ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

また池田清彦か

2010-02-27 22:07:48 | 書籍
 池田清彦が進化生物学について新刊を出したみたいです。正確には連載の単行本化と言ったほうが良さそうですが。
「38億年 生物進化の旅」>地球に最初の生命が誕生して以来、生物に大きな進化が生起したあらゆる局面を、年代順に追跡。様々な現象を具体的に例示しながら、遺伝子の突然変異や自然選択や遺伝的浮動といったネオダーウィニズム的理屈では読み解けない、進化の仕組みの本質を説く。あなたにつながる長い道程を見通し良く辿る、明快で刺激的な進化史講座

うわ~期待できるなぁ(棒読み)。以下は独り言。
どうせいつも通りの用語の自己解釈とネタとしてDNAのメチル化が出るのではと思ったり。そして巻末に参考文献集は存在しないといういつものパターンじゃないかなぁ。詳しいことは読まないと何とも言えませんけどね。そもそもご自身はなんら成果を上げていない理論にいまだしがみつき、うける文章で一般人を籠絡するというある意味福岡伸一の先達ともいえる人ですね(本業だったら福岡のほうが業績上げてるのかな?そこは池田と違うかも)。
もうサイエンスライターでいいと思うけどねこの人。3月半ばくらいに何か書いてみようかな。ま、最近自分の進化生物学についての見識に自信がなくなってますけど……。

バルサの食卓

2010-02-26 20:35:46 | 料理
 「バルサの食卓」は僕の好きな作家である上橋菜穂子さんの著作に出てきた料理を再現してみたレシピ本です。
上橋さんの作品のうち「精霊の守り人」と「獣の奏者」はアニメ化しているので上橋さんを知っている人も多いのではないでしょうか?上橋作品の良さの中に出てくる食べ物が非常に美味そうに描写されていることがあります。すごく「あ、これ美味そう」と思わせてくれる書き方なんですね。個人的に食べ物を美味そうに書く作家は当たりだと思っています。上橋作品を読んでない人は読んでみるといいですよ。
以下にこの本に出てくる牛肉のあぶり焼きをすこしアレンジしたレシピを載せます。
材料 4人分
   牛肉(塊)500g
   塩、こしょう 適量
   ガーリックパウダー 適量
   サラダ油 適量
   パインジュース 適量
作り方
1.牛肉に塩、こしょう、ガーリックパウダーを振りひたひたのパインジュースに一晩漬けます。
2.汁気を切ってサラダ油をひいた熱したフライパンで肉の表面に焼き色をつけます。
3.焼き色がついたら250℃に温めたオーブンで約10分焼きます。
4.焼きあがりをアルミホイルに包んでしばらく置いておきます。
5.ポン酢、マスタードなどをつけてどうぞ。

パインジュースに漬けるのは上等な肉が買えないがための工夫です。100gで100円の肉でもパインジュースに漬けることでかなり柔らかくなりますのでお試しあれ。

ジャガイモと進化

2010-02-23 20:08:39 | 進化生物学
 愛知県の小学校でジャガイモにより食中毒が起きました。詳細はここに詳しく書かれています。原因はジャガイモが持つソラニンという物質によるもののようです。
ちょうどよいというのはいささか不謹慎だけど、今回はこれをネタに進化についてひとつ語ってみたいと思います。一応進化のことをよく知らない人向けですが、若干専門用語多めでわかりづらいかもしれません。ご容赦を。わかりにくいところがあったらコメント欄にどうぞ。
 ジャガイモにはソラニンという物質がありますが、この物質は今回の食中毒からもわかるようにジャガイモを食べるものに不快感を与え、外敵に食べられにくくなる働きをしています。では、この形質はどのように発生し広まったのでしょう。べつにジャガイモが食べられたくないから自発的に発達させたわけではありません。
正確に言うとジャガイモの祖先に遺伝子の変化(突然変異)が起こり、それがたまたま外敵に食べられることを防ぐのに有利かつその費用対効果が良かったために同種内で子孫を残すのに有利になり(適応度の上昇)その遺伝子が年月をかけてジャガイモの集団内に固定(集団内のすべての個体が同じ遺伝子を持つ)したために全てのジャガイモがソラニンを持つようになりました。一応これが進化生物学でのジャガイモに毒があるのかという説明です。まぁヒトはそれを克服すべく品種改良などで対応しているわけですが。

