3月4日 国際報道2019
経済成長に伴い今タイではプロサッカーの人気が高まっている。
南米やヨーロッパなどからの外国人選手も活躍しているが
実は日本人選手も数多くいる。
2月下旬
シーズン開幕を迎えたタイのトップリーグ。
ここ数年スタジアムを訪れる観客も増え続け
去年の観客動員数は約150万人に達している。
そして人気の底上げに貢献しているのが外国人選手。
タイでは1チームにつき5人まで登録が許されている。
(ファン)
「外国人選手にはすごく期待している。」
「外国人選手と一緒にプレーすればタイの選手の技術も上がるよ。」
年々高まる外国人選手の存在感。
これをチャンスととらえタイの首都バンコクにやって来たのは日本人の選手たちである。
日本のJリーグや世界各国の所属チームとの契約が終了し
新しいシーズンの所属先が決まっていない選手たちである。
合同練習を行いながら
タイのほか東南アジア各国のリームとの契約に備えてトレーニングを積んでいる。
こうした日本人の選手たちを各国のチームに売り込むのが
タイ在住の代理人 真野浩一さん(33)である。
自身もプロのフットサル選手としてタイでプレーした経験を持ち
アジアのサッカー関係者に強いコネクションを持っている。
(タイ在住 代理人 真野浩一さん)
「センターバックほしいって マレーシアで。
多分入団テストはすぐだと思う。
行ける?」
約5年前に代理人の仕事を始めた真野さん。
これまで約100人の日本人選手を
タイをはじめカンボジアやラオスなど東南アジアのプロリーグへ送り込んできた。
チームを探すのに使っているのがSNSである。
世界中の代理人が参加するグループで
チームの空席状況・移籍金の額・選手の情報がひんぱんに交換されている。
「ある程度実績があるエージェントしか入れないグループ。
いわゆるストライカーが欲しい
移籍に関して約2億円まで払いますよと。」
去年11月から真野さんのサポートを受けてきた岡元俊樹さん(28)。
これまでスペインの4部リーグでプレーしてきた。新シーズンへ向けてタイとカンボジアの3チームで入団テストを受けたがすべて落とされた。
この日挑戦するのはタイの3部リーグ。
得点力のあるフォワードを探していた。
(岡元俊樹さん)
「今日で決めて
そうじゃないと来週からリーグが始まるので。」
岡本さんの本来のポジションはディフェンダーである。
しかしチームが求めているのはフォワード。
自分が希望するポジションではなかったがこれ以上待つことはできない。
背水の陣で臨んだ入団テストで何とか得点を決めた。
リーグ開始前のぎりぎりで1年間の契約を勝ち取ることができた。
(岡元俊樹さん)
「下剋上。
成り上がっていこうという感じ。
今シーズンしっかり結果が出せたら
来年はタイや東南アジアの中からしっかりしたオファーが来るんじゃないか。」
(タイ在住 代理人 真野浩一さん)
「選手1人でチャレンジするよりも
2人3脚でチャレンジすることで最大限のチャレンジができる。」
チャンスをつかむ選手がいる一方で
タイのリーグは外国人選手にとって狭き門になっている。
4年前にルールが改正され
外国人枠が7人から5人に減ったのである。
さらにリーグの盛り上がりに合わせるように
日本以外の国からタイを目指す選手が急増しているからである。
リーグの開幕を目前に控えた2月半ば。
真野さんが主催してきた合同練習への参加者も減っていた。
契約にこぎつけた選手がいる一方で
すでに帰国した選手もいて
最終的には1人だけとなっていた。
かつてU-22の日本代表にも選ばれた一柳夢吾選手(33)。
Jリーグでも長年プレーしてきた。
しかし33歳という年齢や求める給与水準がネックとなったのか
有力なオファーが来ないままこの日を迎えていた。
選手生命をかけて同じ境遇の仲間たちとチャレンジしてきた2か月間。
継続か引退か。
気持ちは揺れ動いている。
(一柳夢吾選手)
「決断をまだしていないので
自分の中ではまだ揺れ動いているところではあるけど
やれるだけやってそれで決まらなかったら自分の実力なので
しょうがないと思っています。」
アジアで急速にサッカー熱が盛り上がる中で
わずかなチャンスにかける選手たち。
その挑戦はこれからも続く。