ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

20年近く青写真無し

2012-03-30 09:24:34 | 再導入
 先月末に長野県でオオカミ再導入に関して答弁がありました。オオカミ再導入に関われという質問に対して知事の答えはシンプルでした。

「オオカミの一つの群れが、生息に必要な面積は県の10分の1に当たる広さ。現実として難しい」
(毎日新聞 阿部知事「オオカミ導入困難」より引用)


知事の対応は僕から見てもシンプルで隙のない回答でした。これに対して案の定、オオカミ協会は噛みつきました。

長野県議会一般質問で「オオカミ再導入」

 知事の回答は、型どおりの反対論です。


噛みつくのもその手筋も僕の想定の範囲内。というか想定よりレベルが低かった。
知事のシンプルな回答に対して型どおりの反論とレッテルを貼って何一つまともな反論ができないのは逆に言えばオオカミ協会の勉強会など型どおりの反論程度で片付く代物であったということ。やってることの自己否定。そもそも1993年に日本オオカミ協会が発足してかれこれ20年近く経ちますが、その間に存続可能な個体数の確保や再導入にかかる資金の目算などの具体的な数字が出てこないのはどういうことですか?行政や企業が重大な課題としていることについて20年近く先送りにしていたら批判を免れないでしょうね。多くの人を巻き込むのに具体的な筋道が何一つないというのは巻き込む人たちに対して失礼ではないのかな。
はっきり言って批判側が論点整理して導入条件煮詰めてるとか明らかにおかしいだろ。
まぁ構わんよ。存分に吠えなさい。具体的なことが言えずに吠えてるうちはまだ可愛いから。可愛いワンコでいてください。

日本オオカミ協会は道を踏み外した

2011-07-05 22:39:04 | 再導入
 数日前にこのような記事がありました。

白鵬に仰天要請「オオカミを復活させて」

最初に見たときは絶句しました。そして、次に思ったことは「ああ、オオカミ協会は科学をやる気はないんだな」ということです。
オオカミ協会の欺瞞や知識不足については過去にいくつか「再導入」や「保全生態学」カテゴリで書いていますのでそれをお読みください。
梨のお勧めとしては以下の3つを推奨します。

「僕がオオカミ再導入を支持しないわけ
オオカミ協会がオオカミによる人身事故を意図的に無視しているのではないかという記事。

「オオカミ再導入に対する簡潔な反論」
法的側面から再導入はほぼ不可能ではないかという指摘。

「日本オオカミ協会は明らかに獣害問題の専門家でない」
個人的には極め付けと思っている記事。これ以上ないほどわかりやすく彼らに獣害の知識がないことがわかります。
さて、3つ目の記事から内容を抜粋します。

11.オオカミは人を襲うのでは?
人が、オオカミに正しく接しているならば襲われることはありません。もしもオオカミが人を日常的に襲う習性を持っているならば、北米やヨーロッパ、アジアなどオオカミが生息する地域では、毎日多くの人が襲われて、大きな社会問題になっていることでしょう(ちょうど、日本でクマやイノシシが日常的に人を襲っているように)。


もう、これで十分に彼らが獣害を語るに値しないことがわかります。クマによる人身事故は環境省のHPでまとめられています。それによれば、多い年でも全国で100件前後です。県単位だと一年に数~十数件です(多い年でね?)本当に呆れます。オオカミ協会のこの見解を支持する人は環境省の統計を否定できるだけの根拠を持ってきてください。
 彼らがやろうとしていることは、動物の再導入という保全生態でも非常に難しい分野です。それもオオカミのような大型動物ともなれば、世界の最前線クラスでしょう。しかし、悲しいことに彼らには目標を成し遂げるだけの地力がありません。
そもそも、基礎知識すらない人間に応用ができるわけないでしょう?
九九もできない人間が二次関数や微分できると普通思います?
オオカミ協会のやろうとしていることははっきり言って無謀です。
 さらに言えば、オオカミ再導入は広く専門家の支持を受けているわけでもありません。
オオカミ協会があんな体たらくですから取り合う価値も本来はありません。「戯言乙」で終わり。
学問的に相手にされるほどの質がないから著名人を取り込んで一般に向けた既成事実を作ろうとしているのでしょう。
そしてこのような方法はニセ科学やニセ医療が取ってきた方法です。専門家には相手にされないから知識のない人を巻き込んで勢力拡大を図る下劣な手段です。オオカミ協会がここまで堕ちたことは残念です。

