ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

武田邦彦の「生物多様性のウソ」を読む4 大きすぎる物差しは役に立たない

2011-08-10 11:23:27 | 武田邦彦
 さて、大分、間が空きました。今回は、外来生物についてです。まぁ、池田清彦の劣化コピーでしかないわけですが。

P86
ダーウィンの研究で有名なガラパゴス諸島がありますが、この諸島は南アメリカの海岸から900キロも離れた絶海の孤島なので、イグアナなどの珍しい動物が多く見られます。
 でも、大陸で絶滅と進化を繰り返した動物の群れと、ガラパゴス諸島ですっかり進化から遅れた動物とを比較すると、やはり「普通の自然の中で動物は絶滅し、進化していくのだな」ということがはっきりわかります。
 つまり、絶滅しそうな種を「絶滅危惧種」に指定し、それを人間の手で保護していこうというのは、保護される生物にとっても辛いことですし、自然の叡智を生かすという意味でもやってはいけないことでしょう。

相変わらずの武田節。じゃ、妄想を砕いていきましょうか。まず、ガラパゴスの生物を進化から遅れたというのが致命的な勘違い。大陸であれ、島であれ、生物はその環境に適応しながら生きています。「赤の女王仮説」が有名ですよね。今の進化生物学では、どんな生物であれ、進化という木の枝の最先端であり、進化が遅れているという考えそのものが間違いです。原始的な形質をもつ生物であれ、周りの環境に応じて自然選択が働き進化しています。分子レベルでも同様。自然選択はありませんが、常に変化し続けています。

P89
 すでにブラックバスが日本に来てから1世紀近くたっているのですから、ブラックバスを単純に外来種と呼べるのかは微妙ですが、外来種排斥運動の対象になったのは確かです。

はい、ダウト。かつて、バス釣り業界が散々使ったカビの生えた詭弁ですね。1925年に赤星鉄馬が芦ノ湖に放流していますが、全国的に分布が拡大したのは1970~80年代です。一部の事例を持って事実であるかのようにサバを読まないように。

P89
琵琶湖を一つの自然としてみるなら、そこにフナが泳いでいても、ブラックバスが泳いでいても、それほど変わることはありません。両方とも魚ですし、フナも1億年前から琵琶湖にいたわけではないからです。

まず、一億年の根拠が不明。それを言い出すと、世界で3番目に古い古代湖である琵琶湖すらできたのは500万年前ですから、そもそも存在しません。その無駄に大きい時間スケールで語れば、ほとんどすべて変わらないでしょうね。ぶっちゃけ、1億年前じゃフナもいないがブラックバスもいないわけですが。適切な物差しを使わなければ、何も測っていないのと同じことです。
あと、植物食性寄りのフナと肉食魚のブラックバスを同じものとして扱う理由もわからん。ニッチとか意識してないのがもろバレ。
この後も、根拠不明な「僕の考えた論」を開陳しますが、すべて指摘するのは面倒なのでパス。

P97
また、モンシロチョウ、スズメ、ドブネズミといった少し前には日本のどこにでもいて、多くの日本人が「日本古来の昆虫や鳥」と思っているものでも外来種だったりすることがあります。

はいはい、そんなこと言ってる暇があれば論文出せ。とりわけ、スズメが外来生物ってのは何が根拠になっているんですかねぇ?グーグルスカラーでもめぼしいのが見当たらないのですが。


武田邦彦の生物多様性のウソを読む3

2011-07-13 00:08:01 | 武田邦彦
 大分、間が空きましたが、批判3回目です。正直なところ、この人の言う論理的とは一般的な定義とは別次元の定義なのでしょう。それくらい辻褄が合いません。

