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金田正一はでっかい男だった

2019-10-30 07:00:00 | 編集手帳

10月8日 読売新聞「編集手帳」

 

巨人軍元投手、
金田正一さんはかつて高額の年俸の使い道を聞かれ、
こう答えたことがある。

「プロは自分の体にカネをかければいい。
 わしは1か月の食費が50万円になる。
 本職のコックさんをおいて野球のための食事をとる。
 一人ではさびしいので、
 誰かかれかに来てもらうから、
 こんな金額になる。
 ま、
 ダイヤモンドを食ってるような気持ちだな」

ガハハハ…
いかにもあの豪快な笑いが聞こえてきそうな談話が1969年10月の本紙にある。
当時の大卒初任給は3万円ほどだった。
勝ちを積みあげるための体作りへの執念はもちろん、
後輩の面倒見のよさがうかがえる。

国鉄から巨人に移籍した年、
オープン戦で利き手の左人さし指を骨折した。
だが開幕戦、
不屈の闘志でマウンドに上がると、
自ら本塁打を放ち、
完投で勝利を飾った。
この1勝が巨人V9のスタートとなった。
後に「ほかの399勝にまさる1勝だった」と語っている。
開幕戦で勝つという当時の川上哲治監督との約束を果たせたことが誇りだと。

通算400勝の金字塔を打ち立てた金田さんが86歳で亡くなった。
記録も心意気も、
でっかい男だった。

 

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