キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

ふるさとの花

2011-04-11 09:40:37 | 季節の花々
            

       もう何十年も前に離れたふるさと吉野で、思い出に残っている花といえば、この

       山吹でしょうか。今頃は緑の野山に、黄金色の彩りを添え初めているでしょう。

          ほろほろと山吹散るか滝の音

       という芭蕉の句は、まさに我がふるさと川上村西河の奥にある蜻蛉の滝で作

       られたようです。「ほろほろと」という擬態語で、滝の水音を背景にして、黄色い

       花が散りゆくさまが鮮やかに目に浮かび、いつも素晴らしい句だなと思います。

            

       山深い我が家の辺りよりさらに山を分けいったところに「波津(はず)」という

       地名の所があります。この山奥が「波津」というのはどういう訳だろうと、昔

       から思っているのですが、いまだに分かりません。ここは以前から陶芸家な

       どが集まる一種の芸術家村匠の聚になっています。そこの芝桜が素晴らし

       いんです。鮮やかな色とりどりの絨毯、思わず息を飲みます。

            

       中でも一番心に残っている私のふるさとの花は著莪。毎年春になると家の裏の

       小暗い杉山の裾一面に著莪の花が咲き、まるで白い星を散りばめたようになっ

       たのを思い出します。決して好きな花とはいえませんが、何とはなしに不安だ

       った思春期の頃の自分と重なる懐かしい花です。

              花著莪やくらきをたどる吉野びと    原裕

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