・・・?なんかよくいるわかったつもりの人っぽい。
 もう一冊は生物多様性関係の本です。
「自然との共生」というウソ 高橋 敬一
ぱらっとページをめくってみた限りでは池田氏の劣化コピーといった印象。ですが目次を見る限りではレッドデータからキーストーン種、外来生物まで幅広く批判しているようです。批判対象が池田氏より広い。外から入ってきたらすべて外来生物というご仁がどこまで正確に批判できているかお手並み拝見。早めに手に入れて読む予定です。

今西氏の認識がそこら辺の反進化論者と変わらないことについて2

2009-04-28 22:12:50 | 進化生物学
 今西氏の進化論への認識はよくある誤解に満ちています。

P53>生物はしだいに体制のととのわないものから体制のととのったものへとむかって変化してきたという進化論を打ちたてるときに、ダーウィンはその進化論の骨ぐみとして、生存闘争という考えをとり入れたのであります。そうしますと、しょっちゅうなんか新しいものが出て来て古いものをほろぼしてゆくことになる。

そもそもダーウィンがいつ体制のととのわないものからととのったものへと変化するなんて言いましたっけ?次第に高度になるとか言うならそれはむしろラマルクだと思いますが。ダーウィニズムの解説としては0点でしょうね。

P69>そもそも進化というものには、必ずしも適応だけでは説明できない面がある。たとえば過適応というものがある。適応のゆきすぎですね。さきほど進化は後戻りしないということを申しましたが、それと関係があるのです。たとえば、シカの角、シカの雄には立派な角がありますね。雌にも角のある種類もあるが、だいたい角は雄に特有のものでニホンジカなどは非常に立派な角を持っておりますね。ところであれは別に武器として役に立つものではない。武器としてなら一本角で枝分かれしておらん方が役にたつだろうから、あれは適応ではちょっと説明できない。
正直、こんな人が日本でも著名な生物学者とは信じがたいです。ダーウィンについて語るならここで性淘汰にふれてもいいはずですが、この後の文章でも性淘汰にはふれないままでした。
また、
>別に武器として役に立つものではない。武器としてなら一本角で枝分かれしておらん方が役にたつだろうから
というのもよくわかりません。そもそもニホンジカは繁殖期の争いで角を使って争っているし、単に相手を傷つけるだけが武器というわけでもないでしょう。たとえば人の武器にもソードブレイカーマインゴーシュといった防御も視野に入れた武器があります。人の武器がいろいろあるように生物の武器もいろいろあり一つではないという考えをどうして今西氏が持たなかったのかわかりません。
もちろんシカの角が繁殖期に使われるという事実を今西氏が知らないはずはないでしょうから、文章から推測すると今西氏は外敵から身を守るという目的でなければ角を武器として認めないのでしょうね。

ここには書きませんでしたが、僕には今西氏のいう“家族”と“群れ”の違いもよくわかりませんでした。今西氏は“群れ”というものを社会を作り非血縁個体からなるものと想定しているようですが、たとえばゾウの群れなんかは母系社会でほぼ家族単位で群れを構成しています。ゾウはお互いを認識し、今西氏の言うところの社会を作っていると思うんですけどね。

今西氏の認識がそこら辺の反進化論者と変わらないことについて

2009-04-27 21:54:36 | 進化生物学
 まず有言不実行をお詫びします。今西氏の「私の進化論」を読んでいましたが、途中で挫折しました。理由は本の中の今西氏の進化論に対する記述があまりにも稚拙で読むに堪えなかったからです。以下、「私の進化論」での今西氏の進化論に対する記述とそれに対する突っ込みを入れていきます。

P14~15>ところがさきほど私がいいましたのは、個体というものには甲乙がないというという立場です。甲乙がないようにつくってあるということはどういうことかといいますと、これはダ-ウィンの説明と反対でありまして、どのウサギがオオカミに食われても、そしてどのウサギが残っても、甲乙がなければ種としては次の時代にも同じように甲乙のないウサギをつくっていくことができる。要するに食われるウサギというのは運の悪いウサギであって、逃げたウサギは運がよかったにすぎない。ダーウィン流に適者生存で、ウサギの耳が長くなり、足が速くなって、今日ではもうウサギがオオカミに食われぬようになっているかといえば、依然としてやはりウサギはオオカミに食われている。長い目で見たらなにも適者生存になってやしないではないか、こういうことがいえるのであります。

