美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

渡辺惣樹・茂木誠『教科書に書けないグローバリストの 近現代史』を読んで

2022年05月17日 22時11分10秒 | 歴史


本書は、高校生が読んで「本当の近現代史」の入り口のところまで行けるように、との目論見で書かれた本です。そのフォームは、歴史家・渡辺惣樹さんと世界史の予備校講師・茂木誠さんの掛け合いです。

では、「本当の近現代史」とはなんでしょうか。それは、世界が国際金融資本の「マネーの動き」によって決定的な影響を受け続けてきたことが明らかになる近現代史です。その「世界」には当然日本も含まれます。

私自身、そういう意味の「本当の近現代史」をとても大切なものであると考えています。なぜなら、「本当の近現代史」への理解を深めるほどに、国際金融資本勢力が世界を動かそうとする方向への感度が鋭敏になり、それを相対化し、世界認識の度合いを深め、叡智の領域へ自分なりに少しでも歩みを進めることができるようになるからです。

いま述べたことは、実のところ教育にとっても極めて重要です。教育が、子どもたちを愚民化するお手伝いをするなんて、馬鹿げたことであり、とんでもないことでもある。そうではなくて、教育はできうるならば子どもたちに叡智への道を指し示す役割を果たすべきである。そうではないですか?

さて、話を本書に戻しましょう。「はじめに」にとても印象的なくだりがあります。茂木さんの言葉です。

「産業革命以後の近現代史は、国家を超えた大きな力、つまり『マネーの動き』が決定的な役割を果たします。これは私も最近気づいたことで、それが明白になったのが2016年と2020年のアメリカ大統領選挙でした。

過去100年ほどのアメリカでは、世界の金融センターであるウォール街と合衆国政府がほとんど一体化していました。政府の意思はウォール街の意思を反映したものであり、両者を区別するのは困難でした。

それが2016年のトランプ政権の登場により、ウォール街と合衆国政府が敵対するようになりました。そしてウォール街を敵にした結果、トランプ氏は再選をあっけた2020年の大統領選で、奇妙な敗退をすることになったのです。

ウォール街(あるいはグローバリスト)と国家権力との関係が明らかになった今、従来どおりの国家間の関係だけを追いかける世界史では意味がありません。」

世界史の専門家が、2016年のトランプ大統領誕生と2020年の大統領不正選挙によるトランプ退場に刺激を受けて、世界史の抜本的書き直し、語り直しが必要であるという認識を得るに至ったと率直に述べているのです。私は、そのことに深く心を動かされました。

その認識の経緯が、及ばずながら、当方のいまの思いとかなり重なるところがあるからです。

若者たちを相手に教鞭をとる人々が、茂木さんに続く形でひとりまたひとりと、本気で「本当の近現代史」を教えるようになったならば、時代は大きく変わる可能性があります。その可能性を私は信じたい。

また本格的な歴史研究家が、渡辺さんに続く形でひとりまたひとりと、本気になって青少年と向き合い、彼らに「本当の近現代史」を語ろうとするならば、同じく、時代は大きく変わる可能性があります。

その可能性を私は信じたい。だから、絶望などしている暇はありません。

中身の詳細には触れませんが、もしも私の言葉があなたの心に触れたならば、ぜひ本書を紐解いてくださいね。読み終えたら、それぞれの立場で本書の中身や著者たちの思いを活用しましょう。そうして、お互い「本当の近現代史」を広める一翼を担いましょう。
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全世界は、バイデン「ギャンブル」のツケを支払うことになる

2022年05月16日 16時42分58秒 | 経済


バイデン政権下でパンデミック対応として2021年3月まで実施された現金給付は3回におよび、総額が8500億ドルを超えました。8500億ドルを1ドル=130円で換算すると110兆円超となり、日本のGDPの20%超の規模です。

では、2回目給付の2020年12月から3回目給付の2021年3月までの米国インフレ率はどうだったのでしょうか。

下のグラフにあるとおり、2020年12月5.4%、21年1月5.4%、2月5.3%、3月5.4%とけっこう高率で推移しています。つまり大量の現金給付を実施することに対してすでに赤信号が点滅している状況だったことが分かります。バイデン政府は、「ええい、ままよ」とばかりにギャンブルをしたといわれてもしかたがありませんね。



今回紹介する「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」掲載の最新論考は、バイデン政権の「ギャンブル」は失敗に終わり、アメリカ経済さらには世界経済は、悪性インフレとその後の景気後退というツケを支払わされることになる、と述べています。

よろしかったら、ごらんください。


***
ガンドラック氏の景気後退予想: 現金給付のツケを払うことになる
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/23546
2022年5月15日 GLOBALMACRORESEARCH

債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏がFox Businessのインタビューで景気後退を予想し、その理由を説明している。

