見てきました
Bunkamura ザ・ミュージアム
会期は2014年1月2日から2014年3月9日。
19世紀フランスを代表する壁画家ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)
日本初の個展です。
「その1」では第1章と第2章を扱ったため、「その2」では残りの第3章、第4章を描いていきます。
《第3章:アルカディアの創造 リヨン美術館の壁画装飾へ 1870-80年代》
1870年の普仏戦争、続くパリ・コミューンにより、パリ市街は壊滅状態となります。
廃墟と化した光景を前にして、平和を切望したシャヴァンヌは理想郷である"アルカディア"を描き始めます。
「気球」「伝書鳩」
2つ並べられた同サイズの作品。
これらは普仏戦争時のプロイセン軍によるパリ包囲網に対するレジスタンスを描いたもの。
パリを救う努力を主題としています。
「気球」では銃を片手にした女性が遠ざかる気球を見送る後姿が描かれています。
「伝書鳩」では女性が伝書鳩を抱きかかえ、上空から襲ってくる鷹から守っています。
どちらの作品にも描かれた女性はパリの象徴とされています。
気球は内務大臣のガンベッタがパリを脱出する際に使ったもの。
そして自らの無事を伝書鳩に託してパリ市民に伝えたとか。
フレスコっぽい印象で人物が有元利夫っぽいです。
女性がたくましく見えます。
「プロ・パトリア・ルドゥス<祖国のための競技>」
この名で2つの作品が展示されています。
が、もともとこの作品は1つで、アミアンのピカルディ美術館の壁画の縮小版。
縮小版といっても大きなほうは横幅280cm、小さいほうも125cmで合わせて400cm越えの大きなもの。
実物は17mあるそうです。
農村での槍投げの様子が描かれています。
左側の作品から投げて右側の作品の木にその槍が刺さっています。
切り離された後、長らく行方不明となり、再び発見されたのはつい最近のこと。
2つは所有者が違うこともあり、並んで展示されるのは約100年ぶりとのこと。
「キリスト教の霊感」
「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」
「古代の光景」
この3つの作品はリヨン美術館の壁画の縮小版。
並んで展示されています。
そして後ろを振り返ると、あら。
リヨン美術館の壁画のかなり大きな写真が展示されています。
実際の壁画の様子が分かっちゃう。
こうゆう展示、いいなぁ。
まずは「キリスト教の霊感」
イタリア、ピサにあるカンポサントに壁画を描く修道士が描かれています。
これは芸術制作における宗教的な霊感を表しているそうです。芸術の要素としての感性。
カンポサントとは墓所のことで、キリスト教徒の芸術における心情の源とか。
凛として筆をとる修道士、見守る人々。
小さなドラマがあります。
静けさが漂うのですが、空の青さと奥に見える山々が明るくしています。
「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」
これはシャヴァンヌの壁画の最高傑作のひとつとされています。
建築、彫刻、絵画を擬人化した3人の女性と9人のミューズが月桂樹、松、樫の茂る森に集います。
背景には大きな山、手前には大きな池や門が立ち、不思議な景色を作り出しています。
淡い色でまとめられた美しい世界は柔らかくミューズたちの世界に相応しい。
ミュージアムの語源はミューズ。
まさに美術館に相応しいテーマです。
「古代の光景」
そのままですが、古代ギリシャをイメージしたかのような作品。
海辺の岩場にいる人々は彫刻のよう。
遠くに描かれた馬はパルテノン神殿の彫刻の馬だそう。
「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」
なんと島根県立美術館所蔵!!
