ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

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不満

2009-03-30 22:21:23 | Weblog
 すいません。まだ“「子猫殺し」を語る”を読み終えていませんので、これの書評は後回しにさせていただきます。
 それとは別に最近、不満に思うことがあります。それは来年に名古屋で開催される生物多様性条約COP10 についてマスコミがほとんど取り上げないことです。一応、京都議定書と同じくらい重要で、国の政策などにも関わってくるんですが。エコだなんだというくせに国際的な動向は無視ですか?
トキは取り上げるくせになぜもう一歩踏み込んだ報道はしないんでしょうか。温暖化で絶滅が騒がれるシロクマや動物園の人気者であるパンダやコアラとも関わりがあるんですよ?
ほとんどものを調べない池田清彦すら開催されることは知っているというのに・・・
この手の話は地味なのかあまり報道してもらえませんね。公式サイトがあるのでこちらに貼っておきます。

ついでにこのエントリについて
地下猫さん怖すぎw)的外れなことを言って遁走に始終している人も哀愁がそこはかとなく漂いますが(笑)
批判しておいて具体例を出せないってそれはもう批判じゃないって。ただの難癖ですよ。

最近読んだ本

2009-03-27 20:17:25 | 書籍
 最近読んだ本についての感想をつらつらと。
「タンパク質の一生」永田和宏著 
かなりとっつきやすく、面白かった本。細胞で作られるタンパク質の誕生から消滅までが人間の一生になぞらえて説明されています。このタンパク質の一生でカギになるのが分子シャペロンというタンパク質。シャペロンとは介添え役を意味するフランス語です。遺伝子からアミノ酸の情報が読み取られて配列が決まっても、きちんと折りたたまれて3次元の「構造」が作られないとタンパク質は正しく機能してくれません。この折りたたまれるとき分子シャペロンがミスを修正することで、正しく機能するタンパク質が作られます。第6章ではBSEやアルツハイマーなどの治療に関して分子シャペロンを使ったアプローチの記述があります。
 全体的な感想としては、これをパワーポイントで編集しなおせば大学の授業で使えるのではないかと思えるほど出来がいいです。タンパク質が細胞内でどうふるまっていくかがインフラなどになぞらえて説明されているのは著者のセンスを感じました。教えていただいたa-geminiさんに感謝。
「子猫殺し」を語る 坂東眞砂子
今のところ半分くらいまで読みました。二部構成で、一部はこれまでのエッセイをまとめたもの、二部は3人のひとと対談という形式です。エッセイのなかで坂東氏が猫の去勢をしないのは猫にセックスから産むまでの喜びを感じてほしいからだと述べています。でもそこに至る論理構成がかなり甘めな気がします。
坂東氏や対談する人たちが核廃絶から動物愛護までかなり多方面にわたって私見を述べています。なんちゅうか地雷原に突っ込んでいる予感。対談の内容にしてもメタばかりで具体例に踏み込まなかったり、どっちもどっちを繰り返し言っています。
本格的な書評は日曜あたりにでもやります。

外来生物による繁殖機会の不平等

2009-03-25 21:39:31 | 遺伝的多様性
 交雑するほど近縁な外来生物が侵入した場合、在来生物と外来生物のあいだに繁殖をめぐる競争が起きることがあります。その結果、次世代に受け継がれる遺伝子に偏りが生じることがあります。これは、在来の遺伝子が消える場合もあり、遺伝的多様性が失われることを意味します。
 たとえば、絶滅危惧種シナイモツゴとモツゴのあいだでは、シナイモツゴのメスとモツゴのオスはよく交雑するのに対し、シナイモツゴのオスとモツゴのメスでは交雑がほとんど起こりません。さらに、シナイモツゴとモツゴのオスでは、モツゴの方が配偶者を獲得しやすいようです。これは、シナイモツゴのオスには遺伝子を残す機会が少ないことを意味します。遺伝子を残す機会が少ないということは、シナイモツゴのオスが持つ遺伝子は消滅しやすいということです。ですから、モツゴがシナイモツゴの生息地に持ち込まれるということは、じょじょにシナイモツゴの集団が持っていた遺伝的多様性を減らしていくということになります。

交雑問題とはなにか

2009-03-22 18:26:48 | 遺伝的多様性
 遺伝的多様性という言葉をご存知でしょうか?生物多様性を構成する3つの多様性の1つであると理解されている方はいると思います。
 では、遺伝的多様性を守るためになぜ外来生物と在来生物の交雑は問題視されているのでしょうか?外来生物と近親交配を回避するために他所から近縁の個体をもってくることの間にはどういった違いがあるのでしょうか?これらの質問にしっかり答えられるひとはあまりいないと思います。だからこそ、池田清彦のいい加減な生物多様性論モドキに流されるひとがいるのでしょう。ここでは、上記の疑問にできるかぎり答えていこうと思います。事実誤認などに関するつっこみも歓迎。
 まず、このブログで扱う交雑問題とはなにかを定義しておきます。交雑問題とは、“外来生物と在来生物との交雑に関連して起きる生物多様性を低下させる現象”としておきます。では、そういった生物多様性を低下させる現象にはどういったものがあるのでしょうか。
僕の知る限りでは、このような現象が知られています。
・異系交配弱勢
・配偶者をめぐる競争
・外来の遺伝子による在来の遺伝子の駆逐
・不妊化
・遺伝子のバランスの破壊(ただし、こちらは理論のみ)
交雑問題のカテゴリーでは、こういった現象の具体例の紹介などをしていきます。これが、遺伝的多様性について考えるきっかけになればさいわいです。