日本オオカミ協会は明らかに獣害問題の専門家でない

2011-05-04 12:47:12 | 再導入
 日本オオカミ協会(以下オオカミ協会)のQ&Aに突っ込みを入れていきます。キーストーンも知らないブログよりましかと思えば、大して変わりませんでした。

3.日本の生態系はオオカミがいなくても問題ないのでは?
各地でカモシカやイノシシがいなくなっているのはシカの増えすぎが原因です。
中略
最近では増えすぎたイノシシやサルによる人身害すら頻発しています。山口県ではイノシシに襲われて死者が出ています。神戸では高齢女性が指を食いちぎられる事件も起きています(原因は、イノシシが急増していることに加えて、不用意な給餌であろうと考えられます)。これらすべては、捕食者オオカミを絶滅に追いやったことから始まったのです。今や、シカやイノシシの増加を狩猟だけでは抑制できません。

ねぇ、矛盾って知ってます?イノシシがいなくなっているのはシカが原因で、増えすぎたイノシシによる人身事故があるんですか。ある地域で局所的に起こっているという解釈をすれば、一応矛盾は回避できますが、元の文章は条件を限定せずに断定形で書いているわけでして。矛盾を回避する解釈そのものが難しいですね。


5.駆除や狩猟、柵でシカやイノシシ、サルなどによる被害の防除はできないのですか?
中略
しかし、研究者たちはかつて大台ケ原にオオカミが生息していたことを知っていながら、それを頂点とする食物連鎖の復活を議論していないのは実に奇妙なことです。研究者たちは、オオカミの役割にまるで気がついていなかったか、気がついていてもオオカミの復活に触れるのは具合が悪いと考えてあえて口にしなかったのかどちらかでしょう。こうした態度は、真実に忠実であるべき誠実な研究者としては恥ずかしいことです。


はいはい、せめて公式ブログの人間にキーストーン種をきちんと理解している人間を据えてから専門家名乗ってください。しかし、武田邦彦といい、誠実や真実という言葉を持ち出す自称専門家ほど言葉が薄っぺらくなるのは僕の錯覚でしょうか。

7.日本に生息していたオオカミは日本だけの固有種なのではありませんか?だから、再導入オオカミはマングースやアライグマと同じように外来種ではありませんか?
中略
トキもコウノトリの復活も大陸に生息する個体群からの再導入によって行われています。オオカミの再導入も、トキやコウノトリとまったく同じことなのです。こうした理由から、オオカミの再導入を、もともと日本に生息していなかったマングースやアライグマ、ブラックバスの持込と同じだと考えるのは完全に誤りなのです。したがって、もともと日本に生息していたオオカミと同じ種である、再導入オオカミが日本の生態系に悪い影響を及ぼすという心配は根拠のない杞憂といえるでしょう。


いや、現在のトキもコウノトリも定義的には外来生物でしょう?トキ、コウノトリなんかはある意味で保全生態学設立以前の保護とそれ以降で捻じれた保全生態学のコンコルドでしょう。まぁ、僕はもともとメタ個体群でないのに再導入することに否定的です。それをやる前にやることがいくらでもあるだろうと。

分類学的差異はあっても、生態には違いは認められなかったということなのです。それゆえに、日本列島の隣接地域に生息する亜種であるタイリクオオカミの導入は日本の生態系の再生に貢献こそすれ、好ましくない影響を及ぼすという根拠は見出されないのです。


外来生物でおなじみのフランケンシュタイン効果はどう考えるの?