株価が下落し、今後の先行きが危ぶまれるアメリカ経済について、ガンドラック氏は次のように始めている。

今年ではないが、来年には本物の景気後退が来そうだと信じる根拠が出始めているようだ。

ガンドラック氏は理由を2つ挙げている。1つ目は住宅バブルである。

家賃高騰が消費者にのしかかる
アメリカでは住宅価格が高騰しており、それがインフレの大きな部分を占めている。

• アメリカの住宅価格が2月に19.8%上昇、再上昇開始
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23546

ガンドラック氏は次のように続ける。

アメリカの多くの都市で住宅価格は2年で30%上がった。そして30年の住宅ローンの金利は倍になった。
これは住宅のための支払いが2年前から倍になったことを意味している。


住宅価格高騰で純粋に得しかしないのは現金で住宅を買ったオーナーだけである。

賃貸に住んでいる人にとっては家賃が高騰することになり、ローンで家を買った人にとっては、固定金利でなければ金利が上がることになる。資産である持ち家の価格も上がっているのだが、家を売却しない限り絵に書いた餅であり、毎月のローンの支払いは増えてゆく。

結果として人々は他の消費を減らすことになるというわけである。現金給付をきっかけに始まったインフレは、今や給付された額の何倍もの悪影響を消費者に与えている。

消費の前借り
そしてガンドラック氏が景気後退予想のもう1つの根拠を次のように説明する。

コロナ対策の現金給付の結果、一見経済は良好であるように見えた。しかしその大部分は消費を前借りしたためだ。

現金給付が消費と物価を押し上げたのは単純な事実である。消費と物価を月次データで見れば、アメリカで3回行われた現金給付の直後に両方が急上昇していることが分かる。

そしてガンドラック氏が特に注目しているのが消費の内訳である。個人消費のデータには耐久財(車など長持ちするもの)と非耐久財(洗剤など使い切るもの)などがあり、ガンドラック氏はこれらの内訳について次のように述べている。

現金給付の結果、耐久財の消費が爆発し、トレンドラインから30%上昇した。非耐久財の消費は20%上がっている。

実際にグラフを見てみると次のようになる。
*青線が耐久財、赤線が非耐久財 です。(引用者 注)



アメリカで最後に現金給付が行われた2021年3月に、特に耐久財の消費が爆発していることが分かる。

そして両方のグラフはコロナ前のトレンドラインを大幅に上回っている。現金給付はコロナで沈んだ経済を元に戻すためのものだったはずなのだが、完全に過剰だったことは明らかである。

それでインフレにならないわけがあるだろうか。インフレがロシアのせいだという寝言を言っている人は、このグラフを見たことがあるのだろうか。

• 世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19942

しかし現金給付の結果は物価高騰だけではない。ガンドラック氏は個人消費のグラフについて次のように述べている。

これが意味することは、いずれ元のトレンドまで戻らなければならないということだ。
中古車や電化製品、冷蔵庫などの耐久財を買った場合、耐久財は耐久するので、当分もう一度買うことはないだろう。

これを踏まえて上のグラフの耐久財消費の爆発を見直すとどうだろう。その爆発は、消費にその後同じだけの穴が空くということを意味している。

結論
元々コロナ後のばら撒きに一貫して反対していたガンドラック氏は次のように包括する。

ツケを払わなければならない。

消費者は既に物価高騰のせいで、現金給付で受け取った金額以上のものを支払っているが、更にここから株価暴落と景気後退を受け取ることになるだろう。

• 世界最大のヘッジファンド、アメリカ経済がもう手遅れであることを認める
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/22771

それが現金給付を支持した人への経済からの当然のプレゼントである。何故人々は自分から望んで穴に落ちてゆくのだろうか。

• 世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10473

***

当論考では、物価騰貴の原因としてバイデン政権の現金給付が挙げられています。別の論考で、物価騰貴のもう一つの原因として脱炭素政策が挙げられています。脱炭素政策は、火力発電を目の敵にするので、原油の供給量が減少し原油高になるのです。そこに露宇戦争が重なって、原油・天然ガス・穀物がさらに値上がりしているのです。
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茂木誠講義【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史①~⑦】

2022年05月14日 15時39分11秒 | 歴史


今日地元の大手の書店に立ち寄ると、まずは「ウクライナ・ロシア・コーナー」が目に飛び込んできました。

当方を含めて、目下、読書好きのみなさんの興味関心の的なのですね。

ウクライナ・ロシア問題を紐解くには、その歴史的な経緯をはじめから現在に至るまで一度はきちんと押さえる必要があります。

その点、今回紹介した茂木誠さんの講義の奥深さ・面白さ・納得感は、際立っているように感じます。

ひとつの動画は20数分です。全部で一時間以上ありますが、おそらく興味深く視聴し続けることができるでしょう。

ぜひごらんください。当方が中身の詳細についてあれこれと語る必要はないでしょう。


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史①】キエフ公国の誕生と滅亡|茂木誠


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史②】モンゴル支配とウクライナ・コサック国家の興亡|茂木誠


