『Road of Resistance』について ―――雑誌『ヘドバン』VOL.6より (美津島明)
先日買ってきた『ヘドバン』VOL.6に『BABYMETALの仕掛け人KOBA-METALと振付師MIKIKO-METALのインタヴュー記事が載っていました。ふたりともに、『Road of Resistance』についてけっこう詳しく語っています。とても興味深い内容だったので、みなさまにそれをご紹介します。記事の中身をよく御存じの方にとっては退屈極まりない内容になるのでしょうが、BABYMETALにいささかなりとも興味のある方がみな『ヘドバン』を読んでいるわけではないでしょう。
ちょっとだけ、『Road of Resistance』の概略を述べておきます。この楽曲は、昨年11月8日に行われたロンドン・02ブリクストン・アカデミーのライヴのラストで初披露され、異国の地においてシンガロングで会場がひとつになるという 驚くべき成果を挙げました。また、イギリスの メタルバンド・ドラゴンフォースのサム・トットマンとハーマン・リがギター演奏で参加していることでも話題になりました。
では、二人のインタヴューの中身に触れましょう。
まず、KOBA-METALから。『Road of Resistance』はいつごろから制作をはじめたのかという質問に対して、「原型はかなり以前からありましたが、音源のような曲構成が固まったのは2013年だった」と思うと答えています。2013年から、とは驚きですね。別のインタヴューで、楽曲をひとつ作るのに半年はかける、と答えていますが、『Road of Resistance』の場合、約二年間かけたことになります。KOBAMETALの、この楽曲への思い入れの深さがうかがわれますね。
『Road of Resistance』は“メロスピ”の要素がふんだんに入っていると言われています。“メロスピ”とは、メロディック・スピード・メタルの略語で、ヘヴィメタルのサブジャンルの一つです。これと近いジャンル区分にメロディック・パワー・メタルがあり、こちらは「メロパワ」と略されます。両者の間には厳密な区別はない、とされているようです。ドラゴンフォースは、フィンランドのソナタ・アークティカとともに、当ジャンルの代表格とされています。
そのドラゴンフォースのメンバーが、当楽曲のサポートをしているのです。メロスピやドラゴンフォースの魅力を、KOBA-METALは次のように語っています。「(メロスピの)高速なギターとドラム、そこに乗っかるメロディーなど、褒め言葉として″クサい″と言われる諸々の要素に惹かれます」。「(ドラゴンフォースの魅力を)例えるならば、あの味をもう一度食べたい!と想像して注文した料理がイメージどおりだったときのような、期待の裏切らなさというか。来るべきところに来てほしいサウンドやメロディーがやってくる、″ドラゴンフォース節″とも呼べるオリジナリティがあると感じています」。
ここまで読んでいただいた方のなかで、「ドラゴンフォースって、どんな音楽をやってるのかな」とお思いになられた人も少なからずいらっしゃると思われるので、一曲紹介しておきます。
DragonForce - Through The Fire And Flames (Video)
これを聴くと、『Road of Resistance』がドラゴンフォースのサウンドを強く意識して作られていることが、すぐに分かりますね。また、上記のKOBA-METALの言葉が、ドラゴンフォースの魅力の核心を突くものであることも分かりますね。『Road of Resistance』の曲作りについては、次のように語られています。「サウンド面に関しては、お題を作る際にジュ-タス・プリーストの『ヘリオン』~『エレクトリック・アイ』のような″登場感″溢れるイントロからスタートし、ドラゴンフォースのような高速メロディック・スピードメタルに突入し、シンガロングでオーディエンスと共に涙する・・・というようなイメージができていたので、必然的にアンセム的な楽曲になったのだと思います」。
ここで「アンセム」という言葉が自明のものとして登場しています。もともとは、イギリス国教会での礼拝用合唱曲・賛美歌・頌歌(しょうか。神などを褒め称える歌)を意味する言葉だったのですが、最近のポップミュージックシーンでは、「グループなどを代表する歌・定番の歌・集団などを祝い応援する歌」という意味で使われているようです。