P38
「多様な生きものによって支えられている生態系」という表現は、「生態系は多様な生きものによって形作られている」という言い方もできます。
 しかし、もともと「生態系」というものが地球上にあったわけではなく、生物、特に多細胞生物が地球上に誕生して反映したので、生態系ができたということになります。
だから、生態系が「多様な生きものによって支えられている」のかどうかは不明で、もしかすると1000種ぐらいの生物がいれば生態系は形作られるのかもしれません。固有種がたった110という「ガラパゴス諸島」でさえ生態系は維持されているわけで、後で述べますが、「多様さ」をもたらすはずの外来種が島に入り込まないように厳重に管理されています。ということは、生態系を維持するにはさほどの「多様さ」は必要ないと考えられます。

本当に真正の(ry
仮に1000種で形作られる生態系があったとして、そこで“人間は生きていけるのか?”は個別に考えないといけないことですけどね。
ガラパゴスと武田氏については、過去に「知性のガラパゴスと武田邦彦」にて突っ込んでいますので、そちらを参照ください。読むのが面倒という人のために簡単に説明しますと、外来生物の侵入を防ぐのは、外来生物により、もともといた在来種やその地域にだけ生息する種(固有種)が減少ないし絶滅することが多々あるからです。絶滅したら、多様性は減りますよね。
もう一つ、言っておきますと、外来生物(外来種)は“人間が持ち込んだ”その地域にいない生物のことですので(個体群云々は長くなるので省く)、自然分散を外来生物とは言いません。武田氏は外来生物問題の基本を押さえていないので、この後も外来生物についておかしな見解を晒します。

P39
500万種に減るまで500年余りということになりますが、その間に生態系は新しいバランスに移るでしょう。仮に「臨界点」というのがあるとしても、それが500年後であるなら、まだ研究が不十分なときに急いで対策をとる必要はないとも考えられます。

ん?それじゃぁ年間100ミリシーベルト以下での放射線への対策であなた何て言ってましたっけ?武田氏に言わせれば、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくの影響はよくわかっていないことが多いので、武田氏なら急いで対策をとる必要はないと言うはずですけどね。
参考:原発 緊急情報(48) なぜ、1ミリシーベルトが妥当か?

武田邦彦の「生物多様性のウソ」を読む2 追記あり

2011-07-02 09:56:27 | 武田邦彦
 シリーズその2でございます。くそまじめにやると1ページ丸々突込みが入りかねない本なんですがこれ。わかっていたことではありますが、生物多様性を微塵も理解していないなぁ・・・・・・。
愚痴はともかくはじめていきます。

P33
 この地上をあらゆる生物が覆い尽くすと、新しい生物は誕生しにくくなり、自然界は活気がなくなるかもしれません。たとえば、東京というところは、「ヒト」という生物が完全に支配してしまいましたので、そこにはヒトか、ヒトに飼われる生物はいても、自由に生活したり、新しい種ができたりすることは難しいのです。


え?病院での薬剤耐性菌の発生は?東京でも普通にあるんですが{参考:定点報告疾病 月報告分 推移グラフ(適当な薬剤耐性菌を選び、年数などのパラメーターを決めて更新をクリック)}。東京でも生物は進化していることの顕著な例ですよね。
このあとのページでこんなことを言っています。


P35
 よく、院内感染で「抗生物質の耐性菌」というのが話題に出ますが、それは「これまで存在しない細菌で、抗生物質を使うことによって新しく誕生した生物」です。つまりは新種というわけです。


自分が何を言ってるのか分かってるのかなぁ?よく話題になるというなら新種ができるのが難しいというその前の発言と矛盾しませんか?


P35
つまり、生物は常に変化しています。「進化」という言葉自体がそれを意味していますが、絶滅する種も生まれれば新種も生まれます。
 ですから、もし良心的に記事を書くとすると、「一日100種の生物が絶滅し、80種の生物が誕生しているので、差し引きすると一日20種の生物が減っていることになる」とか、「一日100種の生物が絶滅していますが、120種の生物が新しく誕生しているので、かえって生物多様性は高まっているかもしれません」と表現することになります。

