RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界 (その1)

2014-01-10 21:30:00 | 美術
見てきました

Bunkamura ザ・ミュージアム

会期は2014年1月2日から2014年3月9日。

19世紀フランスを代表する画家、ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)
私だって「貧しき漁夫」ぐらいしか知らない。
(現在、国立西洋美術館の「モネ展」で展示中です。)
日本での知名度はとっても低いのですが、彼から影響を受けた画家ならご存知のはず。
セザンヌにゴーギャン、スーラ、ドニ、ピカソ、マティス。
日本人なら黒田清輝、藤島武二、青木繁などなどなど。。。
なんだかブリヂストン美術館でおなじみのメンツです。笑
同年代の画家には、エドゥアール・マネ、ギュスターヴ・クールベ、ギュスターヴ・モローらがいます。
その3人は知名度あって、日本でも何度も見れるのに、シャヴァンヌ……
特にモローはシャヴァンヌと同じ年に亡くなっています。
モローは昨年、汐留ミュージアムで展示もあったのに、シャヴァンヌ……

イタリアのフレスコ画を思わせる落ち着いた色調で描かれた作品は、桃源郷と謳われたアルカディアを彷彿とさせます。
それらの含意に満ちた奥深い世界は、象徴主義の先駆的作例と言われています。
古典的様式を維持しながら築き上げられたシャヴァンヌの芸術は、新しい世代の画家のみならず、日本近代画にも影響を与えました。

さて、現代日本での評価はさておき。
フランスでは知らぬ者はいない、偉大な芸術家でした。
ソシエテ・ナショナル・デ・ボザール(国民美術協会)の会長を努めていました。
黒田清輝はラファエル・コランの紹介状を持って、シャヴァンヌに会いに行っています。

そんな偉大な芸術家、シャヴァンヌ。
大きな仕事の依頼がたくさんありました。
当時のパリはナポレオン3世によるパリ大改造計画中。
多くの公共の建物が建造され、そこに壁画を依頼されるようになります。
そう、これが展示が開催されなかった理由。
作品の多くが壁画となっているため【持ち運びできない=展示がなかなか出来ない】のです。
作品が見れないのなら知名度低いのは仕方ない。
シャヴァンヌは壁画として制作した作品を手元に残す目的で縮小版を自ら制作していました。
今回の展示はそういった縮小版と単体の油彩画を世界中の美術館から集め開催されています。
日本初の「シャヴァンヌ展」です。
いや~、チラシ見てからうきうきでしたが、さらに期待が高まります。
今回、2回に分けて書いていきます。

《第1章:最初の壁画装飾と初期作品 1850年代》
リヨンの裕福な家庭に生まれたシャヴァンヌ。
22歳のときにイタリアを訪れたことがきっかけで、画家を志します。
37歳のときに壁画装飾のための油彩画が国家買い上げに。
ここから彼に壁画の仕事が次々と舞い込んできます。
公共建築の壁画を手がけたことで名を馳せるようになりました。

「自画像」
33歳の時の自画像です。
少し横を向いており、顔の右半分は影に吸い込まれ見えません。
口元もひげに覆われ、見えるのは左目と鼻ぐらい。
厳しい表情のように見えます。

「アレゴリー」
異なる服装の3人の男性が描かれています。
それぞれ、建築、宗教、文学という文化の寓意です。
建物の中で会談しているようにも見えます。
色も描き方も綺麗なのですが、のっぺりとした印象。

「ルイ・ド・ヴォージュラの肖像」
描かれているのはシャヴァンヌの甥。
10歳のときの肖像です。
穏やかにまっすぐこちらを見つめています。
人物画は多いのですが、肖像画は少ないため、静かな作品なのに目立っていました。

「漁夫」
モデルのようなポーズで花咲く野に腰掛ける裸の男性。
片足だけ水に使っています。
この澄んだ表現が美しい。
ですが、空は雲が多く荒れ模様。
向こうに見える木は枯れ木。
なんだか不穏な様子が漂っています。

1854-55年、シャヴァンヌは私邸の食堂に壁画を描きます。
これが壁画の初仕事。
聖書に基づく労働の場面を四季になぞらえています。
「奇跡の漁り(習作)」
これは春。
ルカの福音書の場面です。
有名なガリラヤ湖での場面。
魚がいっぱい獲れ、猟師がびっくりしている顔が印象的です。
「ルツとボアズ(習作)」
夏です。
ルツ記から穀物。
穀物からパンが作られますから。
人物に顔は描かれず、その場面のみ象徴的に描かれています。
「葡萄酒造り(習作)」
秋です。
ノアの物語からで秋のワイン造り。
真ん中の大きな樽の上で葡萄を踏むのはノアの息子ハムと思われる人物。
少し見える空は青く明るく、たくさんの収穫を祝うかのよう。
「放浪息子の帰還(習作)」
これだけ少し違うのですが。。
ルカ福音書に基づく話で、この場面を描くとき、大体は懺悔する息子に焦点が当てられるのですが、ここでは画面左上、階段の上に小さく描かれています。
大きく描かれているのは帰還のパーティーの準備の場面。
食堂に相応しい明るいテーマです。
色彩は落ち着いていて馴染みやすい。