……はぁ、疲れた。知らない人向けになるべく正確に書こうとするだけでかなり言葉を選ぶことになろうとは。こういうことを言って怖がらせるつもりはないのですが、進化生物学は理解するのにちょっとハードル高いですね。
正直なところ農学系の大学生でも「赤の女王仮説」を知らなかったりするので。これにしたってホントは血縁淘汰まで持ち出すべきなんだけどこっちに書ききるだけの技量がないので断念しました。一般向けの啓蒙書を多数書いている長谷川先生がどれだけすごいがよくわかりました。

福岡伸一の幻想を破壊してみた

2010-02-19 21:26:19 | 福岡伸一
 独特の見解で生物多様性について語る福岡氏は生き物の関係についても非常に独特(悪く言えば過去の遺物)な見方をします。たとえば新聞記事でこのようなことを言っています。

>福岡:私は子供のころから昆虫が好きで、チョウを自分の手で育てていました。そのころに気づいたことがあります.例えば、アゲハチョウの幼虫は、ミカンやサンショウの葉しか食べません。一方、アゲハチョウにたいへん近い種のキアゲハの幼虫は、パセリやニンジンの葉しか食べません.いずれも、どんなにおなかがすいても、決められた食べ物以外は決して食べないのです。
このように、あらゆる生物は自分が食べる食べ物の種類を厳しく限定しています.これは生物が生存する場所、あるいは発する声の周波数にも当てはまります。ほかの種の領域を侵さないように自分の分際を守る。そして、ほかの種との無益な争いを避ける。それが生物多様性を支える厳格な基本原理です。

ナショナルジオグラフィックでもこのように話しています。

>生物というのは自分の食べ物を非常に限定しています。しかし、栄養素としてみれば、アゲハチョウの幼虫はミカンの葉でないとダメなことは何もないのです。どんな植物であっても食べて消化すれば、たんぱく質、アミノ酸、脂質、そしてビタミンはそれらから摂取できるわけです。しかしアゲハチョウはどんなにお腹が空いていてもキアゲハが食べるパセリを食べない。幼虫はみかんの葉が無ければ餓死して死んでしまいます。

この蝶と食草の関係は福岡氏のお気にいりなようですね。じゃ、この幻想破壊してみよっか。
まず、基本的な事実から述べますと、植物は食べられることを防ぐために葉や根にアルカロイド系などの毒物を持っています。わかりやすい例でいえばトリカブトが代表例ですし、身近なところではジャガイモがソラニンという物質を含んでいます。葉や根を食べられるのは成長や生死にかかわりますから、よほどのメリットでもない限りそういうことは植物としては避けたいわけです。そのために棘や各種毒物で自衛します。
 これは蝶と食草の関係についてもあてはまります。植物側は葉を食べられたら生きていけないので葉に毒物を持って葉を食べるやつらを排除しようとします。それに対し食べる側の蝶もその毒物を解毒するような酵素を進化させて対応します。そして植物もさらに防御を多様化、強化して、それに応じて蝶も対抗していって・・・という流れになります。これを「軍拡競争」といいます。この結果、蝶は自分の食草しか食べられないスペシャリストになりました。
このように蝶の場合は特定の解毒に特化したが故に汎用性を持っていません。自分の食草以外のものは植物の毒によって食べられない。無理に食べたら最悪死にます。たとえ死ななくても成長が阻害されたりしますので、同種内での競争に勝って子孫を残すのに不利です。

福岡氏の場合は栄養だけに着目して植物の防御戦略についてまったく考察していません。だから、ああいう分を守っているとか素人丸出しのことが言えるわけです。進化は慈善事業じゃないですよ?