中略
 
 おおよその見当をつけますと、現在の地球に3000万種ぐらいの生物がいるといっても、名前がついているのは200万種ほどで、アマゾンでは一年に1000種ぐらいが新しく見つかっているといわれます。


・・・・・・まさか新種なんてどれも薬剤耐性菌のようにすぐさま現れると思ってるわけじゃないですよね?
実験室レベルならともかく、野生化での新種の誕生というのは“早くても”数万年レベルなんですが。ヒトなんてチンパンジーとの共通祖先からわかれて約500万年近くたってようやく現在に至るわけなんですが。種が誕生するのは途方もなく時間がかかるものなんです。今現在、絶滅する速度が非常に早く、新種の誕生(発見じゃないよ)は非常に遅いということが分かっている中で何が良心的な書き方なのか意味不明です。詭弁のガイドラインの「自分に有利な将来を創造する」に当てはまるんじゃないですか。
ついでに言うと、現在発見される新種というのは、“もともと”いたんだけど発見、分類されていなくてその存在が知られていなかった種です。
つまり、開かれていない袋とじのようなもので、ハサミで切り開けば中身は見れるけど、袋とじの中身が突然降ってわいたわけではありません。
今日はこの辺で。

追記7/2
薬剤耐性菌の部分、論理がすっきりしていないので書き換えるかもしれません。明後日くらいにでも。

武田邦彦の「生物多様性のウソ」を読む

2011-06-24 21:27:58 | 武田邦彦
  武田邦彦が6月の初めに「生物多様性のウソ」という本を出しました。読んでみた結論から言うと、池田清彦以下の質で参考にできる部分は皆無です。論拠を示さない発言が多くまともに取り合う価値もないし、買う必要もありません。これを読んでどうしても気になったら立ち読みで済ませましょう。
とはいえ、どこがおかしいのかよくわからない人、違和感はあるけれど言葉にできない人、実際にこの理屈でからまれてきた場合の対処法がほしい人はいると思います。
ここでは、そういった人をターゲットに武田邦彦の事実認識、論理のおかしいところを指摘していきます。
それでははじめていきましょう。

P12
「東京23区の自然は破壊されているかと?」と聞かれて「自然は豊かに残っています」と答える人はいないでしょう。皇居を除けば東京23区はコンクリート・ジャングルで大型の野生動物などは全く生きていくところがありません。


しょっぱなからトバしてくれます。まず、東京タヌキ探検隊のタヌキ・ハクビシン・アライグマの目撃情報の集計によると、練馬区や杉並区、新宿区などでタヌキが多く見られるようです(詳しくはリンク先参照)。皇居以外でも大型の動物がいないわけではありません(こう書くとタヌキは中型動物とかいう人も来るかね)。
また、外来魚類の投棄が多くタマゾンとすら呼ばれる多摩川でも近年では天然アユの遡上が確認されています(多摩川のアユ、推定遡上数が過去最高を記録!)。アユは川と海を行き来する回遊魚ですから、川と海の両方の環境が整わなくては生息できません。むろん、侵入してくる外来生物などはありますが、一方で環境は改善されている部分もあります。
また、P20とP28にはそれぞれ生物の属の数と絶滅割合を示したという図が出てきますが、これが奇妙です。まず出典が明らかにされていません。何のデータをもとに作ったのか全く分かりません。読者がより深く理解したい場合、出典を示さないのは非常に困ります。それらしき文献を自分で調べ、判断しなければならないのですが、仮に武田氏に「こういうこと?」と聞いても武田氏が「違う」と答えたらやり直しです。
どうして武田氏は読者に意地悪をするのでしょう?
さらに、もう一つ問題があります。武田氏はこのように主張しています。


P21~22
自然界の中には時々、遺伝的に弱い「種」ができこともあり、そのような種は短い期間に絶滅します。しかし、「属」となると複数の種を含みますので、容易には絶滅しません。そこで長い歴史を見るときは「属」で整理する方が適当です。