はっきり言います。この人ただのどこにでもいるアホですよ。相互に適応していくという視点がないからウサギの例で反証したつもりでいられる。なぜオオカミもまたウサギを捕まえられないものは淘汰されウサギを捕まえられるものの子孫が今生き残っているという思考がはたらかないのでしょうか。
こんなのはネット上に一山いくらでいる反進化論者と理解のレベルでほぼ同じです。



現在「私の進化論」を読んでいるわけですが・・・・・・

2009-04-22 23:02:05 | Weblog
 図書館で今西氏の本をいくつか見つけたので、それを読んでいます。が、しかし・・・・・・正直読むのがきついです。きちんとしたものは読み終えてから書くつもりですが、これは読むのがしんどい。最初の十数ページであんな発言が出てくるとはね・・・・・・。あのレベルの認識の人の書いたものをあと数冊よむのはできるならやりたくない。とりあえず、今読んでいる「私の進化論」だけは読破しようと思います。

はてブに返答

2009-04-20 22:40:37 | Weblog
 前回の記事では思いもかけず多くの人に読んでいただきました(池田のグローバルネタを超えて過去最高だった)。なかでもはてブから多くのコメントをいただいたので、その一部に返答します。

nabeso さん
>輪状種は非常にわかりやすい例だけど、雑種問題は今西はもちろんダーウィンだって全然考慮していない話なんだよねぇ。
そもそもダーウィンの時代には輪状種という概念すらなかったはずですが。ないものをどうやって考慮しろと?

pollyanna さん
>これに「新」がついたやつときたらもう。
あれにはとてもじゃないけどついていけませんよね。わからない人のためにまとめサイトのリンクを貼っておきます。

今西進化論とかいうもの

2009-04-18 20:59:28 | 進化生物学
 世間で有名な(どちらかというとトンデモと判断されやすい)生物学者の中には、今西進化論という進化論の影響を受けている人たちがいます。このブログでたびたび批判する池田清彦や最近の有名どころでは福岡伸一がいます。福岡氏と今西進化論の関係についてはa-geminiさんのところに詳しく書かれています。

福岡伸一と今西錦司(1)
福岡伸一と今西錦司(2)
福岡伸一と今西錦司(3)

では、彼らが影響を受けた今西進化論とはどういったものなのでしょうか。
簡単に言うと、種全体が変わるべき時が来たら一斉に変化するというのが今西進化論の主張です。この“変わるべき時”というのが難物なのですがそれは置いといて僕が疑問に思うことを今西進化論に好意的なサイトからいくつか引用します。
>そして、種という構造です。種と個体は同時にでき、同一のものとします。個体はもちろん、個体差というものがあるが、種というレベルで考えるとどの個体にも差違はないのです。

水系レベルで違いのある淡水魚類の勉強をしていると、とてもこんなことは言えませんね。今西氏は同種の地域ごとの差には目を向けなかったのでしょうか。

>どれもが同じ個体であり、どれが残り、どれが生殖にいたらないうちに死んでも、種にとっては影響はない。

絶滅危惧種を例にするなら、年老いて繁殖できない個体が死ぬのと繁殖可能な個体が死ぬのではその種の存続に大きく影響しますね。とくにワシタカ類のように一度に産む子の数が少なく、子が性成熟するまでに長い時間を要する種では繁殖可能な個体が死ぬことの影響は大きいのですよ。

>今西は自説を、棲みわけの密度化による進化論と説明します。その核になる理論は、元一つという、変わりながら変わらない実体、弁証法的に運動しつつ、変化しないものを想定していることです(ある種の進化・出現によって(正)、まずその種が自身による環境変化の影響を受け、またその周囲の種にとっての環境も変化します(反)。そして、共存(棲みわけ)か競争か、いずれにしてもそれを調整する運動がおこるのです(合))。