追記2/20 ここではあたかも目的を持って進化したかのように書いていますが、実際の進化は無目的で計画性のないものです。

ほんとうの「食の安全」を考える 感想

2010-02-16 23:52:24 | 書籍
 なかなか面白く、リスクというものを考えるのに良い本でした。中西氏の「環境リスク学」よりもとっつきやすかったです。 
この本は少し前に読み終わっていたのですが福岡氏のトンデモ発言への対処に時間を取られてなかなか感想を書く時間がとれませんでした。
この本では食に関わるリスク、たとえば残留農薬や食品添加物についてどのような根拠、判断基準をもとにリスクを評価しているのかについて書かれた本です。
たとえば「一日許容摂取量(ADI)」というのはその量であればヒトが一生涯毎日摂取し続けてもとくに害はなく、通常より影響が大きいと思われる妊娠中のラットを用いて導き出した数値なのでかなり安全側に余裕を持たせたものであることが説明されています。また、この数値を越えたからといって即、致死などの重大なリスクに結びつくものでもない旨も説明されています。
ある程度安全側に余裕を取ってリスク判断をするというのは保全生態学の個体群保全に通ずるところがあります。
 本筋とそれますが、個人的に秀逸と思ったのがパブリックコメントの意義を短い文章でわかりやすく説明していることについてです。正直なところ、僕にはこの部分だけでも買って読むだけの価値がありました。パブリックコメントというのは、行政の出した案の見落としや不足した情報を付け足すというのが本来の目的です。つまりパブリックコメントを出すということは一定以上の見識が必要であり、数よりも質が重視されるものです。そこが理解できないと人気投票と勘違いしたバカが大挙して押し寄せて行政の手間を増やすだけになります。
生物多様性関係では、オオクチバスが特定外来生物に指定された際のパブリックコメントがバス釣り業界の作ったテンプレや議事録も読まずに反対する意見が多かったことは懐かしいです。あのときはこの本に書かれているダメなパブリックコメントの典型でした。あの時の駆除反対側はその行動が本当に効果があるのか検証することなく、ただ動いただけで満足してしまっただけでした。

COP10の写真展なのに外来生物の写真が入選していることについて

2010-02-15 22:01:57 | 外来生物
 今年の10月にCOP10が開かれる名古屋市ですが、そこで残念なことが起こりました。

北区の自然に親しもう 生物多様性フォトコンテスト優秀作品一覧
【入選】「日向の甲羅干し」

……なんでアカミミガメが写ってるのかな?
COP10にちなんでいるのに、外来生物の写真を入選させることはないでしょう。送った人は……まあ、しょうがないとしても、選んだ担当者の人はねぇ……。
国内外来生物ならともかく少し調べれば外来生物かつその影響か懸念されていることがわかるアカミミガメの写真を選ぶというのは残念すぎます。これが仮にアライグマやオオクチバスの写真であっても入選したのでしょうか?なんのためにCOP10やるのか考えてくださいよ。このほかにも外来生物の写真が多くてげんなりします……。本当にこういうイベントになると関係者のリテラシーが残念なことは多々あります。保全の情報を発信する側にも責任があるでしょうが、取り組むなら最低限の知識はつけてほしいと思います。
HPの下にメールフォームがありましたので、一応、おかしいという旨のメールはしておきました。メールをするかどうかはする人の自由ですが、テンプレばかり大量に来てもあちらの迷惑になるだけで生産的なことにならないことは言っておきます。

二だ~ん

2010-02-14 19:03:04 | Weblog
 今日、剣道の昇段審査に行き無事審査に合格しました。これで後は手続きをすれば剣道二段です。剣道を10年近くやって二段ですから決して早いわけではありませんが、それでも取れたことはうれしかったです。途中で着装が乱れているのに気づいたときは「こりゃ落ちたな……」とも思いましたが、なんとか合格しました。いつも教えていただいている先生方に感謝しないと。
ん?そういえば今日はチョコがあちこちで売ってたけど何の日だったっけ(・ω・)?