シャヴァンヌの作品って日本にはほとんどなく今回も海外からの貸出品ばかり。
そんななか、大原美術館と島根県立美術館が素晴らしい作品所蔵していて驚きです。
この作品はパンテオンの壁画の縮小版。
聖ジュヌヴィエーヴはパリの守護聖人。
描かれているのはパリ郊外ナンテール。
少女ジュヌヴィエーヴが聖ゲルマヌスに見出され、聖人としての生涯を告げられる場面。
お告げに驚く両親や、彼らを見つめる人々など、全ての視線が聖人の2人に向くように描かれています。
背景には山が描かれ、前方には川が流れています。
時は朝。
爽やかな陽の光に満ち溢れた空気は、聖ジュヌヴィエーヴを見出す場面にぴったりです。
「聖人のフリーズ」
先ほどの「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」の上にあるフリーズの縮小版。
フランス各地の守護聖人たちを並べたもの。
金地の背景に聖人の行進とドラゴンや骸骨を持つ聖人も描かれています。
装飾的でビザンティン美術の雰囲気がある作品。
「夏(グワッシュ)」
1873年完成の「夏」「収穫」の習作か完成後の作とされるそう。
平和と豊饒への賛歌が描かれています。
普仏戦争やパリ・コミューンからの回復を祈る、、平和への思いが感じられる作品。
「海辺の乙女たち」
海辺の斜面でくつろぐ3人の半裸の女性。
一人はこちらを向き、もう一人は横を向いて、もう一人は後ろ向きに立っています。
全員ばらばら。
後ろ向きに立っている女性が特に目立つ。
長い髪を梳きながら経っているのです。
物語の一場面のような印象。
人魚が人間になってくつろぐ、とかいっても信じられる。
「美し国」
"喜びが溢れる場所"の典型的な表現とのこと。
ゴッホやスーラ、マティスやドニやピカソらに、理想郷としてのアルカディアのイメージを提供しました。
取っ組み合う子供、くつろぐ女性。
のどかな時間が流れています。
《第4章:アルカディアの広がり パリ市庁舎の装飾と日本への影響 1890年代》
1891年、シャヴァンヌは国民美術協会の会長に就任します。
パリ・コミューンで焼失した、パリ市庁舎の壁画。
他にも、ルーアン美術館、パンテオンの最終作、アメリカのボストン公共図書館などの壁画装飾の依頼が舞い込み、名実ともに画壇のトップとなりました
1895年には、シャヴァンヌを讃える大祝宴がオーギュスト・ロダン主宰で開催され、600人もの画家、作家、美術行政官ら、フランスを代表する人々が集いました。
シャヴァンヌの名声は、フランスのみならず、各国より依頼や来訪が。
そこには、日本近代洋画を確立することとなる画家・黒田清輝も。
黒田のシャヴァンヌへの傾倒は、帰国後日本で広まります。
1898年、シャヴァンヌは74歳の生涯を閉じました。
「メロンや桃などの果物と白い皿のある静物」
シャヴァンヌ作品の中で珍しい静物画。
無造作に置かれた果物たちが逆に日常の感じを演出しています。
壁画と違って新鮮な印象。
色使いも穏やかです。
「りんごの収穫」
りんごの果樹園で半裸の女性が収穫したりんごの入ったかごに手を置いています。
その近くにはりんごを食べる幼児。
灰色がかった柔らかな色彩で、装飾的に描かれています。
黒田清輝「昔語り下絵(構図Ⅱ)」
黒田はフランス滞在中にシャヴァンヌに助言を受けたこともあり、その影響が見て取れます。
この作品は平家物語の一説をテーマにした住友家の壁画のための習作。
下絵も一緒に並んでいましたが、シャヴァンヌ同様に細かいマス目が描かれていたことに驚きです。
黒田も細かい部分まで考えてから制作をしていたことが分かります。
シャヴァンヌは古代神話的なモチーフを扱っていましたが、黒田は日本の神話や昔の話に置き換える。。
シャヴァンヌが日本の洋画に与えた影響も大きそうです。
今までほとんど知らなかったシャヴァンヌ。
なんて、なんて素晴らしいんだ!!!!!