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史③】帝政ロシアの反ユダヤ主義からロシア革命まで|茂木誠


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史④】ロシア革命から第二次世界大戦、ソ連崩壊まで|茂木誠


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史⑤】ナチズムとは何か|茂木誠


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史⑥】ロシアがウクライナに侵攻する理由|茂木誠


【ユダヤから紐解くロシア・ウクライナの歴史⑦】ウクライナ戦争の見方|茂木誠
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インフレのピークが株価の「大底」になる

2022年05月13日 16時26分13秒 | 経済

バブル崩壊以降、日本の株価がバブル期の最高値を超えたことはない。世界の株価の動向と比べた場合、これは異常事態である。“消費増税のくびき”が最大の要因である(以上、当記事の内容とは関係のないコメントです)。

5月11日(水)の「YAHOO JAPAN ニュース」に、次のような記事が掲載されているのを昨日目にしました。発信源はロイターです。

「米労働省が11日に発表した4月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比8.3%上昇と、1981年12月以来の高水準だった3月の8.5%から減速した。減速は昨年8月以来初めて。(後略)」

日頃「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」を欠かさず読んでいる当方は、すぐに、その誤りに気づき、FBに次のように、データ付きのコメントをアップしました。

《3月のインフレ8.5%の比較対象となった2021年3月は、アメリカで最後の現金給付が行われた、インフレが本格化する直前の月です。今後発表される4月以降数か月間のインフレ率は、現金給付によって高騰した後の2021年のインフレ率と比較されてゆくことになります。それゆえ、2022年4月以降のインフレ率は「見かけ上」鈍化します。それは単なる統計技術上の現象にすぎません。だから当報道は、バイデンの経済政策の失敗をカモフラージュするための、MSMによる単なるデマのたぐいである、か、もしくは単にバカが記事を書いたか、のどちらかです。ゆめゆめダマされないようにしましょうね。》

経済のド素人の、ロイターという「権威」に歯向かった生意気な経済関連コメントにもかかわらず「いいね」ボタンを押してくれた奇特な方がいらっしゃいました。この場を借りてお礼申し上げます。

「グローバルマクロ・リサーチ・インスティチュート」掲載の最新論考は、ロイターと同じネタ、すなわち、米国4月のインフレ率を取り上げています。4月の見かけ上の数値の低下を予告していただけあって、その取扱い方は見事というよりほかはありません。

じっくりとごらんください。得るところ大でしょう。

***

アメリカの4月のインフレ率、予想上回る 株価は下落
WWW.GLOBALMACRORESEARCH.ORG/JP/ARCHIVES/24257
2022年5月12日 GLOBALMACRORESEARCH

アメリカの物価高騰が株式市場をも揺るがすなか、注目の最新の消費者物価指数が発表された。4月のアメリカのインフレ率は8.2%(前年同月比)となった。

減速したインフレ率
まず債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が述べていたように、今回の数字は前回3月よりも下がることが予想されていた。

• ガンドラック氏: インフレはピーク
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23164

3月の数字が8.6%なので、4月の8.2%はガンドラック氏の想定通り少し下がったということになる。インフレ率のチャートは次のようになっている。



少し下がっている。

何故下がることが想定されていたかと言えば、この数字が前年同月比で、比較対象となった前年2021年4月が、アメリカで3月に行われた3回目の現金給付の影響で物価が急騰した月だったからである。

前年同月比とは前年の同じ月に比べてどれだけ物価が上がったかという数字なので、前年の比較対象の月が物価の高い月であれば、当然ながらインフレ率は高くなくなる。

インフレのピークは株価の大底
以下の記事ではインフレのピークが株価の大底になるということを説明した。

• 2022年インフレ株価暴落はいつまで続くか
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24209

この記事は非常に重要なので読んでもらいたいが、要するに株価の底値を予想するためにはインフレ率が今後どうなってゆくかを予想しなければならない
まず、前年同期比の数字を考えるためには、比較対象となっている前年において各月の物価上昇がどの程度だったのかを考えなければならないだろう。
そこで、2021年の前月比年率(前の月と比べた数字を年率換算したもの)のインフレ率を見てみたい。



やはり4月頃からインフレ率が高くなり、6月には11%に達している

よって前年との比較で今年の数字が高いインフレになるためには、高かった去年6月の数字を超えてゆかなければならないということになり、やはり今後数ヶ月のインフレの数字は落ち着くという予想が妥当だろう。