11.オオカミは人を襲うのでは?
人が、オオカミに正しく接しているならば襲われることはありません。もしもオオカミが人を日常的に襲う習性を持っているならば、北米やヨーロッパ、アジアなどオオカミが生息する地域では、毎日多くの人が襲われて、大きな社会問題になっていることでしょう(ちょうど、日本でクマやイノシシが日常的に人を襲っているように)。


日常的にクマやイノシシが人を襲っているってどういう知識の仕入れ方をしているんですか(呆)。クマの被害(人身事故)は多い年でも“全国で”100件前後ですよ?山に入る人間なんて事故件数以上にいるわけで、どう解釈すれば日常的に人を襲うクマ像ができるのか理解できません。クマによる事故は無視するわけにはいきませんが、必要以上に恐怖をあおる必要もありません。このようなそもそもの基礎知識が足りないことを公式見解として載せてしまうオオカミ協会は明らかに獣害問題の専門家ではありません。

オオカミはシカの個体数を調節していたか?

2011-04-22 20:30:00 | 再導入
 オオカミ再導入に関しての私見その1です。
 オオカミがシカやイノシシの個体数を調節するというのがオオカミ再導入に賛成する人の根拠です。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか?僕が今年の冬に長野で取材したときには、そうとも言えない事例が多く見つかりました。ここでは、オオカミが存在していた江戸時代の長野県を例に考えてみます。長野県では、1688以前~1789年に長さ5km以上に及ぶ大規模なシシ垣が多数作られました。たとえば、10kmにも及ぶ戸隠のシシ土手、16kmもある木曽山脈南東麗の猪垣、鉢伏連峰西麓の猪土手にいたっては長さ28kmにも及んでいます。
シシ垣とは、山と耕作地の間に作られた石垣などのことです。物理的な障害で動物を遮断しようという点で、電気柵の原型ともいえるかもしれません。
シシ垣というのは、ほころんでくると、そこから動物が侵入してきますので、維持管理が大切です。作るにも維持するにも手間のかかるシシ垣、それも大規模なものが多数作られた背景にはそれだけ鳥獣害が深刻であったと見てとれます。特にシシ垣が多く作られたのが18世紀で、この時期はほぼ長野県全土で深刻な獣害があったということが窺えます。
また、シシ垣にはイノシシやシカの侵入を防ぐだけでなく、オオカミの侵入を防ぐ意図もあったようです。
この頃のシカの頭数はおそらく現在とほぼ変わらなかったと推測されています。むしろ、過去にシカが手を付けなかった高山帯のお花畑が現在荒らされていることを鑑みると、現在のほうが過去より多いかもしれません。この時期は当然、オオカミも健在だったわけですが、シカ、イノシシなどは普通に田畑を荒らしまわっていたわけですね。これを考えると、オオカミがいたところで鳥獣害を抑え込めるか?という疑問が生まれます。
長野県のシカを例にすると、地域差はありますが、江戸期から明治初期までは非常に多くの個体数が存在していたようです。長野県のシカの推定個体数の推移はこれ↓を参照してください。

この図は長野県林業総合センターの「ニホンジカの食害による森林被害の実態と防除技術の開発」より引用。

ここで見たように、シカは1800年代末から1900年代初期にかけて数を減らしていきました。こうなったのも、捕獲圧を含む人間の影響が大きいようです。明治17年(1884年)には長野県だけで1万7千丁以上の猟銃が保有されており、明治24年の全国統計では、全国で約8万8千6百人の狩猟者が登録されていました。それだけ獲物となるシカを含む大型動物がいたということの傍証です。ただし、長野県では明治27年(1894年)には大分少なくなっていた様です。諏訪大社の祭事で神前へ捧げるシカ12頭はこの年(明治27年)から塩漬けのシカ肉に変わっています。この時期は長野県でオオカミはほぼ絶滅しています。オオカミがシカなどの急激な減少にかかわっていたとは思えません。
その後、江戸時代に全県に生息していたシカは、ごく一部の地域のみに生息するまで減少し、一時(1923年)は国が保護するまで至りました。それから1980年代までは見かけることも非常にまれな動物でした。信州大学での研究ノートには一日に1頭見かければラッキーであったと書かれていたようです。
それから、数年ごとに個体数が2倍に増えて、現在被害を及ぼしています。結局のところ、シカの個体数増減に大きく影響を与えていたのは捕獲圧をはじめとする人間の影響だったわけです。

参考文献
小山泰弘(2008)長野県におけるニホンジカの盛衰 信濃第60巻第7号
小山泰弘・岡田充弘・山内仁人(2010) ニホンジカの食害による森林被害の実態と防除技術の開発