とっても満足のいく展示でした。
まだ1月だけど。。年末に選ぶ美術展大賞狙えると思う。笑
おすすめです。
ぜひぜひ見に行ってほしい。
とてもいい展示だったのに人が少なくで嬉しいような、悲しいような。
もっと色々な人に知ってもらえたらもっと展示が見れるかもしれないのに。。
また見たい。
大原美術館で展示されている状態の「幻想」も見たいし、この展示の巡回を追って島根にも行きたい。
この展示、構想から15年越しの実現だそう。
島根県立美術館の蔦谷氏の熱意から始まったそうです。
今から15年前、この展示の監修をしている美術史家エメ・ブラウン・プライス氏をフランスに訪ねたことから全ては始まったそう。
これ、島根県立美術館で見たらもっともっと感動するんじゃないかな。
どんな展示方法をとるのか見てみたい。
今年は西方へ旅行かな。。
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Bunkamura ザ・ミュージアム
会期は2014年1月2日から2014年3月9日。
19世紀フランスを代表する壁画家ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)
日本初の個展です。
「その1」では第1章と第2章を扱ったため、「その2」では残りの第3章、第4章を描いていきます。
《第3章:アルカディアの創造 リヨン美術館の壁画装飾へ 1870-80年代》
1870年の普仏戦争、続くパリ・コミューンにより、パリ市街は壊滅状態となります。
廃墟と化した光景を前にして、平和を切望したシャヴァンヌは理想郷である"アルカディア"を描き始めます。
「気球」「伝書鳩」
2つ並べられた同サイズの作品。
これらは普仏戦争時のプロイセン軍によるパリ包囲網に対するレジスタンスを描いたもの。
パリを救う努力を主題としています。
「気球」では銃を片手にした女性が遠ざかる気球を見送る後姿が描かれています。
「伝書鳩」では女性が伝書鳩を抱きかかえ、上空から襲ってくる鷹から守っています。
どちらの作品にも描かれた女性はパリの象徴とされています。
気球は内務大臣のガンベッタがパリを脱出する際に使ったもの。
そして自らの無事を伝書鳩に託してパリ市民に伝えたとか。
フレスコっぽい印象で人物が有元利夫っぽいです。
女性がたくましく見えます。
「プロ・パトリア・ルドゥス<祖国のための競技>」
この名で2つの作品が展示されています。
が、もともとこの作品は1つで、アミアンのピカルディ美術館の壁画の縮小版。
縮小版といっても大きなほうは横幅280cm、小さいほうも125cmで合わせて400cm越えの大きなもの。
実物は17mあるそうです。
農村での槍投げの様子が描かれています。
左側の作品から投げて右側の作品の木にその槍が刺さっています。
切り離された後、長らく行方不明となり、再び発見されたのはつい最近のこと。
2つは所有者が違うこともあり、並んで展示されるのは約100年ぶりとのこと。
「キリスト教の霊感」
「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」
「古代の光景」
この3つの作品はリヨン美術館の壁画の縮小版。
並んで展示されています。
そして後ろを振り返ると、あら。
リヨン美術館の壁画のかなり大きな写真が展示されています。
実際の壁画の様子が分かっちゃう。
こうゆう展示、いいなぁ。
まずは「キリスト教の霊感」
イタリア、ピサにあるカンポサントに壁画を描く修道士が描かれています。
これは芸術制作における宗教的な霊感を表しているそうです。芸術の要素としての感性。
カンポサントとは墓所のことで、キリスト教徒の芸術における心情の源とか。
凛として筆をとる修道士、見守る人々。
小さなドラマがあります。
静けさが漂うのですが、空の青さと奥に見える山々が明るくしています。
「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」
これはシャヴァンヌの壁画の最高傑作のひとつとされています。
建築、彫刻、絵画を擬人化した3人の女性と9人のミューズが月桂樹、松、樫の茂る森に集います。
背景には大きな山、手前には大きな池や門が立ち、不思議な景色を作り出しています。
淡い色でまとめられた美しい世界は柔らかくミューズたちの世界に相応しい。
ミュージアムの語源はミューズ。
まさに美術館に相応しいテーマです。
「古代の光景」
そのままですが、古代ギリシャをイメージしたかのような作品。
海辺の岩場にいる人々は彫刻のよう。
遠くに描かれた馬はパルテノン神殿の彫刻の馬だそう。
「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」
なんと島根県立美術館所蔵!!