「歌詞のテーマはBABYMETALが歩んできた道、そしてこれから歩んでいく道をイメージしていますが、BABYMETALに限らずメタルレジスタンスに参加するすべての人々に『自分を信じて前に進もう』というエールを贈っている楽曲だと思います。BABYMETALのメタルレジスタンスのテーマ曲として、大切な意味を持っている楽曲です」と率直に熱い胸の内を語っているのが、強く印象に残りました。
次に、振り付け師MIKIKO-METALの言葉から。まずは『Road of Resistance』を聴いたときの印象について、率直に「恥ずかしながら、私自身はメタルの知識があまりないのですが、ジャンル(ママ)関係なく『お、ここに来て王道がきたな』と思いました」と語っています。というか、彼女は、つねに率直ですね。私は、彼女の語り口にとても惹かれるものがあります。思っていること、感じ取っていることが、すっと言葉になって出てきているような印象があるからです。独創性にあふれた、感性の鋭いタイプに多い語り方のような気がします。
KOBA-METALからなにかオーダーがあったのかという問いに対しては、「戦国時代の合戦や『レ・ミゼラブル』などの″戦(いくさ)″のイメージに、というリクエストがありました。でも、とにかく″大合唱″推しでしたね。KOBA-METALにはさいたまスーパーアリーナでの大合唱がイメージ出来ていたのだと思います」と答えています。このあたり、KOBA-METALの言葉と符合していますね。
「素人目にもあの速さに振りを付けるのは至難の業なのでは?と思うのですが、実際の難しさはいかがでしたか」という問いに対しては、「速い曲の振り付けは得意なほうなのですが、この曲はさすがに速かったですね。でも、三人に振り付けしたとき、すぐに出来たので驚かされました。大人にはなかなか出来ない速度かもしれないです」と答えています。三人の、ダンスのレベルがさらに高度化していることをうかがわせるコメントですね。
『Road of Resistance』の振り付けに関して、いろいろと具体的なことを言っています。それらを列挙しましょう。「イントロが終わり本編が始まってからの、馬に乗って駆け抜けるような振り付けも衝撃的でした。あれがMIKIKOさんのアイデアだとして、すぐにあの乗馬のような振り付けが思い浮かんだのでしょうか?」との問いに対しては、「テーマを頭に入れてから楽曲を聴いたら、あのイントロが3人が乗馬している音にしか聞こえなくて・・・。あのステップは一番最初に決まりました」と答えています。また、一番意識したのは、「3人が勇敢に″壁″に立ち向かっていく姿が可視化できる」ことであると答えています。
当楽曲を振付けたときの3人の様子については、「速さには驚いていましたが、テーマを先に話してから振り付けたので、イメージがすぐに湧いた様子でしたし、とても楽しそうでした。最近は限界に挑戦するのに燃えているように見えますね」と語っています。最近の3人の変化について、「意識の変化もありますし、吸収力は恐ろしいほど速くなっています。経験値と自信が付いたのはもちろんですが、何より3人がライヴをするのが楽しいんだと思います」と語っているのが、特に印象に残りました。
言い忘れてはいけないことがありました。あの旗振りの場面についてです。MIKKIKO-METALによれば、「確か、いろいろ試してみて決めようと、KOBA-METALさんと相談しながら決めた気がします。3人に試しにやって貰ったら立ち姿が凄く勇敢な雰囲気でテーマにハマっていたので、即採用しました」との由です。
『Road of Resistance』の動画は、一度アップしたことがあります。しかし、以上の言葉を頭の片隅に置いて聴くと、なおいっそう深い味わいがあるのではないかと思うので、ふたたびアップしましょう(しつこくてスミマセン)。私があらためていうのもなんですが、この動画の圧倒的な感じはすごいですね。特に、彼女たちが、赤い橋を渡って突き出た舞台で激しいパーフォーマンスを繰り広げているかたわらに、人々の大きな渦ができている場面を目にしたとき、「ここでは、とんでもないことが起こっている」という実感が腹の底から湧いてきました。現場に参加していなくてもそう感じるのですから、現場にいた人たちの心の中はどうなっていたのでしょうか。
BABYMETAL - Road of Resistance - Live in Japan - (Official Video)
