ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

正義で地球は救えない 書評その4 進歩のない池田氏1

2009-01-09 22:39:11 | 池田清彦
さて、大分お待たせしましたが「正義で地球は救えない」の書評を再開します。今回は池田氏のよく使うものを批判します。
P94から引用
>我々の食生活はほとんど外来種で成り立っている。

このあとコスモスだって外来種云々がつづきそれらを受けて以下のセリフ。

>だから、外来種を排除しようとしている人たちは、自分たちの感性にフィットする外来種は認めて、そうでない外来種については「生物多様性を脅かす可能性がある」という“正義”の理屈をあてはめて駆除しようという考えであることがわかる。
引用終わり
はぁ・・・。いい加減どういった特徴をもった外来種が問題となっているのかくらい把握しましょうよ。問題視ないしは駆除をされる外来種ってのはアライグマにしろバスにしろ以下の特徴を持っています。
・生態系あるいは生物群集への影響が大きい(捕食、競争など)
・人間の管理下にないあるいは管理下を離れた場合生態系などへの影響が懸念される
だ・か・らはなから管理を前提としており、実際に管理されている栽培種については問題視する必要がないんですよ。イネにしろキャベツにしろ人間の管理下でしかもう生きることができませんしね。こんな基本的な認識すら欠如してるんですか?池田氏は。専門家ぶってるけど恥ずかしさがないのでしょうか。いやそれ以前に素人以下の見識で専門家ぶる氏の姿勢は詐欺といってもいいくらいですけどね。

正義で地球は救えない 書評その3 リスクのはかり方がおかしくはないか

2008-12-29 18:52:02 | 池田清彦
 今日は池田氏のリスクのはかり方についてです。
P97>しかし、アライグマの駆除にも多額の金がかかる。駆除費用は被害総額を上回ると思う。千葉県は2008年の予算にアライグマの駆除費用として2900万円を計上したが、2006年の被害総額は459万円だ。税を使って駆除業者に金を払って駆除しなければいけない道理はあるのか。
 いや何を根拠に駆除費用が被害総額を上回ると思うのですかね。ここで池田氏は農林水産業への被害額を引き合いに出して駆除がコストパフォーマンスに見合わないものであるとしていますよね。しかし、アライグマによる被害は農林水産業だけでなく生物多様性にも及んでいることは池田氏もご存じでしょう。生物多様性の価値を具体的な金額に表すことは難しいですが、だからといって生物多様性の価値を無視していいことにはならないでしょう。ここでおかしいのは池田氏の費用対効果の天秤のバランスについてです。アライグマの被害は生物多様性にも及んでいるのでアライグマによる被害という皿に生物多様性も加えなくてはならないところをどういうわけか無視して農林水産業に限定してバランスが不釣り合いになるように見せています。さらにいえば外来種は放っておけば増殖し拡散します。ということは先のアライグマの場合、これから被害が増えることもありうるわけです。こういったことを考慮せず費用対効果を考えろという池田氏の姿勢は違和感を感じます。

正義で地球は救えない 書評その2 池田氏に良識はあるのか?

2008-12-21 17:02:57 | 池田清彦
 池田氏の発言には良識を疑うような部分があります。たとえば絶滅させてなきゃ問題ないでしょといわんばかりの以下の部分。
正義で地球は救えないP92
>ブラックバスが日本に入ってから八〇余年が経つが、ブラックバスによって滅ぼされた日本の在来種は一種もいない。ブラックバスによって人間が健康被害を受けているわけでも、もちろんない。
はいはい。昔からのおなじみの主張ですね。で、絶滅だけが問題になるわけじゃないことは池田氏もわかってますよね?仮に絶滅しなければ問題ないとするとヤンバルテナガコガネにしてもまだ絶滅はしていないのだからこういう主張もできますよね。開発されてから何十年と経つが、ヤンバルテナガコガネは絶滅していない。開発によって目立った健康被害が起きているわけでもない。これって開発の影響を矮小化するレトリックですよね。生物多様性の保全から考えると大幅に激減した段階ですでに憂慮すべき事態であり絶滅を区切りに問題視するかしないかを決めてたら対応が遅いって批判されるべきでしょうが。絶滅と健康被害といった極論で事態を矮小化してるといわれてもしょうがないんじゃないかな?
 ブラックバスの拡散についても池田氏は通説に対し何一つソースを示さないまま独自の見解を述べているので後でしっかりソースを示して批判します。
追記 池田氏の主張に対する反論としては以下のサイトが非常に参考になります。
ゼブラノート 『底抜けブラックバス大騒動』を読む