オオカミ再導入に対する簡潔な反論

2011-03-17 08:28:02 | 再導入
震災で非常に大変な思いをしておられる方が多い中、こんなものしか出せないというのも自分の無力さを思い知るのですが、オオカミ再導入に対する法的な問題点についての指摘です。

 一部の自治体で導入しようというオオカミ再導入案ですが、実際に放獣可能か以前の問題として却下されるかもしれません。
なぜなら、「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下管理法)で、彼らが導入しようとするタイリクオオカミが特定動物としてリスト入りしているからです。
さて、ここでこの法律での特定動物というのがどんなものか簡単に解説してみます。もしかしたら拙い理解かもしれませんので、適宜指摘をお願いします。

・特定動物って?
人に危害を加える恐れのある動物のことです。管理法では、哺乳類、鳥類、爬虫類が対象です。
・特定動物にはどういう規制がかかるの?
一定の基準を満たした施設内で、“逃がさない”ように飼うことが求められます。
・もしその規制を破ったら?
飼育許可の取り消しや罰金、懲役などがありえます。

オオカミが特定動物に入っている以上、これを野外に出すのは法律的に問題があるでしょう。仮に管理法上で問題がないとしても、外来生物の利用の観点からすれば、野外放逐を前提としたものはアウトです(これについてはいずれ)。
ここまでをまとめると、「法律的に無理ないし非常に難しいです」となります。オオカミ協会側がこういった情報を流さないのはある意味不思議ですよね?保全をするなら関連法くらい抑えておけよと思いますし。しかも個人でなく団体なのですから。
有意義な情報を教えてくださった方々にこの場を借りて感謝します。
参考資料
特定動物(危険な動物)の飼養又は保管の許可について
特定動物リスト
パンフレット

オオカミ再導入の私的論点整理

2011-02-19 23:05:02 | 再導入
 twitter上でtama_lion さんのご協力の元、まとめました。オオカミ再導入に関する私的な論点整理です。はっきり言って取り合う必要も本来はないのですが、コロッとなびいちゃう自治体もあるので仕方なくですね。

1.目的 シカなどの鳥獣を適正に保つ方法として見た場合 
争点.シカなどを本当に減らせるのか? 大型の野生動物を選択的に捕食するのか?
捕食したとして影響はいかほどか?たとえば、病死するような個体を捕食しても個体数に大きな影響は無い(病気の個体が除かれることで個体群が健全に保たれるくらいの意味はあるかもしれないが)。費用対効果はどうか?(後述するが大型動物の再導入には莫大な費用がかかる)

2.再導入計画としてみた場合 
争点 MVPS(最小存続可能集団サイズ)を確保できるか? 
再導入のための設備費用、人件費はどうするのか?
トキの場合は施設建設に約14億4千万円(用地費を含む)とされている。建設してからも世話をする人などが当然必要なわけで、それらの費用をどうするのか?

3.外来生物としてみた場合 
争点.野犬との交雑はどうするのか?交雑個体の扱いはどうするのか? 
そもそも、あからさまな野外への外来生物の導入が支持されるか?野外に放逐するというオオカミ再導入は「人間のコントロール下に置く」という外来生物利用の原則から明らかに逸脱している。
トキやコウノトリは事業が30年以上つないできてある意味、引くに引けないわけだけが、新規にそんなものが認められるか?  

4.獣害対策としてみた場合 
争点.家畜、人への影響は?本当に襲わないのか?狂犬病など感染症はどうするか?
人と軋轢が生じた場合、誰が対応するのか?厄介事を増やすだけではないか?

だいたいこんなところですか。これ以上踏み込むとなると、英語の分厚い資料と格闘になりそうです。

こんな面倒くさいことは考えたくないという方へ
以下のブログの記事がまとまっており参考になります。
Deer Management Crises in a National Park

シカの生態と餌環境の変遷についてと空間スケールで生物の移動を捉えることの重要性について。

チコにラット・コントロール・エージェントが務まるわけ
ありふれた生物、猫を題材に捕食者の家計簿について書かれた良記事。

日本オオカミ協会の奇妙な論理2

2011-01-27 22:44:41 | 再導入
 日本オオカミ協会(以下オオカミ協会)の杜撰な認識についての指摘も、これで一端終わりとします。はっきり言ってオオカミ協会の外来生物に対する認識も酷いの一言に尽きます。