インフレ鈍化で株価反発の可能性
これまでインフレを警戒して株価が下落していたのに、インフレが減速した今回の数字を受けて米国株は更に下落した



何故かと言えば、8.2%という数字が市場が予想していたほどの減速ではなかったからである。

今回の数字があまりインフレ減速的だと思われなかったとしても、やはり6月(の数字が発表される7月)までは数字上インフレは減速し、株式市場にとってはつかの間の追い風となる可能性もある

だが結局は、今年の後半にかけてインフレ率がどうなってゆくかということが、株価の最終的な命運を握っている

それを考えるためには、高騰している住宅価格の上昇率と長期金利を並べた以下のチャートが一番分かりやすいだろう。

• アメリカの住宅価格が2月に19.8%上昇、再上昇開始
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/23546




アメリカ国民は家賃が高騰するなか、ローンを組んで住宅をこぞって買おうとしている。賃貸ならば住宅価格や家賃の上昇はマイナスだが、買ってしまえば自分にとってプラスになる。しかしそうした住宅購入が住宅価格を更に押し上げてゆく。

住宅価格が年率20%近い速度で上がるなか、ローン金利に影響する長期金利は3%程度である。

つまり、年間3%か4%のコストを払うことによって、お金がない人でも20%の資産価格上昇を手に入れることができる。それはローンが実質的に損のない無料の資金であることを意味する。この状態で、アメリカ国民の購買意欲が収まるかということである。

*当論は、住宅価格と長期金利の乖離から、アメリカ国民の購買意欲は収まらない、すなわち、インフレは収まらないだろうと予測しています。ちょっと調べてみて分かったのですが、新型コロナのパンデミックがもたらした意外な結果として、目下、多くの国で住宅価格が急上昇しています。米国、英国、ドイツを含むいくつかの主要国では、2桁ペースで住宅価格が上昇しており、価格の上昇はこの1年で加速しているそうです。世界的な物価高の一側面として、住宅価格の急上昇があるということです。それが日本にどう飛び火するか注視すべきところでしょう。 〔引用者 注〕

結論
筆者はこの状態でインフレが収まるとはまったく思っていない。だから6月にかけてインフレが減速し、中央銀行が金融引き締めの手を緩めるならば、それは一時的には株価にとってプラスになるだろうが、最終的なインフレ率は更に高くなってゆくだろう。

だがいずれにしても今後インフレ率は最重要指標である。その動向が株価の行く末を決めるからである。以下の記事はしっかり読んでおいてもらいたい。

• 2022年インフレ株価暴落はいつまで続くか
www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24209

***

当論考に従うならば、今後7月まで数字上のインフレは減速し、株価は数か月間の追い風に恵まれるかもしれません。しかし複合的な要因によってインフレが収まらなければ、結局株価は「大底」に向けて下落することになるでしょう。当論考によれば、インフレの行方が株価の行く末を決定するのですから。
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エミンさん 、視聴者の質問に答える 「ハイパーインフレ」「信用創造とお金」

2022年05月12日 20時46分14秒 | 経済


経済のわかりにくい論点を、当動画のエミンさんが分かりやすく説明しています。

Q1「日本でハイパー・インフレが起こる可能性はあるか」

→A1「日本の国債はすべて円建てなので、純粋にテクニカルな意味でありえない。仮に国債の利払いが膨らんだとしても、日銀は、必要なだけの円を刷って支払いをすればいいだけのこと。だから財政破綻はありえない。よって、ハイパー・インフレもありえない」

Q2「銀行が新たにお金を作る信用創造の理屈が分からない」

→A2「銀行は、新たな預金の一部分を残してほかは全部貸し出す。貸し出されたお金はまた銀行に戻ってくる。その新たな預金の一部分を残してほかはまた全部貸し出される。その無限回の繰り返しによって、結局最初の預金の何倍もの預金が創造される」

信用創造とは、銀行が貸し出しを繰り返すことによって、銀行全体として、最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨をつくりだすことです。例えば、A銀行が最初に受け入れた預金額が100万円だとしましょう。A銀行は手元にその1割の10万
円を残して90万円を別の誰かに貸し出します。お金を遊ばしておくのはもったいないですから。その90万円がさらにほかの誰かに渡り、その誰かは90万円を今度はB銀行に預けます。その1割の9万円を残して・・・、というプロセスが無限に繰り返されます。文字通り「金は天下の回りもの」というわけです。以上を表にまとめれば、次のようになります。




このようにして、預金の合計は結局100円×1/0.1=100円×10=1000円となり、元の預金の10倍の預金が創造されたことになります。厳密にいえば、この式を理解するには無限等比級数の知識が必要なのですが、そこまでこだわらなくても、最初の預金の何倍もの預金が生まれることは、エミンさんのお話と当方の補足でお分かりいただけるのではないでしょうか。

それにしても、コロナ禍以降のアメリカの預金準備率が0%とは驚きです。知りませんでした。

【エミQ】教えて!エミン)さん Vol.59「ハイパーインフレ」「信用創造とお金」

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