シャヴァンヌの作品って日本にはほとんどなく今回も海外からの貸出品ばかり。
そんななか、大原美術館と島根県立美術館が素晴らしい作品所蔵していて驚きです。
この作品はパンテオンの壁画の縮小版。
聖ジュヌヴィエーヴはパリの守護聖人。
描かれているのはパリ郊外ナンテール。
少女ジュヌヴィエーヴが聖ゲルマヌスに見出され、聖人としての生涯を告げられる場面。
お告げに驚く両親や、彼らを見つめる人々など、全ての視線が聖人の2人に向くように描かれています。
背景には山が描かれ、前方には川が流れています。
時は朝。
爽やかな陽の光に満ち溢れた空気は、聖ジュヌヴィエーヴを見出す場面にぴったりです。
「聖人のフリーズ」
先ほどの「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」の上にあるフリーズの縮小版。
フランス各地の守護聖人たちを並べたもの。
金地の背景に聖人の行進とドラゴンや骸骨を持つ聖人も描かれています。
装飾的でビザンティン美術の雰囲気がある作品。
「夏(グワッシュ)」
1873年完成の「夏」「収穫」の習作か完成後の作とされるそう。
平和と豊饒への賛歌が描かれています。
普仏戦争やパリ・コミューンからの回復を祈る、、平和への思いが感じられる作品。
「海辺の乙女たち」
海辺の斜面でくつろぐ3人の半裸の女性。
一人はこちらを向き、もう一人は横を向いて、もう一人は後ろ向きに立っています。
全員ばらばら。
後ろ向きに立っている女性が特に目立つ。
長い髪を梳きながら経っているのです。
物語の一場面のような印象。
人魚が人間になってくつろぐ、とかいっても信じられる。
「美し国」
"喜びが溢れる場所"の典型的な表現とのこと。
ゴッホやスーラ、マティスやドニやピカソらに、理想郷としてのアルカディアのイメージを提供しました。
取っ組み合う子供、くつろぐ女性。
のどかな時間が流れています。
《第4章:アルカディアの広がり パリ市庁舎の装飾と日本への影響 1890年代》
1891年、シャヴァンヌは国民美術協会の会長に就任します。
パリ・コミューンで焼失した、パリ市庁舎の壁画。
他にも、ルーアン美術館、パンテオンの最終作、アメリカのボストン公共図書館などの壁画装飾の依頼が舞い込み、名実ともに画壇のトップとなりました
1895年には、シャヴァンヌを讃える大祝宴がオーギュスト・ロダン主宰で開催され、600人もの画家、作家、美術行政官ら、フランスを代表する人々が集いました。
シャヴァンヌの名声は、フランスのみならず、各国より依頼や来訪が。
そこには、日本近代洋画を確立することとなる画家・黒田清輝も。
黒田のシャヴァンヌへの傾倒は、帰国後日本で広まります。
1898年、シャヴァンヌは74歳の生涯を閉じました。
「メロンや桃などの果物と白い皿のある静物」
シャヴァンヌ作品の中で珍しい静物画。
無造作に置かれた果物たちが逆に日常の感じを演出しています。
壁画と違って新鮮な印象。
色使いも穏やかです。
「りんごの収穫」
りんごの果樹園で半裸の女性が収穫したりんごの入ったかごに手を置いています。
その近くにはりんごを食べる幼児。
灰色がかった柔らかな色彩で、装飾的に描かれています。
黒田清輝「昔語り下絵(構図Ⅱ)」
黒田はフランス滞在中にシャヴァンヌに助言を受けたこともあり、その影響が見て取れます。
この作品は平家物語の一説をテーマにした住友家の壁画のための習作。
下絵も一緒に並んでいましたが、シャヴァンヌ同様に細かいマス目が描かれていたことに驚きです。
黒田も細かい部分まで考えてから制作をしていたことが分かります。
シャヴァンヌは古代神話的なモチーフを扱っていましたが、黒田は日本の神話や昔の話に置き換える。。
シャヴァンヌが日本の洋画に与えた影響も大きそうです。
今までほとんど知らなかったシャヴァンヌ。
なんて、なんて素晴らしいんだ!!!!!
とっても満足のいく展示でした。
まだ1月だけど。。年末に選ぶ美術展大賞狙えると思う。笑
おすすめです。
ぜひぜひ見に行ってほしい。
とてもいい展示だったのに人が少なくで嬉しいような、悲しいような。
もっと色々な人に知ってもらえたらもっと展示が見れるかもしれないのに。。
また見たい。
大原美術館で展示されている状態の「幻想」も見たいし、この展示の巡回を追って島根にも行きたい。
この展示、構想から15年越しの実現だそう。
島根県立美術館の蔦谷氏の熱意から始まったそうです。
今から15年前、この展示の監修をしている美術史家エメ・ブラウン・プライス氏をフランスに訪ねたことから全ては始まったそう。
これ、島根県立美術館で見たらもっともっと感動するんじゃないかな。
どんな展示方法をとるのか見てみたい。
今年は西方へ旅行かな。。
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