環境省のオオカミ復活否定コメントへの批評②


以下引用

環境省の外来生物法のページです。
http://www.env.go.jp/nature/intro/1outline/list/index.html
特定外来生物にも未判定外来生物にも、オオカミの名はありません。外来生物ではないと判断されているということですね。
朝日新聞への環境省のコメントは、この自ら指定した外来生物法を無視されているようです。

引用終わり

・・・・・・何を言っているのか心底わからないです。法で規制されてないから外来生物で無いとか・・・。現実では、日本国内で生息する生物を動かすことで生じる国内外来生物問題というものもあって、対応に苦慮しているんですが、そんなことすら知らないようで。アユの種苗放流で琵琶湖産の魚類が全国に拡散したとか、調べればすぐに見つかるんですがね。人前で言ったら静まりかえるか笑われるかどちらかでしょう。
結局のところ、あがってもいない足を持ち上げて揚げ足取りをしているにすぎません。この程度で得意がるとかあわれ過ぎて言葉も(ry
ニホンオオカミが固有種であろうが無かろうが、海外産の個体を用いる以上、今の日本でオオカミは外来生物です。なぜなら、その地域に生息していない個体群を人間活動により持ち込んでいるからです。揚げ足を取ろうとする前に「外来種ハンドブック」くらい読むことをお勧めします。

日本オオカミ協会の奇妙な論理

2011-01-24 21:21:02 | 再導入
 どうも、日本オオカミ協会(以下オオカミ協会)のほうのブログでキーストーン種について訂正記事が出たようです。読んだんですが、・・・・・・前より酷くなってない?今回は展開の都合上、最後にリンクを貼ります。
まずは、キーストーン種の定義認識について。
以下引用
改めて今の学会内での定義を専門家に聞いてみました。どうやら違っているようです。もっと広くなっていました。
引用終わり
うん、酷いですね。たとえば、僕が前回出した「保全生態学入門」の初版出版は1996年。10年以上前です。もっと広くなっていたって知識のアップデート何年前で止まってるんですか(汗。このほかにもキーストーンのもともとの状態(石組みの橋を支える要で、もとは建築用語)をついこの前まで知らず、漬物石やピンのようなものとしてしばらく前までとらえていたとか・・・。一体あなたはこれまで何を読んできたんでしょうか?
そして出てきた弩級の論理展開。
      あれを見る前に言っておくッ!
      おれは今やつの論理をほんのちょっぴりだが体験した
     い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
        
        あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
       
        『やつはシカをキーストーンでない
         と言っていると思ったらいつのまにか
            キーストーンだと論証していた』
      
      な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
      おれも何を言われたのかわからなかった…
      頭がどうにかなりそうだった…    
      
      池田清彦だとか武田邦彦だとか
     そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
     もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

以下引用
そこから定義が拡大して、先に書いた教科書的な定義「その存在が他の多くの生物種(=生物群集)や生態系(生物群集+環境条件)に広く影響を及ぼすような生物種」ということになるわけです
が、専門家でない身としては、どうもしっくりきませんね。
特に「シカがキーストーン種」という表現は、納得できません。この元々の「キーストーン」という建築のイメージを知ってしまうと。
引用終わり

こんなことを言っておきながら、

以下引用
たとえばその動物がいなくなったらどうなるか、ということを考えれば、
○オオカミがいなくなる⇒シカの増加を抑えるものがいなくなり、生態系崩壊
○シカがいなくなる⇒植物を抑えていたものがいなくなり、植物繁茂?生物多様性増加
結果はまったく逆ではないですか。
引用終わり

いや・・・、それは裏を返せばそれだけシカそのものが植生に与える影響が強いってことでしょうが。なに、逆説的な論証をしてるんですか?