正義で地球は救えない 書評その1

2008-12-19 22:53:53 | 池田清彦
 やらなくてはと思いながらも諸事情で遅れていた「正義で地球は救えない」の書評を開始したいと思います。書評の内容は池田氏の生物多様性に対する主張に対するものを基本とします。その他の分野までは知識が足りなくてカバーしきれませんので。感想を先に言えば、池田氏の主張は「底抜けブラックバス大騒動」や「環境問題のウソ」から進歩しておらず外来生物問題に関わっている人が改めて読む必要はないでしょう。ただ、いまだに耳触りのよいレトリックに騙される人はいるようです。
 さて、前振りが長くなりましたが、池田氏の主張の検証に移ります。池田氏はP85~86でこのような主張をしています。
>生物の長い歴史の中では、亜種は、1万~2万年もあれば進化するレベルのものであり、消失と出現を繰り返してきたことを考えれば生物多様性の保全にとって根源的に重要なものだとは思われない。
実に大胆な発言です。どのレベルで保全するかは専門家の間で喧々諤々の議論があり、僕レベルでは口をはさめません。さらに言えば、この主張から池田氏は生物多様性の成り立ちについて無知だと思われます。なぜなら、亜種の存在は新種ができ種の多様性が増すのに不可欠だからです。おおざっぱに言って種分化(新種の誕生)は以下のようなプロセスで成り立ちます。
1.ある生物集団Aがある

2.Aが何らかの形で複数に分断、隔離される(例新しい川がAの生息地を分断する)

3.分断された集団は独自に遺伝子の変化を蓄積させていく

4.遺伝子の変化がある程度蓄積されると元の集団と似ている部分もあれば違う部分も目立ってくる

5.さらに変化が蓄積され、元の集団Aと似ても似つかぬ集団Bができる(新種誕生)
亜種はこのチャートの4にあたります。チャートを見れば解ると思いますが、亜種の存在は新種ができるために欠かせません。この亜種の存在を重要でないという池田氏は生物多様性の成り立ちに無知だといってもいいのではないでしょうか。

底抜け池田清彦

2008-12-18 00:10:57 | 池田清彦
 今「ブラックバス問題の真相」という本を読んでいるのですがその中で池田氏に言及している部分がありました。「やぶにらみ科学論」の池田氏の主張をレトリックと断じ反論していました。その池田氏の主張とはこのようなものです。
>「生物多様性は人類の生存のために必要だ、との立場を採ると、必要がなくなれば要らないんじゃないかとの話になり、価値の根拠は多様性ではなく人間にあるということになり、論理の底が抜けてしまう」
まあ、池田氏の主張は論理としては筋が通っています。ですが、氏の言っていることはある条件が整えばその理論は棄却されるよねと言っているだけです。確かに生物多様性に依存せずに人類が暮らせるようになれば生物多様性の保全の根拠を人類の生存に求めることはできません。しかし、今現在、人類は生存基盤を生物多様性に依存しています。このような状況であれば人類の生存ために生物多様性が必要という言説はその使用にあたりなんら問題がないでしょう。
 結局、池田氏の主張の問題点は理論上はありうることをそっくりそのまま現実でもそうであると思ってしまったことです。理論と現実の区別をつけずにいっしょくたにしてしまった池田氏の方こそ思考が底抜けであると言えるでしょう。

またかよ・・・

2008-12-09 23:31:08 | 池田清彦
 池田氏と養老氏がまた本を出したようです。
虫捕る子だけが生き残る~「脳化社会」の子どもたちに未来はあるのか~
また性懲りもなく外来種問題に言及しているようで。読んでないけど内容は今までと同じことの繰り返しでしょう。時間があったら書評を書いてみようかな。にしてもよく彼らの言動を高評価できるよな・・・。高評価している人たちを見るとなんか疑似科学にはまる人とだぶるんですけど。

そもそもあんたに度胸があるの?

2008-11-13 22:03:55 | 池田清彦
 池田氏がまた外来生物問題にしゃしゃり出てきた。養老氏との共著「正義で地球は救えない」で外来生物問題に言及しているようです。これの書評はそのうちやるとして、今回は「定説だってウソだらけ」で審議会は出来レースと言っている部分に突っ込んでみます。
>P92~93
池田 ブラックバスに関しては、日釣振の人が環境省の審議会に僕を入れるように推薦したら、環境省のお役人が「あんなヤツを入れたら審議会がグチャグチャに引っかきまわされる」と言って却下したそうですよ(笑)。

まあ役人さんの認識は正しいですね。池田氏にアカデミックな議論など期待するだけ無駄ですから。そもそもなんで初歩すらできん人間を委員に入れなきゃならないのか謎ですが。この池田氏の話が真実だとして日釣振のねらいとしては池田氏に会議を引っかきまわしてもらいたかったんでしょう。日釣振は特定外来生物指定の時点で専門家とやりあえるようなデータを持っていませんでしたし。
 さて、仮に却下されなかったところで池田氏が委員として出たでしょうか。僕はその可能性は低いと考えます。池田氏は以前、瀬能氏から反論をくらっており、審議会には瀬能氏も委員として出ています。ぶっちゃけ池田氏が出て行ったところでまた瀬能氏にフルボッコにされるのがオチでしょう。さらにその様子は議事録として記録されネット上にアップされます。はたしてそんな場所に藁人形を打つくらいしか能のないヘタレがのこのこ出ていくかどうか。何か適当な理由をつけて辞退するのではないでしょうか。まあ偉そうに専門家面して講釈をたれるくらいならぜひ外来生物に関する論文の一つでも専門誌に投稿してほしいですね。きっとこれもなんやかんや理由をつけてやらないでしょうが。