しかし、P28ではこのようなことを書いています。


上のグラフは先に示したグラフと同じ時間の幅のものです。
カンブリア紀が始まってから3億年余り続いた古生代では、グラフのピーク(鋭い山のようになっているところ)が多く見られます。このピークは「生物種の数がどれくらい絶滅したか」を示すものですから、古生代にはしょっちゅう、生物の大量絶滅があったことがわかります。


先に示したグラフというのはP20の生物の属の数を示したというグラフのことです。
なぜ武田氏は長い歴史を見るときに適当であると自分から主張している“属”ではなく“種”で絶滅割合を評価しているのでしょう?武田氏の言葉を借りるなら、種は短い期間に絶滅するものもいますから、属で評価するより過大評価になりそうなものですが。
第一回目はこのくらいで終わります。さて、梨のSAN値は予定していた批判をすべて終えるまで持つでしょうかw




武田邦彦と生物多様性0

2011-06-18 22:06:05 | 武田邦彦
 お久しぶりです。最近は忙しさにかまけて記事を書いていませんでした。武田邦彦が生物多様性分野で不適当なことを書き散らかしています。とうとう、「生物多様性のウソ」という本まで出版されました。今、読んでいますが、いろいろと笑える出来ですね。この本の書評はまた後程として、彼がブラックバスについてあからさまに調べていないので突っ込みを入れてみます。

「生物多様性」の偽善 ブラックバスが不人気なのは味のせい

外来種についても同様で、日本では外来種は駆除して在来種は守るのは当たり前のことのように考えられているが、そもそも日本の生物が多様なのは、四季があり、寒い地域と暖かい地域の両方から外来種が入ってきたからである。


そもそも、外来種をどういう意味で使っているのか不明。まさか、人により持ち込まれたもの以外も含んでませんか?あいにくと、外来種が入ってきて生物多様性が多様化したなんて日本どころか世界レベルでも聞いたことがありませんが。ここで言う多様化というのは単純な種数の話ではなく、生物間の相互作用、それが織りなしてきた進化的歴史も含むのですけど。外来種問題の根本である生物学的均一化についても書いてみましょうか。


日本にブラックバスが入ってきてすでに1世紀近くが経つが、この魚が嫌われるのは食べてもあまり美味しくないという理由だけである。フナより美味しくて高額で売れるのなら、喜んで繁殖させるはずである。

うん、ごめん、あなた取材してないでしょ?ブラックバスって美味しいから。皮に臭みがあると言われるので、皮をはいできちんと処理したブラックバスは淡泊で美味しいです。琵琶湖博物館のレストラン「にほのうみ」ではブラックバスの天丼がメニューにあります。僕も今までに3回食べていますが、非常に美味しいですね。琵琶湖博物館に行った際にはぜひどうぞ。
話がそれました。このような文章を書くということは、裏を返せば実際に現地に赴いて食べてみるということもせずに想像で語り、下調べも碌にしていないということです。
さて、もう一つ指摘しておきましょうか。ブラックバスが嫌われる理由というのは在来の魚類、昆虫類などを捕食するからです。漁業という面で見れば、有用魚種であるワカサギ等の捕食も含まれますか。欺瞞云々いうなら、せめてワカサギは良くてなぜブラックバスがダメなのかという論理展開の方がまだそれらしく見せられますけどね。
ブラックバス問題に口をはさむなら、せめて環境省のオオクチバス小委員会の資料に目を通さないと現在では話にもならないのですが、この人を含めブラックバス問題に異議を唱える人がそれに目を通した形跡がかけらもないのはなんとも。

また武田邦彦のねつ造か

2011-04-30 20:04:21 | 武田邦彦
 いわき市にて市長が「福島産の牛乳や食材は危険だという風評を払拭するため」という発言をして不評を買ったという話が流れていますが、情報源の武田邦彦がねつ造した話のようですね。すでに本人のHPから該当記事は削除されていますが、ネットにはコピペが転がっています。

武田邦彦教授がいわき市長に緊急提言「福島県産の食材を給食に使うな」

僕にしてみれば、これで“専門家”の発言として通用するのが理解できないですね。心配に同調して煽るのが専門家のすることですか(一部の安心したいだけの人はYESと言いそうですが)?具体的な危険性について何ら語っていないというのに。昔の肩書ってすごいですねぇ(棒)。
そして、肝心の市長の発言ですが、どうやらそんな発言はなかった模様。
いわき市市長発言は“なかった”!!

