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由来に思いをはせ、お互いの国を尊重する

2019-10-16 07:00:00 | 編集手帳

9月22日 読売新聞「編集手帳」


 太平洋の無人島、
初めての人々を乗せたカヌーが着いたのは1000年前のことらしい。

島の名をアオテアロア、
長く白い雲の下の地、
と呼んだ彼らは、
18世紀に英国からの探検隊が本格的に接触するまで独特の文化や習俗、
信仰を育んだ。
現在のニュージーランド、
先住民マオリ族の話である。
きのうラグビーW杯の試合が始まる前に、
かの国の歴史をにわか勉強した。

キックオフ直前の猛々しい民族舞踊、
ハカも、
マオリに由来する。
どんな意味があるのか。
遠かった国の根っこに興味がどんどん湧いてくる。
スポーツの大会がもたらす効用の一つだろう。

タトゥー(入れ墨)をした選手がいる。
現代の日本では反社会勢力のイメージが強いが、
かつてマオリの首長たちは美しく、
精緻(せいちな)タトゥーを施すことを旨とした。
日本のプールやジムにおいては、
出場選手はタトゥーを隠すように。
ラグビーの国際団体が示した方針に、
ニュージーランドチームは賛意を示していたそうだ。

それぞれがたどり来た道に思いをはせ、
お互いに尊重する。
そこからより深い理解や絆が生まれる。
大会がそんな機会になればいい。

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