オオカミを放つ 読書メモ2

2010-02-12 18:49:56 | 書籍
 やっと読み終わりました。遅くなったのはいろいろと別の本も読んでいたからです。「オオカミを放つ」の感想ですが、かなり論が荒いというのが印象に残りました。
正直なところ再導入の話をしているはずなのに本文中で一度もMVP(最小存続可能集団サイズ)や有効個体の話が出てこないことに心配になりましたよ。餌となる動物がいるから定着すると考えているみたいですけど、世代交代を含めた個体群維持ができなきゃ保全対策としての意味がないでしょう。本当にこの人たちは真面目にオオカミの再導入を論ずる気があるのでしょうか?
文章を読んでいても自分に都合のいい方向に引っ張りすぎと感じました。たとえば若いオオカミは群れを出て放浪するとこの本にはありますが、そういう個体が人とトラブルを起こす可能性については触れられていませんでした。クマの事故にしても若い個体が引き起こすケースが結構見られるようだし、ニホンザルで言えば放浪するオス個体が猿害のきっかけになるケースがあるんだけどオオカミでそういう被害のことは想定しないんですかね。たとえば放浪個体が人里に出ちゃうとか。
あと、海外で上手くやっているというけれども、その上手くいっているのはどういった条件を満たしているからで、それは日本でも満たされるのかという考察がないですよね。よそで大丈夫だからここでも大丈夫というのはただの呪術的思考であって科学的思考とは違いますけど。
あとがきに市民運動として進めていこうという意味のことが述べられていますが、むしろ専門知識のない一般人を丸めこんでなし崩し的に再導入をやっちまおうという気があるようにすら思えてなりません。
本格的な検証はもう少し資料を集めてからやります。

福岡伸一に侵略される生物多様性

2010-02-09 23:23:50 | 福岡伸一
 今回は福岡伸一が関わっている生物多様性に関する事柄を調べてみました。まったく、福岡伸一が変なこと言わなきゃあ料理とか別の記事が書けるのに……。

生物多様性 日本アワード 審査委員会委員名簿

岩槻 邦男

福岡 伸一

全く対照的な二人が委員に入っているのを見てビックリ。
岩槻氏は兵庫県立人と自然の博物館の館長であり、文化功労者として顕彰されたこともあるくらいのまっとうかつ一流の専門家です。そんな方が委員として入っているくらいですからおそらく真面目なものと思いたいんですが……なんで福岡氏までいるの?あからさまにいらないでしょう。まともな人選してくれよ……。

「地球いきもの応援団」メンバー

個人的にヤバそうなのをピックアップ。

養老孟司 (生物学者/東京大学名誉教授)

茂木健一郎 (東京工業大学大学院連携教授)

福岡伸一(生物学者)

曲者がそろってますなぁ。生物多様性に関しては池田清彦の劣化コピーの養老に茂木までいますか。完璧に放っておいたら生物多様性が食いものにされますねこりゃ。
この侵略的外来生物を早くなんとかしないと。

これはアクセサリーとしか思ってないかな

2010-02-08 21:19:48 | 福岡伸一
 週刊文春に連載されている「福岡ハカセのパラレルターンパラドクス・生物多様性の真の意味」を読んでみました。感想としては意外にまともでした。生物多様性がどうして人間に必要かという部分の説明は割とオーソドックスなものに沿っていました。ただ「動的平衡」を何度も持ち出してくるのには辟易しましたが。これや前の新聞記事を読んだ感じではこの人は生物多様性に対する社会的関心を高めるというより生物多様性を「動的平衡」のアクセサリーにする方に関心があるかなと。生物多様性を「動的平衡」で説明できるとすることにより「動的平衡」の箔付けに使ってますね。「地球いきもの応援団」は生物多様性の社会的関心を高めるため作られたと言いますが、このような人がいることを考えると実態はくさいですかね。案外、放鳥されたトキの餌やりをすべきとか素で言いそうな気もします。
僕の方針としては今回はシリーズ化する予定はないです。これが相当やばかったらやるつもりでしたが思いのほかまともでしたので。ただ、この人が生物多様性に関して正確な情報を伝えることより自説を広めることを優先しているのは確かなようなので動向はチェックしてある程度たまったらシリーズ化して批判するかもしれません。