いわき市長は「風評被害を払拭するために福島産の野菜と牛乳を学校給食に使おう」と言ったのか?

どうも市長がどうのこうのは武田邦彦のねつ造だった(控えめに見ても勘違い)ようですね。武田邦彦が脳内妄想にとらわれて現実を直視しなかった可能性が濃厚です。
しかし、ここまで話を広げてしまったオオカミ少年はどう責任を取るのでしょうね?明らかにあなたがやらかした方が風評被害ですが。
そんなオオカミ少年の言いぐさがこれ

「個人を批判せず、意見を批判する」

というのが信条で、今までも首相、東大総長など限られた人以外は、個人の批判を控えてきました。

しかし、このところ、市長などが市民に被ばくを強制する例が目立ち、つい具体的な市長の名前で批判をしました。


はい?根拠なしで人を叱り付けておいて言いたいことがそれですか?結局根拠もなしに他人をdisるというおたくの嫌いな匿名にも劣ることをしたことについて反省はないと。まぁ昔にもペットボトルリサイクルなどで似たようなねつ造はやってますから、反省の色が無くてもおかしいと思いません。むしろお家芸なのであったら中身が同一人物か疑うレベル。
僕に関して言えば、端から武田邦彦を信頼できる情報源として使おうなどと“思うことすら”しません。むしろ有害情報の源泉として警戒はしていますが、web上では信頼できるなどと思っている人が多いことに驚かされます。初歩的な本の1冊も読まずに知ったような口を叩けるアレのどこが信頼に値するのやら。
AX

また武田邦彦が何か言ってるよ 外来生物2

2010-09-06 01:24:54 | 武田邦彦
 前回の続きです。IUCNのほうは資料にあたれませんでした。すみません。もう疲れたよorz

以下引用
先生「生物のある特定の種が絶滅することは、自然から言えば何も影響はありませんが、これまで人間が生物の種を絶滅させたという点では、乱獲、飼育、スポーツなど「人間の楽しみ」で絶滅するのが大半で、外来種など人間以外の生物同士の戦いで生物が絶滅するという影響は小さいと思います.」
引用終わり

・・・・・・この短いセンテンスの中にいくつ突っ込みどころがあることか。あ゛~これはホントに専門家ですか?外来生物はおろか保全の専門家ですらないんじゃ。
まず、種によってはそれが消えることで生態系に大きな影響を与えることがあります。たとえば、ラッコはウニを大量に食べるためケルプの森を維持する役割を担っています。仮にラッコがその地域からいなくなるとウニが大繁殖してケルプの森はウニに食べつくされます。このようにその存在が生態系において重要な役割を担っている種を保全生態学ではキーストーン種といいます。保全生態学をやってれば、まずこれを知らないということはないです。保全生態学の基礎の専門書にはどれもキーストーン種について書かれた項目があります。
次に外来生物の影響についてですが、これは生物多様性国家戦略に生物多様性の3つの危機という項目があり、外来生物はその第3の危機に位置付けられています。さらに、島の生物の絶滅要因の50%以上は近年では外来生物によるものです。ミナミオオガシラなんかが有名ですね。あとは、ヨーロッパで在来のザリガニを減らしているのはアメリカザリガニが持ち込んだカビ病です。
こういうことを知っていれば、安易に「人間の楽しみ」で絶滅するのが大半なんて言えないはずなんですけどね。いくつもの要因が絡まり加速度的に絶滅に向かっていく「絶滅の渦」というこの業界では当たり前の用語を知っているかすら僕には疑問です。