先日買ってきた『ヘドバン』VOL.6に『BABYMETALの仕掛け人KOBA-METALと振付師MIKIKO-METALのインタヴュー記事が載っていました。ふたりともに、『Road of Resistance』についてけっこう詳しく語っています。とても興味深い内容だったので、みなさまにそれをご紹介します。記事の中身をよく御存じの方にとっては退屈極まりない内容になるのでしょうが、BABYMETALにいささかなりとも興味のある方がみな『ヘドバン』を読んでいるわけではないでしょう。
ちょっとだけ、『Road of Resistance』の概略を述べておきます。この楽曲は、昨年11月8日に行われたロンドン・02ブリクストン・アカデミーのライヴのラストで初披露され、異国の地においてシンガロングで会場がひとつになるという 驚くべき成果を挙げました。また、イギリスの メタルバンド・ドラゴンフォースのサム・トットマンとハーマン・リがギター演奏で参加していることでも話題になりました。
では、二人のインタヴューの中身に触れましょう。
まず、KOBA-METALから。『Road of Resistance』はいつごろから制作をはじめたのかという質問に対して、「原型はかなり以前からありましたが、音源のような曲構成が固まったのは2013年だった」と思うと答えています。2013年から、とは驚きですね。別のインタヴューで、楽曲をひとつ作るのに半年はかける、と答えていますが、『Road of Resistance』の場合、約二年間かけたことになります。KOBAMETALの、この楽曲への思い入れの深さがうかがわれますね。
『Road of Resistance』は“メロスピ”の要素がふんだんに入っていると言われています。“メロスピ”とは、メロディック・スピード・メタルの略語で、ヘヴィメタルのサブジャンルの一つです。これと近いジャンル区分にメロディック・パワー・メタルがあり、こちらは「メロパワ」と略されます。両者の間には厳密な区別はない、とされているようです。ドラゴンフォースは、フィンランドのソナタ・アークティカとともに、当ジャンルの代表格とされています。
そのドラゴンフォースのメンバーが、当楽曲のサポートをしているのです。メロスピやドラゴンフォースの魅力を、KOBA-METALは次のように語っています。「(メロスピの)高速なギターとドラム、そこに乗っかるメロディーなど、褒め言葉として″クサい″と言われる諸々の要素に惹かれます」。「(ドラゴンフォースの魅力を)例えるならば、あの味をもう一度食べたい!と想像して注文した料理がイメージどおりだったときのような、期待の裏切らなさというか。来るべきところに来てほしいサウンドやメロディーがやってくる、″ドラゴンフォース節″とも呼べるオリジナリティがあると感じています」。
ここまで読んでいただいた方のなかで、「ドラゴンフォースって、どんな音楽をやってるのかな」とお思いになられた人も少なからずいらっしゃると思われるので、一曲紹介しておきます。
DragonForce - Through The Fire And Flames (Video)
これを聴くと、『Road of Resistance』がドラゴンフォースのサウンドを強く意識して作られていることが、すぐに分かりますね。また、上記のKOBA-METALの言葉が、ドラゴンフォースの魅力の核心を突くものであることも分かりますね。『Road of Resistance』の曲作りについては、次のように語られています。「サウンド面に関しては、お題を作る際にジュ-タス・プリーストの『ヘリオン』~『エレクトリック・アイ』のような″登場感″溢れるイントロからスタートし、ドラゴンフォースのような高速メロディック・スピードメタルに突入し、シンガロングでオーディエンスと共に涙する・・・というようなイメージができていたので、必然的にアンセム的な楽曲になったのだと思います」。
ここで「アンセム」という言葉が自明のものとして登場しています。もともとは、イギリス国教会での礼拝用合唱曲・賛美歌・頌歌(しょうか。神などを褒め称える歌)を意味する言葉だったのですが、最近のポップミュージックシーンでは、「グループなどを代表する歌・定番の歌・集団などを祝い応援する歌」という意味で使われているようです。
