超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

意識による状態ベクトルの収縮―量子観測理論を支持する実験

2007-01-29 | 論文ガイド
<PA2003(23)>

量子理論と超心理学の接点の論文。この説明の理解には物理学の
知識が必要です。

●ディック・ビールマン&エヴァン・ハリス・ウォーカー
 「意識による状態ベクトルの収縮―量子観測理論を支持する実験」

ウォーカーの量子観測理論(1971年)では、量子的な重合せ状態は、
観測機器と観測者の意識によってはじめて状態が確定するとされる。

1977年にその趣旨にのっとった実験がホールによって行なわれた。
それは重ね合わされた量子状態を測定する第1の測定器と、数ミリ秒
遅延したあと、またそれを測定する第2の測定器からなる実験系で、
第1の測定器の数値を人間が見たり見なかったりする場合に、それを
知らない第2の測定器を観測する人間が、第1の測定器が見られたか
見られなかったかが分かるという実験であった。それが可能な理論的
理由は、もし第1の測定器が見つめられていたら、その意識によって
状態が収縮した信号が第2測定器に至り、第1の測定器が見つめられ
ていなければ、状態が重ね合わされたままの信号が第2測定器に至る。
第2測定器を見つめる人間の意識は、すでに状態が収縮した信号か、
または状態を自らの意識で収縮させるかの違いが知覚できるはずだ。

ホールの実験がうまくいくと、テレパシーのような現象が見られるはず
だった。しかし、実験結果は否定的であった。そこで今回、実験を2点
改良した。(1)第1の測定器に対する第2の測定器の遅れを1秒に
のばした。というのは、リベットなどの最近の意識研究では、意識が
働くまでに0.5秒ほどの時間を要することが判明している。ならば、
ホールの実験では、第1の測定器を見つめていても、状態の収縮まで
時間がかかるので、第2の測定器には依然として重ね合わされた状態
ままの信号が至っている。(2)第2測定器を見る人間の脳波を記録
して、差異を検出する。というのは、第2測定器を見る人間は、信号の
違いを知覚していても、それが潜在意識レベルで働き、それを発話報告
できない可能性がある。

今回の改良実験をしたところ、10箇所のうち2箇所の脳波に5%有意、
1箇所に0.05%有意の差異が検出された。改良実験は成功し、量子
観測理論を支持するデータを提供した。