外来生物問題を動物の活動として正当化するのは無理

2009-03-21 18:53:12 | 外来生物
 先日、外来生物問題についてちょっと変わったことを述べているブログがあったのでおじゃまさせてもらいました。
外来生物の持ち込みを動物の活動の1つとして考えられないでしょうか
このブログでは、外来生物問題を鳥が種を運ぶのになぞらえて生物の活動のひとつとして考えられないか、容認できないかと言っています。

>人間の行動により外来生物が持ち込まれても、動物の行動と同じで、仕方がないと考えることは出来ないでしょうか。

 結論から言うと無理。そもそも、外来生物問題とは人間によって引き起こされる環境問題のひとつです。つまり、人間が引き起こすという点では開発で生物の住処を奪ったり、乱獲で数を減らすのと変わりありません。仮に動物の行動だから仕方ないとの立場をとるなら、開発や乱獲で生物が絶滅しても仕方ないという立場をとらないとダブルスタンダードです。しかし、現実的にはこのように開発や乱獲も仕方ないという立場をとる人は相手にされないでしょうね。
それに、鳥を媒介に分布を広げる種だってどこまでも分布を広げられるわけではありません。山や海といった地理的要因がそうなることを阻んでいます。“本来なら越えられない障害を人間が越えさせてしまう”というのが外来生物問題のキモのひとつなんですけどね。

外来生物問題の基本

2009-03-17 20:39:43 | 外来生物
 ゆーにさんの所の「外来種?」が外来生物問題の基礎を学ぶ上で良質な記事となっているのでこちらでも紹介。
 この記事に書かれていることは、外来生物問題にある程度かかわってきた人なら大体は理解していることです。それでも、一般の方々にはあまりこういった“どんな外来生物が問題なのか?”という視点はあまり持たれていないようです。今回のユーにさんの記事は、外来生物問題の入門としていい要点整理(どういう外来生物を問題視するのか)となっていますので、ぜひ一読を。
 あと、ゆーにさんの記事を見返して思ったこと。スズメが外来種という人の根拠ってどこ?日本のスズメが人により持ち込まれたという文献でもあるんですか?

ダーウィン「種の起源」を読む

2009-03-15 10:58:08 | 書籍
 読んでよかったとひさびさに思った本。ダーウィンは進化論を語る上で欠かせない人なんですが、ダーウィンの著作は初心者が読むにはちとハードルが高いのです。一応僕も進化論を勉強してしているので十冊以上は進化論に関する本を読みきっていますが、いままでダーウィンの本はすべて読みきった、あるいは内容が頭に入ったということはありませんでした。リャードリーキーの新版・図説 種の起源ですら途中で挫折したくらいです。ですが、この本はそんな僕でも最後まで読むことができました。
 この本は、ダーウィンの種の起源を章にそって解説、補足、章の終わりごとにコラムがつくという形をとっています。補足には、ダーウィンの時代にはわからなかったこと、間違いの訂正などがあり、コラムにはルイセンコやカンブリア爆発、性淘汰や血縁淘汰について書かれています。巻末にはブックガイド付き。まさに初心者でもOKの至れり尽くせりの本です。
 この本を読んでいるといかにダーウィンが慧眼を持っていたかということがわかります。進化論の基本の全ては種の起源にあるといってもいいくらい。ぜひ買って手元に置いてもらいたい本です。
ダーウィン『種の起源』を読む

追記5/16 ルイセンコを間違えてた。何ってこったい。

一からの再導入より今あるものを大切に

2009-03-14 20:38:14 | 保全生態学
 今回は、再導入に関わるお金の話です。トキのようにすでに絶滅したものを再び再導入するにはお金が大量に必要です。一方、まだ野生で絶滅していない種の場合はそこまでお金がかかるということはないようです。ここではライチョウを例にしてトキと比較してみます。
 ライチョウは北半球北部に分布し、日本に棲むものは分布の南限に位置すると考えられています。日本のライチョウは主に北アルプスと南アルプスに生息しています。そして、これらの生息地に生息するライチョウは約3000羽と見積もられています。ヤンバルクイナが確か1000羽ほどですから単純計算でその3倍です。このように、数だけ見れば多そうにも見えるライチョウですが、実際は、生息地の分断、サルやシカの高山への進出、地球温暖化などで絶滅の危機にあります。レッドリストでは絶滅危惧II類、タンチョウと同じランクです。
 2005年にこうした状況を打開するため、ノルウェー産個体を使った繁殖ノウハウの確立、新たな施設、専門職員の雇用などを含め3200万円が必要という計画案が大町市に提出されました。しかし、大町市単独で予算を全額負担するだけのめどが立たず、国や県に資金援助を依頼したところ断られました(2006年3月の時点)。
 さて、ここでライチョウにかかるお金とトキにかかるお金を比較してみます。
ライチョウの保護ににかかるお金は中村 浩志 (著) 「雷鳥が語りかけるもの 」では3200万円、大町市ライチョウ保護事業計画策定委員会(ここの63ページ)では年間1000万円となっています。