また武田邦彦が何か言ってるよ 外来生物その1

2010-09-03 00:09:47 | 武田邦彦
 先日、武田氏のHPを見ていたら絶句するようなものに出くわしました。

科学よもやま話 第二回  外来種問題

内容は生物をやってる専門家に武田氏が外来生物のことを聞いてみたというものですが、その専門家の認識がむちゃくちゃです。

以下引用
先生「外来種によって生物全体の種の数が減るか増えるかは不明ですが、日本のように島国で外から来る生物が少ないところでは、種は細かく分化しているので、その分化した種が絶滅することがあります。つまり、外来種の問題は生物の問題ではなく、我々、研究者にとっては長年、観測してきた生物がいなくなるので、辛いという問題です。」

と最初からビックリするようなことを言われました
引用終わり

いやいやこっちもビックリですから。なんですか?この見識の低さは?なにをもって研究者の好みの問題だけに問題を矮小化してるんです?外来生物が農林水産業や健康に与える影響は無視ですか?具体例を一つ出すなら、沖縄のウリミバエの問題があります。外来生物であるウリミバエが根絶されるまで沖縄県は県外に作物の出荷ができませんでした。あと、外来生物が引きつれてくるものとして病気があります。たとえば狂犬病や口蹄疫です。狂犬病は今のところ日本では根絶されていますが、検疫の隙間を逃れた場合、予断を許しませんし、口蹄疫が今年、日本中を巻き込んで大騒ぎになったのは記憶に新しいことです。専門家がこんなにも無自覚で無責任なことが言えるのか謎です。外来生物のことをきちんと勉強しているとは思えません。

今日は疲れているのでここまでとします。次回はIUCNの声明をガン無視していることについて突っ込む予定です。

知性のガラパゴスと武田邦彦

2010-06-30 20:35:07 | 武田邦彦
 先日、武田氏が外来生物のことをしゃべってくれなくて残念な思いをしていたら、なんと今日、ガラパゴスと外来生物について非常に大胆な発言をしてくれました。素晴らしいサービス精神の持ち主ですね(w。

ガラパゴス諸島と外来種排斥運動

以下引用
ガラパゴス諸島の生物がダーウィンの研究に役に立ったのは、いろいろな理由があるが、その一つが「外来種も少なく、気候も変動しなかったので、生物が多様化せず、繁栄もしなかった」ということにつきる。
引用終わり

とりあえずダーウィン・フィンチの例を挙げさせてもらいましょうか。このフィンチは一種の祖先からそれぞれの島の環境や食性にあわせて十数種に種分化しています。
このほかにも島ごとに分化したゾウガメやウミイグアナ、ガラパゴスコバネウ、ガラパゴスノスリとガラパゴスは固有種の宝庫です。どれも比較的新しい火山諸島であるガラパゴス諸島に大陸から祖先種が来て個々の島の環境に適応していったようです。
そして、現在のガラパゴスの保全を語る上で外せないのが外来生物の存在です。海鳥の卵を漁るネズミやリクイグアナと食物を争うノヤギなどの外来生物が固有種の存在に暗い影を落としています。
ガラパゴスのダーウィン研究所の主な活動にも外来生物対策があります。

>•固有生物および生態系を脅かす外来生物の駆除を目的とした調査および研究

ついでにECOネットのガラパゴス国立公園の項目からも引用します。

>ガラパゴス諸島の保全における課題は大きく分けて2つあります。外来生物の管理と、自然資源の過剰利用です。

そんなことは知ってか知らずかまだまだ武田氏のリップサービスは続きます。

以下引用
1.外来種が少なければ生物は衰退し、多様化が失われる、
2.気候が変動しないと生物は衰退し、多様化は失われる、
というのが「事実」である。
引用終わり

「事実」なんていうくらいなら事例のひとつもあげましょうよ。少なくとも1については非常に興味があります。武田氏が外来生物の侵入により固有種が失われる事例(ナイルパーチやミナミオオガシラ、ノブタ、ノネコ)についてはどうお考えなのか含めて。

