ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

外来生物利用の基本のキホン

2012-02-19 16:03:00 | 外来生物
 最近、再導入がちょっとした話題になっていますね。オオカミの再導入に始まり、知床ではカワウソの再導入も検討されるとか。いまさらメタ個体群でもないただの外来生物を導入することに何の意味があるのか分かりませんが、こんなときに昔から持ち出されるセリフにこういうものがあります。「作物だって外来種(だからこの○○だけ問題視するのはおかしい)」というもので、ブラックバスやケナフの時から使われ、昔からの論者には耳にタコができるほど繰り返されてきました。
「作物だって外来種」たしかにこれは事実です。現在、僕らが食べているイネにせよキャベツにせよダイコン、ジャガイモにせよほとんどは人間によって持ち込まれたものです。ただし、農作物と問題になっている外来生物には大きな差があります。それは、農作物は人間が管理を前提として利用されているのに対し、多くの外来生物は管理下を外れたことで問題を引き起こしているからです。逆に言えば、管理下を外れてしまえば、農作物だって外来生物扱いとなるということです。事実を羅列して意見を言わないのは古くからの詭弁術です。「作物だって外来種」というのは事実を装った詭弁として使われることが多々あるので、これを持ち出す人間は外来生物問題にかかわってきた人間から警戒されます。これに対しては、「作物だって外来種(キリッ)」「・・・・・・あっ、そう。それで何が言いたいの?」と相手に主張をちゃんと出させるのが初歩的な対処法ですね。
少し話がそれました。結局のところ、外来生物問題、とりわけ利用を語るにあたっては「管理されているか」という部分が非常に重要になるわけで、僕が昔、オオカミ再導入に疑問をしめした理由の一つも「野外放逐前提のやり方を外来生物利用の方法として認められるか?」というものがあったからです。ちなみに、管理されたものとそうでないものをいっしょくたに論じているかどうかは外来生物問題では結構感度のいいリトマス紙になります。この方法を使ってくる人は大概、ほかにも詭弁を使うか下調べの不備を詭弁でごまかしていることが多いので、このやり方を吹っかけられたら議論を切り上げるか、きっちり論破してさしあげればいいと思いますよ。

具体例
区別がかけらもついていない一例。僕の武田邦彦批判へのコメント。

わかき@waka_kiku
批判はいいけど、菊だって古来から考えれば外来植物だったと思うけど。。武田さんの批判する人は何かよくわからんなあ。


だいたい、こんな現実の区別もつかないのに熊森みたいなベクトルを間違えた正義感を加えると現場でドヤ顔で迷惑をかける連中が出来上がるわけでして。こういう基礎的な話は3年ほど前にも書いているのですが、知識も学ぶ気もゼロのくせに気の利いたことを言ってやった風に気取る人間はあとからあとから湧いてきますな。



ヨーグルトで学ぶ情報リテラシー

2012-02-18 01:08:45 | 議論
 最近、このようなまとめを読みました。

乳酸菌風呂

もう端からおかしいですよね。ちょっと画像も探してみましたが・・・・・・うわぁ、探さなきゃよかったorz
初めに断わっておきますと、梨は発酵については実家でカスピ海ヨーグルトを作るくらいの知識しかないですし、詳しいメカニズムも大してわかっていません。微生物系の勉強なんて大学で2単位分しか取っていません。それでもあの話がおかしいことは自分の経験からわかります。まず、ヨーグルトの作り方を見てみましょう。

ヨーグルトのタネを用意する。
清潔な密閉容器(←重要)にタネを入れる。
牛乳を500mlほど注ぎ込む。
保温(このとき魔法瓶やお湯を張った浴槽を使うこともあります。実家だと風呂に密閉容器ごと入れていました。無論、しっかりふたはしてます)
1日ほど置くと発酵してヨーグルトの出来上がり。

詳しい作り方は専門のサイトでも見てもらうとして、ここで重要なのは清潔な容器や器具(スプーンなど)を使うことです。ヨーグルトの作りの失敗の一つに雑菌の混入・繁殖があるからですし、そんなヨーグルトを食べたらお腹を壊しかねません。熱湯消毒などで容器や器具を清潔に保つのは基本中のキホンでしょう。
さて、ここで乳酸菌風呂というものを考えてみましょう。お風呂というのはカビが生えて掃除に手間取るくらい雑菌のあるところです。各家庭で差はあるでしょうが、熱湯消毒した密閉容器>>>>越えられない壁>>>>お風呂くらいの差はあるでしょう。日本で乳酸菌の代名詞とすら言えるヨーグルトでも乳酸菌の働きやすい環境を整えるために雑菌の混入に注意するのに、そんな注意も払わない雑菌だらけのお風呂で都合よく乳酸菌が増えるわけないでしょう?そもそもそんなに雑菌だらけの場所で乳酸菌が手間をかけずに増えるのならヨーグルトづくりに雑菌の存在なんて考慮されませんよ。
目新しく魅力的に聞こえる話は誰もが目にする機会があると思います。ただ、それを信用するしないにしろ、その前に考えてみたいのが「その話が本当だとすると現実にどんなことが起こるのか?それほど素晴らしいならなぜ今まで広まっていないのか?」ということです。逆に言えば、「その話が本当ならばこういうことが起きるはずだが実際は起きていない。ということは眉唾物なんじゃないの?」ということです。貴方の時間もお金も限りあるものなのですから、頭の中でちょっとシュミレーションしてから大事な時間やお金を投資した方が有意義だと思いますよ。

参考資料
プレーンヨーグルトの作り方

カスピ海ヨーグルトの作り方