環境問題のウソを批判してみて 

2008-08-19 02:34:22 | 池田清彦
 長々と環境問題のウソに対する批判をしてきましたが、これでいったん終了とします。まあ、最初から読んでいただいた方には池田清彦が胡散臭いということがわかっていただけたのではないかと思います。見ようによっては辛辣なことばかりで面白くなかったかもしれませんが。最後に池田清彦とはどんな人物かまとめてみます。
・耳ざわりのいい言葉は自分を良識派と誤認させるためのレトリック。
・ネタが古くてワンパターン(情報収集をろくにしていないことの裏返し)。
・初歩的な部分で事実誤認がある。
・事実誤認を認めたくないのか既存の定義を勝手に捻じ曲げてオレ様定義を使う。もちろん既存の定義のどこが間違っているかは具体的に指摘せず一方的に科学的でないなどの下手な印象操作をするだけ。
・批判対象がどんなことを主張しているのか曖昧にして生物多様性原理主義者などというレッテルを貼る。ちなみにどんな条件を満たせば生物多様性原理主義者に該当するのかについていまだかつて池田氏は説明していない。
・少し調べればわかることすら知ろうとせず、自分の脳内妄想が事実として起こるかのように語る。
以上をまとめ、池田氏を一言でいうなら「現実から目を背け妄想に逃げたヘタレ」です。
 池田氏批判を通じて、僕も自分の知識の不確かなところや曖昧な部分を自覚できました。これをこれからのブログを良くする方向に反映できたらと思います。最後にこのブログを見てくださった人たちに感謝を。

書評 環境問題のウソ7 大局的な視野を持てというが

2008-08-16 22:36:41 | 池田清彦
 池田氏の言うことは面白いなあ。
以下引用(P109)
人種というのは人種差別主義者の頭の中の幻想なのだ。だから、地域個体群どうしの交配を遺伝子汚染と呼ぶのも幻想に決まっている。人間もサルも生物に変わりはないのだからこの理屈はサルにも当然当てはまる。
引用終わり
そもそも人種概念と種概念はまったくの別物なわけですが。これ、媒概念曖昧の虚偽にあたらないのかな。池田氏は生物的種概念を持ち出して交雑が進むなら同種としているわけですが、そもそも遺伝子撹乱として問題になるケースでは地理的隔離などがはたらいて事実上交雑が不可能であったということは華麗にスルーですか?タイワンザルとニホンザルについて言えば、東シナ海が両者の交雑をさせない要因となっていたわけだけどそういった歴史的背景は無視ですか。生物多様性というのは歴史的産物でもあるんだけどそういった歴史をガン無視して生物多様性について語るというのは違和感を禁じ得ないですね。
 さて、池田氏は大局的な視野を持つことを推奨しているわけですが、本人がそれがどういうことかわかっていない節があります。たとえば氏は外来生物が生物多様性を増やすといっています。たしかに局所的には生物多様性は増えたように見えるんですが、これをもっと広くたとえば地球規模で見た場合生物多様性は減少しています。どういうことかというと、まず4分割された正方形をイメージしてください。分割された4つの区画をそれぞれべつの色で塗ってください。ここで正方形は地球、分割された区画に塗られた色は各々の地域の生物多様性を表しています。つぎに4分割された区画の一つをほかの区画の3色を使って塗りつぶしてください。ここで塗りつぶされた区画だけに注目すると色は1色から3色に増えています。しかし正方形内の色は4色から3色に減少しています。このように局所的に多様性を判断するだけでは全体として減少していることがわからなかったりするのですが、池田氏の発言を見る限り氏がこういったことをどこまで自覚しているかははなはだ疑問です。

悪質でいい加減な池田清彦 

2008-08-07 18:29:42 | 池田清彦
池田氏は環境問題のウソで遺伝子撹乱(汚染)は有性生殖と同じだといっています。
以下引用(P108)
クローン以外のすべての生物の遺伝的組成は多少とも違うのだから、有性生殖をするということは、厳密に言えば、彼らが言うところの遺伝子汚染が起こるのと同じである。すくなくとも程度問題にすぎない。
引用終わり
なにを根拠に程度問題といえるのかな。というか遺伝子撹乱というのは外来生物であるという前提があってはじめて成り立つものでそこまで一般化できるものではありません。池田氏の言葉を借りるなら、保全生態学者は一定の条件を満たした有性生殖にたいしてだけ遺伝子撹乱という言葉を使うわけです。はっきり言って彼の主張は現実と乖離しすぎています。外来生物の定義しかり、遺伝子撹乱に対する認識しかり。オレ様定義がそんなに正しいと思っているのか?
お花畑を見る自由はあるがそこに他人を巻き込むのはやめてくれ。外来生物問題に寄生する寄生虫。