《第2章:公共建築の壁画装飾へ アミアン・ピカルディ美術館 1860年代》
1861年、シャヴァンヌはサロンに「コンコルディア(平和)」と「ベルム(戦争)」を出品。
前者が国家買上げとなりました。
この2つは、対となる「労働」と「休息」とともに、ピカルディ美術館に設置されます。
それぞれの詳細は下記に記していきます。
(「戦争」は展示がありませんでした。)
シャヴァンヌが壁画を描くとき、油彩のカンヴァスをマルフラージュという方法で建築の壁面に設置していたそうです。

「平和」
これは国家買い上げとなった作品。
ラテン語で「CONCORDIA(平和)」という題です。
「BELLUM(戦争)」と共にサロンに出展されました。
ヤギのミルクを絞る人、会話する人、物を運ぶ人。。
日常が描かれています。

「労働(習作)」
火をおこす人、丸太を切る人、、海辺で様々な労働をする男たちと、右下に授乳する母親。
何度も修正を加えた跡が見られ、全体的にはぼんやりとしています。

「休息」
労働後の休息を表現したもの。
座り込む人や老人の周りに集まり話を聞く人などくつろいだ様子が見られます。
もう一つそっくりな「休息」があるのですが、こちらのほうが習作のようです。

「休息」
そのもう一つのほう。
こちらのほうが色彩がはっきりし、人々の表情も読み取れます。
またこちらの作品のほうが、人々が服を着ている率が高い。
左にいる女性は鎌を持っていますが、この女性、もう一つの「休息」では糸巻きを持っていました。
またこちらの作品では左の奥に家族連れらしき一団も見えます。
やわらかくフレスコ画らしい雰囲気のある作品。

「労働」
先ほどの習作とは違い、はっきりと描かれています。
壁画完成後の縮小版です。
習作とほぼ同じ、海辺で労働する男性と授乳する女性が描かれていますが、牛を使い農作業に勤しむ姿も見られます。
全体的にはっきりとしています。
まわりに装飾的な額が描かれていますが、それは壁画に基づいたもの。
糸巻き棒など主題とかかわりのあるものが描かれていました。

「水浴(<アヴェ・ピカルディア・ヌトリクス>関連作)」
この地方の繁栄、豊饒、伝統を祝福する壁画との関連作品とのこと。
明るい景色の中、裸婦たちが水浴びしています。
色彩も穏やかで優しい印象。

「ギリシアの植民地、マッシリア」
この作品の目立つ点はマス目が描かれていることでしょうか。
輪郭線など構想の跡が残っている習作です。
シャヴァンヌがどのように構図を考えていたのかが分かる作品。
マッシリアとは現在のマルセイユのことだそうです。

「眠り(習作)」
主題は叙事詩「アエネイス」のトロイア戦争の描写です。
ギリシャ人が去った後、トロイア人たちの最初の眠りを描いたもの。
水平線に沈みゆく陽がつくりだすまどろんだ空気が漂います。

「裸婦(<アヴェ・ピカルディア・ヌトリクス>のための習作)」
こちらもマス目が目立ちます。
人物よりマス目。
□だけではなく、斜めの線も入れられています。
このあたりの習作はみんなマス目が細かく入っていました。

「瞑想」
これはヴィニョン邸の壁画の原型となった作品。
背景は深い森。
白い古代風の服を着た女性が左手を木に、右手を額にあて目を瞑っている作品。
装飾的です。
古典的なミューズとのことですが、家にこんなミューズがいたらとても嬉しい。
幻想的な雰囲気があり美しいです。

「幻想」
こちらは個人蔵の作品。
次に書く、大原美術館所蔵品の約20年後の作品。
シャヴァンヌは自身が描いたものを再度描くということが度々あったそうです。
鮮やかな色彩で描かれています。
家に飾るならこのサイズでこの色彩は明るくていいなぁ。

「幻想」
大原美術館所蔵の作品。
この作品もヴィニョン邸の壁画の一つ。
森の中の岩に腰掛けた裸のニンフが、葡萄の蔓を使ってペガサスを捕らえようと投げたところ。
手前には裸の子供が座りこんで花で首飾りを作っています。
かわいい。
先ほどの「幻想」と比べ全体的に青みがかった色調でますます幻想的な雰囲気を高めています。

「警戒」
こちらもヴィニョン邸の壁画の一つ。
すごいぞ、ヴィニョン邸。
海辺の岩の上で火のついたランプを掲げる姿は自由の女神っぽい。。

ここまでが第2章になります。
かなりの時間を要して見てきましたが、作品はこの先のほうが多く、また代表作が並んでいます。
「その2」でじっくり記したいと思います。
書くのに時間がかかる。。。



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