まあ、弁証法だなんだかんだ言う前に輪状種について何ら答えない時点で終わってますね。輪状種とは、連続的に分布していながらも分布の端の個体同士では交配できない種のことなどを指します。輪状種はお互いに近接した個体群とは交配できるのですが、分布の端と端など極端に離れている場合は交配できません。この事例は種が黒から白へ徐々に変わっていくテープのようにグラデーションを持つことを意味します。
ここで輪状種の存在と今西進化論の主張を比べてみましょう。今西進化論では種は変わるべき時に一斉に変わる、つまりグラデーションはあり得ないはずなんですね。しかし、輪状種の発見例というのは確かに存在します。ここでは、ムシクイという鳥とシャクガを例にあげておきます。
Highlights: 輪になって変わろう
異時的隔離がもたらす時間的輪状種
輪状種が発見された正確な年代がわからなかったので今西氏が輪状種の存在について知っていたのかはわかりませんが、今西進化論の支持者は輪状種について何も言わないというのはおかしなことではないでしょうか。このような態度はニセ科学と通づるところがあります。
 今回参考にしたサイトには今西自然学の効用(環境保全の視点から)というのがありますが、少なくとも繁殖可能な個体であるか否かを無視している時点で使えないヘボ学問ですね。生態学のつもりというなら“有効個体”くらいおさえておくべきでしょうに。

結論
 現実の自然現象とかい離したままの論理などゴミくず以下。寝言は寝てから言いましょう。反証に答えないのはニセ科学への一歩では?

わけのわからん人たち1

2009-04-15 23:55:25 | 熊森
 たまに熊森関連のブログも見るのですが、最近のミツバチ騒動に対する彼らの反応はわけがわからないものがあります。
ミツバチ大量死と人類の危機

>ここ数日、新聞やテレビのニュースで、「消えたミツバチ」や「ミツバチの謎の大量死」が大きな話題になっています。
「やはり」、と思っています。
この件に関して、私は20年前から警告を続けてきました。
私のように、名はないけれども、実践論者の言うことを無視し続けると、このようなことになるのです。(ノ`Д´)ノ
この問題の解決は、即刻、奥山を自然の森に戻すしか方法はありません。
私たちの山でも、ニホンミツバチが激減しているので、大変心配をしているところでした。

え~と、最近話題になっているミツバチ問題というのはセイヨウミツバチの不足によるものですよね。奥山のニホンミツバチが減少してるとして、セイヨウミツバチの不足といったいどういった関係があるのでしょう?
ぶっちゃけ、次の記事はさらにわかりません。
ニホンミツバチと「植えない森づくり」キャンペーン

>受粉に大切なスズメバチ

スズメバチが受粉に大切って根拠はどこですか?スズメバチは基本的に肉食性で、花粉を集めたりということはしないはずですが。ネットで調べたら花の蜜もなめるらしいとはありましたが、同時に花に集まる虫を捕ってもいるようです。つまり、ほかにも受粉をやる昆虫がいるのにどうしてスズメバチが受粉に大切といえるのでしょうか?リンク先には根拠が述べられていませんのでまったくわかりません。

>ミツバチの大量死をダニや伝染病のせいにしていますが、人間と同じで、免疫の強いものは伝染病にやられることなく、ひっそりと生き延びているはずです

セイヨウミツバチは家畜みたいなもんで、その遺伝的多様性が低いがゆえにダニや病気にやられやすいんですけどね。仮に生き残るのが出たとしても受粉に十分な個体数を確保できなければ農家にとって意味がないですけど。

>ニホンミツバチを増やすことが最重要課題です。

今現在、話題にされているのは農作物に受粉させるためのハチが足りないことですよね。奥山のニホンミツバチが都市近郊の人間の畑やハウスに来るのを気長に待てとでもいうつもりでしょうか。
まさか、わざわざ受粉のために奥山に畑を作れとでも?それこそ奥山の破壊になるでしょうに。次元のちがう問題をいっしょくたに扱ってませんか?