以下引用
1.外来種を排斥すると生物が繁栄し、多様化する、
2.気候が変動すると生物が絶滅し、多様化が妨げられる
というのが、守銭奴(お金だけの学者、NPO、環境省、NHK、朝日新聞)の「事実に反する広報内容」である。
正反対だ。
引用終わり

とりあえず事例のひとつもあげてくれないと説得力のかけらもありませんよ。思い込みでしゃべってないで現実直視してください。

以下引用
正反対になるのは、最初が「科学」であり、次が「お金」だからだ。
引用終わり

おいおい、検証や論証という科学の重要な手続きをすっぽかして勝手に持論を科学的なことにしちゃいましたよ。言っておきますが、検証や論証もすませずに科学を名乗るなんて科学者のやることではありませんよ。学部生から出直したらどうですか。こんなんじゃ博士論文なんて書けやしない。

以下引用
学校で生徒に生物を教えている先生は、さぞかし切ないだろう。偉そうな顔をしている日本の指導層が、学校でも教えられないことを白昼堂々と言っているのだから。
引用終わり

僕も仮にも大学教授がこんなよく戻るブーメランを投げるとは予想もできませんでした。完璧なる自虐系ギャグを体をはってするエンターテイナーとは。

しかし武田氏はガラパゴスの生物に関する本を1冊も読んでいないのでしょう。ニュートンムックあたりに図や写真入りでわかりやすく書いてあるのですが。まったく言及先について調べないあたり知識の海に孤立した知性のガラパゴスです。
現実におけるガラパゴスは固有種の宝庫ですが、知性のガラパゴスは無知の宝庫です。しかし中身は珍しくもなんともない貧相なものです。
だからナイルパーチくらいは調べておくべきだったのに。その程度の能力もないのか。
とりあえず、僕が突っ込めるのはここら辺まで。後半の人種云々は詳しい人にお任せします。

追記
ガラパゴスでは2010年にノヤギの駆除に世界の諸島初の完全駆除の見込みが立ったそうです。
【最新ニュース】ガラパゴス、2010年にヤギ完全撲滅へ

池田清彦も入れてあげて

2010-06-28 16:40:01 | 武田邦彦
 これはちょっとした武田氏への茶々入れです。もうちょっと外来生物のことを書いていればもっと突っ込めたんですけどね。実力のなさが恨めしい。

「気候変動」が「生物多様化」をさせる

>かくして「気候変動」が「生物多様化」をもたらします。それは「外来種」を取り込んでその地域の生物が多様化することを示しています。

>その点では、「生物多様性」の敵のようにいわれている「温暖化」や「外来種」こそが、生物を多様化するもっともよいことなのです。

だから外来生物の定義と個別事例から勉強しなおしましょうよ武田センセイ。そんな池田清彦のコピーじゃ専門家どころか高校、大学生にすら歯が立ちませんぜ。自然分布と人為的移動をごっちゃにするとは「ボクニハ生物地理学ト外来生物問題ハワカリマセン」と言ってるようなものですがな。せめてナイルパーチ程度は抑えておかないと。別にグァバやゼブラガイ勉強しろなんて無茶は言いませんから。

>日本の自然はかけがえの無いものですから、個人的ないきさつやメンツにこだわることなく,そして最も大切なこと「お金で人生を売らないこと」をお勧めします

・・・・・・笑う処(゜ω゜)?

ホッキョクグマが苦しんでいないとはケシカラン!??

>事実,学者の間では、渡辺先生、丸山先生,伊藤先生、そしてかなり前から槌田先生など、「まちがっている」と言う人がいたのです。

>学者も学者仲間がありますからお互いの遠慮はあるのですが、それより「科学的に正しいことを言う」というのが誠意と言うもので、それがまだ残っているのです。

池田清彦も入れてあげましょうよ~。
一緒に仕事もした仲なんだから(;w;)