>予算
飼育施設建設費および人件費を別と考え、飼育個体数や施設規模にもよるが、上記および以下に述べる飼育体制を整えるためには、年間1,000万円の経費は望まれる

 一方、トキの方は地球環境研究総合推進費をみると

>平成19年度実績(60,060千円)

となっています。ライチョウの約2倍ないしは6倍ですね。
トキでは1年だけで6006万円も使われてるのにライチョウのこの不遇っぷりはなんでしょう。トキにしてもそのすべてがトキだけに使われているわけではないでしょうが、やはり歴然とした差があります。1年にトキに使われるお金の2分の1でもライチョウに回せばライチョウは絶滅を回避できるかもしれないのです。
 このようにいったん絶滅した生物を再導入するよりも絶滅しかけている生物の保護の方がコストパフォーマンスでも優れているとは言えないでしょうか?トキの放鳥に喜ぶ人は絶滅から戻ってきた生き物のことだけでなく絶滅のがけっぷちにいる生き物のことにも思いをはせていただきたいです。

トキの放鳥におもう2

2009-03-12 19:40:58 | 保全生態学
 再導入というのは専門家の間でも意見がわかれる問題です。問題点のひとつは再導入を成功させるまでにかかるお金や人員。もうひとつは再導入に使う個体の出自です。再導入につかう個体がもともとその地域に生息していた種の系譜につらなる(その地域固有の遺伝子を持っている)場合はまだいいです。
しかし、トキの場合は中国産の個体を増やしているわけですから、日本のトキが持っていた固有の遺伝子を持っていないことは明白です。この場合、遺伝的多様性の保全の観点からトキを日本に持ち込むのは容認しづらいと考えられます。優先順位をつけるなら、外来の遺伝子より在来の遺伝子のほうがより保全すべき対象になるからです。これはブラックバスより日本産タナゴ類の保全に重きを置くようなものです。
 これに対して、トキの再導入に肯定的なひとは次のような利点をあげます。
・トキを旗頭として地域の自然再生につながる
実際、トキの再導入にかかわる本ではこれが利点としてよくあげられていますし、事実としてある程度はトキを旗頭とした自然再生は効果はありそうです。同じく再導入されたコウノトリでは、コウノトリを自然再生の旗頭にして休耕田を魚などが住みやすい環境に変えたり、無農薬、減農薬の米作りにもつながっていると聞きます。ですから、多くの生物が住みやすい環境を作るという目的においては、トキの再導入は手段のひとつとして有効だと思われます。
 ですが、再導入そのものの成功や外来生物問題という観点からは、いまの状況を素直に喜べないという気持ちが僕にはあります。外来生物問題の観点からは定義上トキもブラックバスも外来生物ですから、あまりトキを特別扱いするのはダブルスタンダードともとられかねません(これは僕自身がトキにあまり思い入れがないからかもしれません)。また、再導入として成功するのかという点でも懐疑的です。これまでに数々の再導入が行われましたが、そのうち保全生態学的に成功と呼べるのは十数件ほどと聞きます。再導入が成功とみなされるのは1000単位の数の個体群が複数個所に生息しているのが条件です。いまの日本にそれだけのトキを養える容量があるのかというのが僕がトキの再導入に懐疑的な理由のひとつです。

トキの放鳥におもう

2009-03-12 09:36:03 | 保全生態学
 最近のニュースでは、佐渡で放鳥したトキが本州に渡ってきたという話題でもちきりですね。トキをきっかけに自然のことに目を向けてくれる人が多くなるのは喜ばしいんですが、僕はこういった放鳥にたいして複雑な思いです。
 まず、トキの放鳥というのは、保全生態学では再導入と呼ばれるものにカテゴライズされます。再導入とは、野外で絶滅した種をもともと住んでいた地域に再び定着するように試みる行為のことです。具体的には別の生息地から絶滅した種を持ってくることなどです。トキの場合、日本ではすでに絶滅しており、現在のトキはすべて中国産のペアを繁殖させて増やしたものです。
 外来生物について詳しい人ならもうおわかりでしょうが、現在、日本にいるトキは外来生物です。なぜなら、中国から人の手を介して持ってきたペアの子孫だからです。ここで疑問が生じる人がいると思います。“同じ外来生物なのになぜブラックバスは駆除されてトキはそうならないのか”
この疑問にたいする答えとしては
・トキの放鳥は多くの(地域の)人に望まれている(釣り関係者くらいしかその存在を望まないバスとは違う)
・バスほど生態系に与える影響は少ないと思われる
・トキを旗頭として地域の自然再生につながる
といったものがあると思われます。
しかし、それを考慮しても僕はトキの再導入には懐疑的です。続きは今夜あたりにでも。