オーストラリアとキンギョの話

2009-04-12 22:45:58 | 外来生物
 皆さんの身近にいる魚はなんですか?フィールドに出かける人にはそのフィールドに生息する魚かもしれません。では、一般の人にもおなじみの魚はなんでしょうか?それは、キンギョではないでしょうか。キンギョといえば、夏の風物詩。縁日の屋台でキンギョすくいをしたひとも多いと思います。今日はそんな身近な生き物と日本から遠く離れたオーストラリアの話です。
 オーストラリアにキンギョが持ち込まれたのは1876年のことです。そこから瞬く間に広がり、いまではタスマニアにまで分布しています。オーストラリアでは、キンギョは食用にもスポーツフィッシングにも利用されていません。これが各地で広まってしまった一因です。
 現地でのキンギョの生態ですが、えさはトビケラ、カゲロウなどの水生昆虫や植物、デトリタスです。基本的にフナとあまり変わりません。外見的にも、ワキンがさらにくすんだ色合いでフナに近いです。生後約1年で成熟し、10月から一月後半までの水温が15℃を超えている間に繁殖します。卵は水生植物や岩に産みつけられ、5日~7日でふ化します。稚魚が成長する速度は、ほかの魚より早く、これが生存競争に有利に働いていると思われます。天敵もあまりいないのか、10歳ほどと思われる個体が確認された例もあるそうです。
 このように、キンギョはオーストラリアを新天地としましたが、その陰にはキンギョに敗れて消えていった在来種もいることでしょう。日本でも、フナとの交雑が危険視されています。縁日ですくったキンギョは死ぬまで飼うつもりで飼いましょう。
参考文献
AUSTRALIAN FRESHUWATER FISHES
(和訳すると「オーストラリアの淡水魚」かな?)

変わらないサンプル

2009-04-09 23:33:38 | 外来生物
 先日の続きです。オオクチバスの特定外来生物指定時にバサーを扇動したバスプロのHPを久々にのぞきました。
その575 いわれなき駆除
・・・・・・数年前とまったく変わらないですね。というより堂々と事実から目を背ける分には図太くなったと評価してもいいのかもしれません。

>釣り場の清掃活動を通じて、世の中の仕組みや裏表が良く判った。
第二次大戦前に入ってきた外来種を悪く言う理由も、
国内移植なら何も言わないって事実も、
あれこれの悪だくみが蠢いていることも。

国内の移植がノータッチってことはないんですけどね。まさか渓流魚の移植問題や魚類学会の放流のガイドラインを知らないわけではないでしょうに。

>それでね、先日の新聞だったよ、確か。
国内移植種についてもいろいろ書かれていたんだよ。
外来種のコイやヘラブナ……園芸用のスイレンなども
駆除対象として溜め池のかい掘りを行った。
なんてぇことが書かれていたんだねぇ。

思いっきり、ご自身がすぐ前に言ったことが覆されてるわけですが。ネタのつもりなの?それとも3歩歩けば忘れるヒヨコなの?

>それに溜め池の生態系……なんてぇ尤もらしいことを仰るけれど、
溜め池てぇのは本来、人間作った水溜りだろっ。
農業とか飲料用に作った池なんだよ。
そんな人工的な構造物にもかかわらず、
生態系の名の元に棲息している生き物を駆除するなんてぇことは、
人としての道理にそぐわないことだよなぁ。

たとえ人工的に作られたからといってホイホイと外来生物を放りこんでいい道理もないよね。論理のすり替えや詭弁だけはこの数年でうまくなったね。やっぱり池田先生の本を読んで勉強したからかな?

Bassingかわら板も今は昔

2009-04-06 23:20:08 | 外来生物
 この前、ひさしぶりにBassingかわら板というサイトにアクセスしました。琵琶湖周辺の情報の収集、公開を主としたサイトで、バス問題では駆除賛成側にひたすらいやみを言う過激なサイトでした。それが、この前どういうことかアクセス不能になっていました。5年前からバス問題に首を突っ込んできた身からするとさびしい限りです。
 一時期は盛んだったバス擁護派の主だったサイトも最近は沈黙が目立ちます。
BASS FUN NETなんて加入者が2万人を超えたというのに2007年から全く更新なし。もともと外来生物法のパブコメの玉稼ぎ専用でしたからいつかネタ切れになるのはわかってましたけど、加入してくれた人たちに何か言うことがあるんじゃないですか?あのくだらない馬鹿騒ぎに付き合わされた人、付き合わせた業界人たちは今なにをしているんですかねえ。