「歌詞のテーマはBABYMETALが歩んできた道、そしてこれから歩んでいく道をイメージしていますが、BABYMETALに限らずメタルレジスタンスに参加するすべての人々に『自分を信じて前に進もう』というエールを贈っている楽曲だと思います。BABYMETALのメタルレジスタンスのテーマ曲として、大切な意味を持っている楽曲です」と率直に熱い胸の内を語っているのが、強く印象に残りました。
次に、振り付け師MIKIKO-METALの言葉から。まずは『Road of Resistance』を聴いたときの印象について、率直に「恥ずかしながら、私自身はメタルの知識があまりないのですが、ジャンル(ママ)関係なく『お、ここに来て王道がきたな』と思いました」と語っています。というか、彼女は、つねに率直ですね。私は、彼女の語り口にとても惹かれるものがあります。思っていること、感じ取っていることが、すっと言葉になって出てきているような印象があるからです。独創性にあふれた、感性の鋭いタイプに多い語り方のような気がします。
KOBA-METALからなにかオーダーがあったのかという問いに対しては、「戦国時代の合戦や『レ・ミゼラブル』などの″戦(いくさ)″のイメージに、というリクエストがありました。でも、とにかく″大合唱″推しでしたね。KOBA-METALにはさいたまスーパーアリーナでの大合唱がイメージ出来ていたのだと思います」と答えています。このあたり、KOBA-METALの言葉と符合していますね。
「素人目にもあの速さに振りを付けるのは至難の業なのでは?と思うのですが、実際の難しさはいかがでしたか」という問いに対しては、「速い曲の振り付けは得意なほうなのですが、この曲はさすがに速かったですね。でも、三人に振り付けしたとき、すぐに出来たので驚かされました。大人にはなかなか出来ない速度かもしれないです」と答えています。三人の、ダンスのレベルがさらに高度化していることをうかがわせるコメントですね。
『Road of Resistance』の振り付けに関して、いろいろと具体的なことを言っています。それらを列挙しましょう。「イントロが終わり本編が始まってからの、馬に乗って駆け抜けるような振り付けも衝撃的でした。あれがMIKIKOさんのアイデアだとして、すぐにあの乗馬のような振り付けが思い浮かんだのでしょうか?」との問いに対しては、「テーマを頭に入れてから楽曲を聴いたら、あのイントロが3人が乗馬している音にしか聞こえなくて・・・。あのステップは一番最初に決まりました」と答えています。また、一番意識したのは、「3人が勇敢に″壁″に立ち向かっていく姿が可視化できる」ことであると答えています。
当楽曲を振付けたときの3人の様子については、「速さには驚いていましたが、テーマを先に話してから振り付けたので、イメージがすぐに湧いた様子でしたし、とても楽しそうでした。最近は限界に挑戦するのに燃えているように見えますね」と語っています。最近の3人の変化について、「意識の変化もありますし、吸収力は恐ろしいほど速くなっています。経験値と自信が付いたのはもちろんですが、何より3人がライヴをするのが楽しいんだと思います」と語っているのが、特に印象に残りました。
言い忘れてはいけないことがありました。あの旗振りの場面についてです。MIKKIKO-METALによれば、「確か、いろいろ試してみて決めようと、KOBA-METALさんと相談しながら決めた気がします。3人に試しにやって貰ったら立ち姿が凄く勇敢な雰囲気でテーマにハマっていたので、即採用しました」との由です。
『Road of Resistance』の動画は、一度アップしたことがあります。しかし、以上の言葉を頭の片隅に置いて聴くと、なおいっそう深い味わいがあるのではないかと思うので、ふたたびアップしましょう(しつこくてスミマセン)。私があらためていうのもなんですが、この動画の圧倒的な感じはすごいですね。特に、彼女たちが、赤い橋を渡って突き出た舞台で激しいパーフォーマンスを繰り広げているかたわらに、人々の大きな渦ができている場面を目にしたとき、「ここでは、とんでもないことが起こっている」という実感が腹の底から湧いてきました。現場に参加していなくてもそう感じるのですから、現場にいた人たちの心の中はどうなっていたのでしょうか。
BABYMETAL - Road of Resistance - Live in Japan - (Official Video)