オオカミ協会の見解と裏腹に、海外ではシカをキーストーン種とする見方もそれなりにあるようです。グーグルで「deer keystone」とと検索するとdeer as keystoneといった内容の論文がすぐに見つかります。彼らは海外のことを調べていることをブログで誇らしげに語っていますが、その実、何も調べていないのではないかという疑問が浮かびます。
というか、やっぱり栄養段階の頂点の捕食者以外認める気がないんじゃぁ・・・。シカに納得できないとなるといわんやゾウやビーバーをやですよね。
しかし、まぁずいぶんと酷い認識の人間に公式ブログを任せたものです。オオカミ協会の程度が知れます。

問題の記事「キーストーン種について

・・・何でポルナレフのAAがないかって?エラーで貼れなかったんだよ(´・ω・`)

日本オオカミ協会の生態系への杜撰な理解

2011-01-18 18:08:43 | 再導入
 大分県のほうでオオカミ再導入の話があがっているようで、最近のうちのコメントもそのせいでしょうか。今回は日本オオカミ協会(以下オオカミ協会)の生態学の知識についての話です。
まずはこれを見てください。

環境省のオオカミ復活否定コメントへの批評①

( ゜д゜)ポカ~ン

・・・・・・(゜A゜)ハァ!?
最初にこれを読んだ時の僕の感想です。生態学をまがりなりにも学ぶ身としては「ハァ!?」としかなりませんでした。あまりにも杜撰すぎるもので反論とよぶのもおこがましいくらいです。こんなことを堂々と言える生態学徒がいることがいまだに信じられないくらいです。ええ、今も頭の中がポルナレフ状態です。
 そんなことばかり言ってもしょうがないので批判に移りましょう。今回はキーストーン種について。
以下引用
①神奈川新聞は、「キーストーン種」をシカだと勘違いしているようです。つまり基本的な知識不足。キーストーン種とは、頂点捕食者のことを言います。この点は誰も異論がないと思います。
引用終わり
異議あり!キーストーン種というのはその生態系内の生物相互作用の要となる種であり、その有無が生態系の性質に大きな影響を与える種のことです。栄養段階で単純に決まっているわけではありません。

HPの方の書評でも同内容のことを言っています
以下引用
その二は、多様な生物によって組み立てられている構造物としての生態系は、要としての生物種を取り去ると崩壊するということ。石組みの頂点に置かれる要石(キーストーン)に譬えられる種とは、紛れもなく「生態系の頂点に立つ捕食者」のことである。注意しなければいけないのは、キーストーン種は「中間」捕食者ではなくて、あくまで「頂点」捕食者なのだ。
引用終わり

はっきり言ってこんなことを臆面もなく言いだす時点でお話にならないです。じゃあ、キーストーン種の例としてよくあげられるラッコやゾウ、ビーバーはどう解釈するんでしょう?ラッコはシャチなどに捕食される彼らの言うところの中間捕食者で、ゾウやビーバーに至っては捕食者ですらありません。
 ここで、保全生態学の代表的な教科書にはどうあるか見てみましょう。
文一総合出版の「保全生態学入門」のP64にはこうあります。
以下引用
キーストーン種は、その有無が生態系の性質に非常に大きな影響を及ぼす種である。生物群集における生物間相互作用の要をなす種であるともいえる。群集レベルでの分析がある程度進んだ生態系では、しばしばそのような種の存在が認識されている。ある種の自然あるいは半自然の草原生態系では、大型の草食動物がキーストーン種の役割を担っている。
引用終わり
このほかにもキーストーン種の例としてウサギが紹介されていたりします。
 
もうひとつ、文一総合出版からですが「保全生物学のすすめ 改訂版」P39からも引用します。
以下引用
生物群集内で、同じ生態学的特徴(ギルド)を持つ種や類似の種からなるグループが、その他の多くの種の生存を左右する重要な役割を果たしていることがあり、このような種やグループはキーストーン種(keystone speacies)と呼ばれる。
引用終わり
この本ではキーストーン種としてコウモリなどが紹介されています。意外に思われる方もいるかもしれませんが、砂漠の植物にとってオオコウモリがポリネーター(送粉者)として果たす役割は大きいのです。
このように、キーストーン種というのは最上位の捕食者に限らないことがお分かりいただけたと思います。いったい、オオカミ協会の人間は生態学の何を学んだというのでしょうか?キーストーン種というのは非常に重要な概念でこれを正しく把握していないというのは生物間相互作用に興味がない、地図も読めないのに山に入るようなものなのですが。